取りあえず歩き出そうか 6 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

手紙には日時と場所だけが記載されてた

 

ランチの皿をカウンターに置いたマスターに

小さな声で訊ねる

 

「マスター ・・・ 」

 

「なに?」

同じように小声で答える

 

「指定された場所に行ったら

 彼がいるってことは無いよね?」

 

もしそうなら、今すぐ話を聞きたい

 

相葉君の方をチラッと見て 

マスターに向き直す

 

「それはない ・・・ 彼は全く関係ないんだ ・・・

 昔々の事は分からないが

 現在の彼と君が逢いたいと思ってる彼とは

 全くの別人だよ ・・・

 reserveの札の彼が君と同じ苗字だから

 その彼に渡していいのか悩んでたくらいだ」

苦笑いを浮かべて手をヒラヒラさせた

 

「じゃあ、この封筒を送った主は

 風間さん?」

 

「いや、その封筒は相葉家の物

 多分、表立って動けないから

 彼が代わりに来たのだろう」

 

「表立って動けない? ・・・」

 

どんな柵があるんだ?

 

「念には念を入れた ・・・

 妨害があっては困るから」

 

鍵はこの封筒の主が握ってるという事か ・・・

 

「そこまで警戒しないといけない相手なんでしょうか?」

 

「彼が戻ったのだから

 今までのような護衛はついていないと思うが

 相葉家の動きには敏感だから ・・・」

 

「ちょっと待ってください

 護衛が付いていたって ・・・」

 

マスターが小さく溜息をついて

 

「本当に彼の事しか見ていなかったんだな ・・・

 ずっと ・・・ 護衛はついていた ・・・

 私が京都案内を頼んだ時も

 後ろから車が付いてきてたからね ・・・」

 

だから ・・・ ここまで異例の速さで ・・・

長に就任することになったって事?

 

全く気が付かなかった ・・・ 

 

「大馬鹿ですね ・・・ 何も気が付かなかった ・・・」

 

「護衛もプロだから仕方がない

 私も同じだよ ・・・ 小栗君が教えてくれた」

 

「智君は気が付いていたんですか?」

 

マスターが目を伏せて小さく頷いた  

 

封筒に中には短い文が3行

 

 

冬の終わりの日 午前10時

○○庭園内のカフェでお待ちしています 

(テーブルの上にこの封筒と同じ物を乗せています)

 

 

冬の終わり?

今が一番寒い時期だろ

昔の人が良く言う

「暑さ寒さも彼岸まで」って意味だとすると

春分の日の前日?

2か月近くある ・・・ そんな待てるわけないだろう

 

 

「どうかしましたか?」

 

食べ終わった皿を片付けに来た彼が

心配そうに訊ねる

 

「冬が終わる日って何時だと思う?」

 

彼が困惑気味の顔をして

 

「冬が終わる日ですか? ・・・

 桜が咲く前? ・・・ いつだろう? ・・・

 冬が終わるって事は春が始まるって事ですよね ・・・

 春で言うと ・・・ 不思議な事が一つあるんですけど

 年賀状に「新春」とか「初春」って使うでしょ

 それでいくと、冬の終わりは大晦日ってことでしょうか

 マスター ・・・ マスターならわかる?」

 

厨房に居るマスターに声を掛ける

 

待てよ ・・・ ああ! ・・・ そう言う事か

元旦が春の始まりと考えれば

大晦日が冬の終わり

既に終った日には逢えない ・・・

 

つまりは旧暦の大晦日 ・・・ 節分だ ・・・

 

「相葉君、ありがとう

 君のお蔭で分かった」

 

「分かったんですか?

 それは良かったですね ・・・

 で、いつなんです?」

 

「君の言った通りだよ

 冬の終わりは大晦日で当たり」

 

「はあ ・・・ そうですか ・・・」

キョトンとした顔で頷いた

 

「相葉君、カレンダーに書いてあるよ」

マスターがニヤリと笑った

 

珈琲を頂いて

そのままカウンターに突っ伏したら

いつの間にか眠ってしまった 

胸ポケットに入れた携帯が鳴る

慌てて起き上がると肩からブランケットが床に落ちた

 

「気にしないで良いよ

 少しでも休まないと、身が持たない」

マスターが柔らかい笑みを浮かべて頷いた

 

ブランケットを拾ってから、携帯を取り出す

慌てて電話に出る相手などいない ・・・

 

 

画面の名前は小栗君 ・・・

ほら ・・・ 貴方じゃない ・・・

 

「こんにちは、櫻井さん

 今晩、何か予定は有りますか?」

 

無いのが分ってるのに聞く ・・・

 

「予定はないけど ・・・」

 

「今晩、お会いできますか?」

 

「会えるけど ・・・急用?」

 

「ええ、急用です」

 

「智君に何か有ったの?」

俺にとっての急用は貴方の事意外ない

逸る気持ちを抑えながら訊ねる

 

「それは ・・・ 何も ・・・ 変わりないです ・・・」

 

ワントーン下がった、申し訳ないって声

 

「じゃあ ・・・ 電話で済む?

 それとも家に来てくれる?」

 

「いえお伺いできないので

 綾野のcafeに来て頂けませんか?」

 

「綾野君のcafe?

 彼が帰って来たって事?」

 

「それは違います ・・・ 彼奴はいませんが

 店は営業しています

 出来れば午後7時半までにおいで下さい」

 

「何の用かを教えてくれないと ・・・

 正直 ・・・ 外出するのも億劫でね ・・・」

 

家に居ても何もすることは無い

ないけど ・・・ 

 

「今日は何日ですか?

 約束は守って頂かないといけません

 思い出せたら来てください ・・・

 僕達も最善を尽くします」

 

それだけ言って電話が切れた

約束を守る?

 

今日は謎解きばかり ・・・

正直疲れた ・・・

 

「マスター

 少し眠る事が出来ました

 ブランケットありがとうございました」

 

「どういたしまして ・・・

 少しでも休めたら何よりだよ

 ゆっくり寝なさいと言っても無理だろうから ・・・」

 

無理です ・・・ 心の中で答えた

貴方がいないと眠れない

 

「そろそろ帰ります」

 

「コートも乾いてるだろう

 気を付けて帰りなさい

 櫻井君、最後まで望みは捨てない事

 きっと繋がってるはずだから」

 

笑顔のマスターが大きく頷いた

 

「ええ ・・・ 俺より頑固なんです

 だから、絶対諦めてないと信じてます

 じゃあまた来ます」

 

「雪が止んで晴れ間が見えてる

 今日の天体ショウーは綺麗に見えるはずだよ」

 

天体ショー ・・・

スーパー・ブルー・ブラッドムーンだ

 

『一緒に観よう』って俺が誘った

 

ドアの前でコートを持って立ってる相葉君に

お礼を言って外に出た

 

 

 

 

 

<続きます>