キミの夢を見ていたい(扉の向こうにある未来)94 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

チビたちをエルフの国に送った足で店に向かう

店の前プレートはcloseになってる所を見ると

既に大ちゃんは来ているみたいだ

 

ドアを開けて中に入ると

緋~ちゃんが俺の帰るのを待っていてくれた

 

「蒼ちゃんお帰り」

 

「ただいま、大ちゃんは?」

 

「うん、リビングに居る」

 

「それで、4人で話し合った?」

 

「3人は楽園の外の事は何も知らないそうだ

 セリーが出た後のフィーの様子

 フィーが蒼い花の核を抱えて戻った後の事

 正直、セリーが知らない事を覚えてる

 ただ、俺達と同じで妖精5人を悲しませることはしたくない

 そこは意見が一致してる」

 

「そうだな、あの5人を守るのが俺たちの役目だったんだから」

 

「5人が5人とも ・・・ それが出来なかったことを悔やんでる」

 

緋~ちゃんがとても悲しそうな顔をした

 

「残りの3人の事も聞いたんだ」

 

「フィーとサトシが楽園を出て程なくだったらしい ・・・」

 

蒼の森が教えてくれた ・・・

妖精の国は女神の国に変わったのは

それが切っ掛けだから ・・・

青の妖精が生れる度、王に据え(形式上の王)

妖精の子どもを育て、国を司るのは女神となった

 

「大ちゃんに話をする

 これ以上、悲しい想いはさせたくない」

 

「ショーはかなり参ってると思う

 さとし君を迎えに行くために頑張ってるけど

 そこまで持つのかさえ分からない」

 

「フィーとセリーの行き違いに巻き込まれた二人

 知る必要はない

 大ちゃんと話しをしよう」

 

緋~ちゃんが緊張してるのが分かる

俺達が思いだしたくないと取られかねないからだろう

でも、それで良いんだ

俺達も思い出したくない、前を向きたいから

 

 

リビングに入って行くと

大ちゃんがソファーに腰掛けて

3人と話をしていた

 

「おおちゃん」

 

「お帰り、無事にエルフの国に戻った?」

 

「ええ、3人は着替えを持ってくるって

 大騒ぎしてた」

 

「ずっと同じコロニーにいたんだから仕方がない ・・・

 それで、何の話?」

 

俺と翔が大ちゃんの前に座る

その後ろに3人が座った

 

「折り入って頼みたい事が有ります」

 

「畏まって何かな?」

 

大ちゃん、気が付いているような気がする

表情が柔らかいんだ

 

「チビとショーの事です」

 

「うん」

 

「楽園を出た二人セリーとショーの辿った道

 二人を追いかけてフィーとサトシがたどった道

 あの二人には見せたくない」

 

「記憶の旅に出るのを止めるって事?」

 

「何処を彷徨って旅をしたのか ・・・

 それを辿って行けば ・・・」

 

「二人が光に溶ける瞬間を

 追体験しなきゃいけない 

 その記憶は俺と翔だけで良い

 チビもショーも憶えていないから」

 

「あの二人が最後に発した言葉を憶えてる?」

 

俺たち二人の顔をじっと眺める大ちゃん

 

「憶えています ・・・ ショーは

 『さとしに逢いたい ・・・ セリー早く戻って』でした

 だから ・・・ セリーはあの森に急いだ ・・・」

 

翔の目が真っ赤になって泪をぽろぽろと溢した

 

「さとしは ・・・ 

 『ショー、絶対探すから ・・・ 待ってて ・・・

  フィー、早くセリーを掴まえて

  きっと待ってるから ・・・ 』

 もの凄く優しい笑みを浮かべて

 あの子は光に溶けて蒼い花の核に ・・・」

 

俺の中のフィーも泣いてる ・・・

意地を張らずにセリーを引き留めなかった自分を責めて

 

「今、3人にも聞いたんだ

 まーは、また5人で笑い合いたい

 かずは2人の帰りをずっと待ってる

 じゅんは、いつか5人で暮らしたい

 そう言ってそれぞれの花の核に戻って行ったと 

 3人ともそれを思い出させたくないと言った」

 

「あの子達は最期まで笑っていました

 私達への恨み言は一切言わずにです」

 

和が大粒の涙をこぼしながら呟く

 

「俺達は何も出来なかった

 その子達を慰める事しか ・・・」

 

「4人を止める事も出来なかった」

 

雅紀とジュンも涙を浮かべて辛そうな顔で俯いた

 

「5人とも細かい所まで思い出したんだな

 セリー聞いても良い?」

 

大ちゃんはとても冷静な顔をする

孤独の神さまの顔を思い出した

 

「なんでしょうか?」

 

「妖精はエルフよりも純真無垢で儚い

 なのに、どうして楽園の外に連れ出した?

