取りあえず花火を見ようか 10 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

じりじりと照り付ける太陽

庭の樹々の葉の隙間から

陽の光が零れ落ちて風に揺れる

まるで眩く輝く光のシャワーみたいだ

それに合わせて鳴きだす蝉

それだけで汗が出てくる気がする

こんな暑い日が続くと思いだすのは

彼奴と初めて花火を見に行った日の事

やたら豪華な船でクルージングしながら花火を見る

当日まで秘密にしておいて

驚かせるつもりだったようだけど

俺が女だったとしても喜ばない(キッパリ)

絶対引くだろ(あんなクソ高い船)

海の上の高級ホテルって形容がピッタリだった

セレブって奴はって思ったけど

今考えると、すんげぇ大切な思い出

 

そう言えば、あのビキニパンツまだ持ってるのか?(笑)

履いていた姿を思い出して

思いっきり笑ってしまった

一人で馬鹿笑いした後、淋しくなった

あの日の二人に戻りたいな(何も知らなかったあの頃に)

寝転がって、大きく息を吐き出した

 

「また二人で花火を見るために頑張ろうな」

 

誰も居ないのに声に出して

自分に活を入れる

 

その時 ・・・ 人の声がした

 

「お邪魔してもよろしいですか?」

 

ん? ・・・ この声 ・・・ 綾野君じゃない 

だけど、ここには綾野君しか入れないはず

 

辺りを見回しても姿はない

廊下に居るのか?

それとも ・・・ 人ではない者?

 

 

「はあ?あんた誰?」

 

こんな所まで入って来れるって ・・・

意識を集中させても何も見えない

当然と言えば当然

俺は先読み出来ても透視は出来ない

 

だけど、人の気配すらしない

靄がかかったみたいな感じだ

 

「長 ・・・ 何か見える?」

 

『私にも見えない』

長に見えないって事は姿がないって事?

 

「あらら、そこまで警戒しなくても

 貴方に害をなすものでは有りませんよ

 って ・・・ 面倒だから開けるね」

 

襖を開けて入ってくるものと思い

ずっと眺めていても変化はない

 

「どこ見てるの?」

 

不意に後ろから声を掛けられ

たじろいでしまった

後ろに立っていたのは

俺と同じ背格好の男

 

「アンタ、何処から湧いて出た!」

 

「湧いて出たって ・・・ 虫じゃあるまいし ・・・

 貴方が暁さんでしょ?」

 

「暁さん?」

 

「ちょっとお願いがあるんだけれど」

 

「なんでしょうか?」

 

「長の印 ・・・ 蒼い勾玉を仕舞ってくれない」

 

「仕舞うって、どうして?

 何でアンタの言うこと聞かなきゃいけない

 それに ・・・ 一体何者?」

 

すぐに綾野君を呼んだ方が良いのか?

それでも ・・・ この人の気配に悪意はない

 

「素直に従う訳はないか

 じゃあ、彼には眠って貰うね」

 

そんなこと言って、古の長を眠らせる?

既に神様に近い人なのに、出来る訳がない

 

「長 聴こえてる?」

 

『ああ ・・・ 聴こえてるが ・・・

 何故か凄く心地良いのだが ・・・

 すまぬ ・・・ 彼からは清らかな波動しか ・・・』

 

どんどん声が小さくなっていく

 

「長!」

 

「呼びかけても無駄だよ

 眠って貰ったから

 あのねえ彼に聞かれては困る話だから」

 

「それは分かったけど

 アンタはいった誰なの?」

 

「サクちゃんから依頼されて

 君に逢いに来た 大野と言います」

 

「さくちゃんって誰だよ

 そんな奴知らないけど」

 

「そんなこと言って良いの?

 君の大切な人でしょ

 耀の櫻井君だからサクちゃん

 画伯が付けたあだ名」

 

もの凄くフレンドリーに話してるけど

全く捉えどころがない

この人は人なのか?

 

「私はしがない美術教師(笑)

 それから、人だよ」

 

読心術?

心まで読めるのか ・・・

 

「サクちゃんの事分かった?」

 

「彼奴の事ですよね?」

 

相手からもう一度言わせないと

信じられない

 

「耀の一族の櫻井翔って言ったら信じられるの?」

 

急に真面目な顔で見つめられた

黒かった瞳が一瞬だけ瑠璃色に見えた

 

「櫻井だからサクちゃん ・・・

 そのサクちゃんがどうかしたんでしょうか?」

 

「8月11日予定を空けておいて

 日曜日だから予定はないと思うけど

 昼頃に迎えに来ます

 その日の帰りは遅くなるから

 そのつもりで」

 

これはもしかして夢なのか?

いきなり人が現れて

簡単に外出できない環境の俺に

迎えに来るという 

 

「どうやって?」

 

外に出れるなら

すぐにでも出たい

 

「それは内緒(笑)

 その日だけの魔法だよ

 じゃあ伝えたから

 それから、電話がかかると思うけど

 内容については聞かない方が良い

 勾玉の中で眠る人へのサプライズだから」

 

「もったいぶらずに教えればいいだろ」

 

「彼らが夢にまで見たことだ

 君なら分ると思うけど

 烏帽子くんの願いだよ」

 

烏帽子くん? ・・・ 翔様の事?

この展開についていけない俺の頭

 

何度も頭の中で反芻しながら

整理していく

 

 

「長!長 ! ・・・ 入っても宜しいですか?」

 

正真正銘綾野君の声

 

「声が聴こえちゃったね

 じゃあ、11日お昼ごろ

 迎えに来るから」

 

「長、開けますよ」

 

「剛君 ・・・ 入っていいよ」

 

綾野君にも見えたら人

そう思って襖の開くのを待って

視線を戻したら

すでに彼の姿は消えていた

 

「長、誰か侵入いたしましたか?

 声が聴こえたもので慌てました ・・・」

 

慌てた顔で部屋中を見渡す

 

「アラームが鳴らないって事は

 誰も入ってきてないって事だよな?」

 

「そうなりますが ・・・」

 

キョトンとした顔をして俺の顔を見つめる

 

「じゃあ、誰も入っていないんだよ ・・・

 それより、何か用だった?」

 

「あの ・・・ 翔さんからお電話が入りました

 電話が欲しいと ・・・

 それを伝えに来たところ

 長が声を荒げられたので慌てました」

 

「すまない ・・・ ちょっと発声練習をしていた」

 

「はぁ ・・・ 発声練習ですか ・・・」

 

納得できないって顔をして首を傾げる

俺がそう言われても納得はしないけど

剛君はそれ以上は突っ込んでこない

 

「急用かもしれないな

 5分後に屋敷に行く」

 

「畏まりました」

 

 

珍しいな ・・・ この時間に

やっぱりさっきの人が言ってた事かな

 

 

烏帽子さんの願いねえ ・・・

彼奴が話す前に

サクちゃんと烏帽子ちゃんって名を出してみるか ・・・

 

 

 

 

 

 

<続きます>