 考えればわかることだったはず

 それを止めなかった4人にも責任はあると思うが」

 

翔は俯いたまま黙り込んだ

大ちゃんが真っ直ぐに翔を見据えて

 

「緋の中に居るセリー

 君に聞いてるんだよ」

 

翔の髪色が一瞬緋色になった

その後すぐに顔を上げる

 

「あの方を ・・・ あの方を探そうと思った ・・・

 探して ・・・ フィーを解放して欲しいと頼みたかった ・・・」

 

「原初の神は光に溶けて消えた

 どうやって捜すつもり?

 荒唐無稽だとは思わなかったの?」

 

「そんな事考えられなかった ・・・

 日に日にボロボロになっていくフィーが見て居られなかった

 そもそも ・・・」

 

そう言ったあと口をつぐみ

大ちゃんを睨みつけたセリー

 

「そもそもの続きは

 それを言わなければセリーの不満は消えない」

 

「そもそも、貴方が地上になんか降りるから」

 

「セリー!」

 

ディルとファーとジュンが声を上げた

 

「貴方が楽園を放り出していくから

 楽園は貴方のいる地上を目指し暴走して ・・・

 統制が聞かなくなっていった」

 

セリーの言う通りだ ・・・

あの方を追って楽園は地上に向かった

だけど ・・・ 楽園が無ければ俺達はいない ・・・

 

「セリー、楽園が無ければ僕たちは生まれていない

 それに ・・・ 楽園がエルフの国に生まれ変わった時点で

 あの場所は楽園じゃない」

 

和が一番冷静に分析する

 

「セリーがエルフの国の礎を作ったんだよ

 その時、フィーと話をしないから」

 

ディルが声を荒げる

 

「話したくても出てこなかった ・・・」

 

「出て来てたよ

 セリーが避けていたんだ

 セリーは蒼の森に嫉妬してたから」

 

ジュンが小さい声で答える

 

「フィーがどうして蒼の森に居るか

 セリーは聞かなかったの?」

 

「聞いても教えてくれないから ・・・」

 

「蒼の森は楽園の要

 あの場所に私以外の者が踏み込めば

 楽園は崩壊するように作られていた

 私が居なくなった後、蒼の森は主を求めた

 そこから生まれたのが蒼のエルフ

 フィーはもの凄く長い時間一人だった

 昔の私と同じ ・・・ 孤独を生きていた

 蒼の森で流す涙が滴となり

 蒼の花は妖精を生み出した、それが蒼の妖精だ

 二人は兄弟と言っても過言ではない

 二人の望みが4人の誕生を願った」

 

「楽園の主はフィーだったって事?」

 

「必然的にそうなってしまった

 エルフの国は急激な人口の増加に伴い

 広がり続けていた事は知っていた?」

 

「知らなかった ・・・」

セリーも3人も同じように答える

 

「フィーは ・・・ 知っていたよな」

 

「知っていました ・・・

 どんどん広がり続ける楽園

 だから地上に落ちるのだと ・・・

 落ちた後、広がるのを止めなければと ・・・」

 

「どうして話してくれなかったの?」

 

「国造りに忙しかったから ・・・」

 

「私の作った楽園は誰も壊せない

 ただ、後からできた場所は地上と融合する

 それが分かってたから

 フィーは必死だった ・・・

 フィーは私に似て一人で抱え込むから

 誰にも相談できなかった、唯一人を除いて」

 

「さとしですね」

 

「ああ、二人は兄弟だから ・・・ 寄り添えるのはちびちゃんだけ

 それと ・・・ 蒼の森は2人を癒す場所でもある

 セリーは蒼の森を嫌っていたから知ろうとしなかった

 ファーとジュンは知っていた

 ディルはセリーを慕っていたから知らなかったな」

 

「蒼の森はあの方そのもの ・・・

 どんなに足掻いても勝てないって ・・・」

 

「嫉妬だな ・・・だから蒼の森を憎んだ ・・・」

 

「僕を迎えてくれた頃の

 あの優しい笑顔のフィーに戻して欲しかった ・・・

 だから解放して欲しくて ・・・」

 

「フィー、君が何も話さなかった事が

 セリーをここまで追い込んだ分かった?」

 

「セリーの苦悩を知ろうとしなかった ・・・

 俺は国造りには向いていないから ・・・

 手伝わないのを怒ってるとばかり ・・・」

 

「そんな訳ないでしょ

 いつもフィーの事考えて ・・・ 

 セリーは泣いてたんだよ」

 

ディルが見ていたセリーは

フィーの知らないセリー

 

「俺の勘違いがあの二人を ・・・」

 

「それは違うかな

 じゃあ、フィーはどうしておちびちゃんを連れて行った?

 いくら始まりの蒼のエルフでも、ちびちゃんは守れない」

 

「それは ・・・ チビが望んだから

 ショーを迎いに行きたいと

 きっと泣いてるからって ・・・」

 

「セリーを想ってついていったショー

 どちらも断われなかったよ」

 

「セリーの言いたい事は分かった

 フィーはフィーはないの?」

 

「俺たちの間違いは認めます

 だからと言って、チビたちは何も悪くない

 記憶を辿る度に出す必要はない

 これ以上辛い思いも

 過去に囚われるのも止めさせたい

 お願いです ・・・ この気の遠くなる年月を越えて

 貴方に逢えました、だからこれ以上は ・・・」

 

「もっと言えばいいのに

 どうして助けてくれなかったって ・・・

 5人とも我慢強いから

 特にフィーとセリーは ・・・

 セリーが言いたかったことは尤もだと思う

 勝手に作っておいて押し付けるな

 フィーも同じだな、作ったのならもっと強固にしておけって」

 

俺達は何も言えない

あの方が楽園を残してくれなければ

この世界に生まれて居ないのだから

 

「大ちゃん ・・・ そんなこと言えない ・・・

 俺達は楽園に生まれたんだ

 だから今がある」

 

大ちゃんが真っ直ぐに俺達の顔を見て

名前を呼ぶ

 

「フィー、セリー、ディル、ファー、ジュン

 あの頃の私にはなんの力もなく

 君達をあの子達を助けてやることも出来なかった

 苦労を掛けたことは済まないと思っている

 君たちの歩んだ道が

 今のエルフの国、妖精の国に繋がっている

 5人とも間違ってはいなかった

 私の名において5人を解放する」

 

大ちゃんの言葉で俺達の中に居た5人が

光の中に溶けていくような気がした

 

「大ちゃん ・・・ セリー達は?」

 

「記憶の奥の中に帰って行ったよ

 もう始まりの5人の記憶に囚われることはない」

 

「チビたちは?」

 

「チビたちも同じ

 始まりの5人は同化している

 エルフが解放されれば妖精も解放される

 これで、蒼、緋、緑、黄、紫のエルフは

 前を向いて歩いていける」

 

「じゃあ、ショーはどうなるんですか?

 あの子だけ花の核がない」

 

翔がものすごく焦った顔をした

 

「花の核は私が修復した

 神の庭の赤い花に戻すのは

 君達が神の庭の道を見つけてから」

 

「教えてくれないの?」

 

「それはお兄ちゃんに失礼じゃないか?」

 

「そうか ・・・ お兄ちゃんは大人だ

 チビたちとは違う ・・・

 やっぱり全部思いだすって事?」

 

「思い出すというよりは神の庭で光に溶けた

 その事実を受け入れたと言った方が良いかな

 夢で追体験はしないよ」

 

漸く翔が安堵した顔をした

 

「良かった ・・・ それだけが気掛かりで」

 

「チビの中に刻まれた記憶も

 柔らかいベールに包まれた

 あの子の叫びはずっと聴こえていたから ・・・

 もう大丈夫 ・・・ 蒼の森の中の蒼の花が受け止めた」

 

「だからエルフの国に戻したの?」

 

「其々の記憶も、花の中に戻って行ったよ

 後は私の歌を聴かせれば

 記憶の海に帰っていく」

 

「だから叶わないんだって ・・・

 ほんとに」

 

「此処までしないと本音で来ないだろ?

 教えてやろうか?」

 

悪戯っぽい顔をする神様

 

「なんです?」

 

「楽園の容のない精霊や妖精は

 いつも私に文句ばかり言ってた」

 

「ほんと?」

5人とも唖然とした顔で眺める

 

「私は嘘はつかないよ(笑)

 昔のままで良いんだ

 だから楽園だったんだよ」

 

きっと、失って初めて気が付いたんだ

 

「じゃあ、これからは遠慮なく」

 

「ああ、それでいいよ」

 

今迄で最高の笑みを浮かべた大ちゃん

その笑顔はあの方にそっくりだった

 

 

 

 

 

 

<続きます>