full of love 10 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

高級洋菓子店の紙袋に入った

手土産らしきものを二宮君に渡した

らしきものとは ・・・ 手土産と呼べる量ではない ・・・

袋の中には大小の箱が数箱

其々、持って帰るようにと言う配慮らしい

 

「皆さんで食べてください

 それと、これはこの事務所に」

 

別の包み紙は老舗和菓子屋のもので

茶菓子が入ってるようだ

ぞくに、こっちを手土産と言う気もする

 

「では、こちらはお出しいたしますね」

二宮君がお茶の用意を始めた

 

「二宮君、お構いなく」

お父さんが遠慮がちに答える

 

「茶の用意をせずともいいぞ

 今日は大事な話が合って 

 寄らせて貰ったんじゃ

 二宮君、君もこっちに座ってくれないかな」

 

鮫島祖父さんが二宮君に向かって

こっち来るように手招きする

 

「お茶の用意は出来てましたから

 お出しするだけです」

 

お盆に乗せたお茶を運んで

頂いた茶菓子の封を開けて

お菓子皿に入れて持ってきた

(一応事務所なので、接待できるように用意はしてある)

 

「どうぞ」

そう言って、笑みを浮かべて俺の隣に座った

 

「今日はお二人揃ってどうされましたか?」

 

「今日はビジネスの話をしに来たんじゃ

 智に話していたんだが

 のらりくらり躱されて、中々切り出せなかった

 昼過ぎの電話でやっとお許しが出たから

 早々に時間を作って貰ったと言う訳じゃ」

 

ビジネスの話は分かったけど

中味は全く分からない

お父さんの顔を見ると、苦笑を浮かべて

 

「父さん、この話の経緯を話さないと

 二人が戸惑うだけですよ」

 

「お前が説明しなさい」

祖父ちゃん丸投げだ(笑)

 

「父が申しましたようにビジネスの話で伺いました」

お父さんの顔が経営者の顔に変わる

 

この人、かなり仕事が出来る人だ

眼を見ただけで分かる

 

「ビジネスの事と申されましたので

 確認させて頂きます

 家の事務所についてのお話でしょうか?」

 

「はい ・・・ 『Friendship』の芸能部門の話です

 店の経営については先日ご相談を受けて

 然るべき会計士をご紹介させて頂きました

 芸能部門の方も一緒にという事は聞いております

 正直に伺います

 芸能部門の収支についてです

 このまま、この事務所は続けていけますか?」

 

痛い所を突かれた

相葉君のお店は売り上げも上々で

それなりの利益を上げてる

事務所は ・・・ 正直、経営は赤だ ・・・

智君の貯金を切り崩しての経営 ・・・

それも何とかしないと底をつく

 

「恥ずかしい話ですが、厳しい状況です

 2人のタレントと一人の脚本演出家のギャラで

 この4人を養い切れるかと言われれば

 無理な話です

 大々的に、タレントの売り出しをしたくても

 現状では出来ません」

 

「智の舞台が決まっても

 そこまでのギャラは出んだろう」

 

鮫島祖父さんまで経営者の顔

こんな厳しい顔はあの時以来 ・・・

この人は一流の経営者、全て見透かされてる

 

「仰る通りです、春までの舞台が決まってはいますが

 まだ新人扱いですから ・・・」

 

八嶋さんからのギャラは

復帰の舞台と言う理由で破格のギャラだった

今回の舞台ギャラはその3分の2

それ以降の舞台は小さい劇場だから、より少ない

 

「それは仕方がない事です

 まだ実績が無いのですから

 前回の舞台のギャラが破格だったと思った方が良いでしょう

 経営者として言わせて貰えば

 櫻井君、君は失格です」

 

柔らかい口調でも言ってる事は厳しい

言われると思った ・・・ そう、俺は甘いんだ ・・・

 

「それはどういう意味ですか?」

二宮君が声を荒げて、不機嫌な顔をする

 

「図星を射されて腹が立ったかな?

 櫻井君は理由を分かってるぞ」

 

鮫島祖父さんは冷ややかな顔をして

ニヤリと笑った

 

「二宮君、鮫島さん達が仰る通りなんだ

 最高のスポンサーが目の前に居るのに

 智君の心情を考えて、申し入れをできなかった

 その事ですよね?」

 

「そうです、どんなに智が嫌がっても

 そこを説き伏せなければいけない

 そうでなければ劇団を持つことは、夢のまた夢

 あの子の気持ちを最優先にして

 大局を見失っては、船は沈みます

 共倒れにならないように

 相葉君の店を切り離した、違いますか?」

 

二宮君と二人で相談して決めたこと

彼も実情は理解している

だから給料は本当に少ない

智君に至っては給料すら貰っていない

家で一番高額な給料は松本

それでも実家暮らしで、やっと生活できる

 

「そうです ・・・ 彼は俺が無職の時、支えてくれ大切な友人です

 この事務所の赤字を補填して店が傾いては

 本末転倒ですから ・・・」

 

「現状が分かっておるなら見込みはある

 では、どうすればいいか考えておるか?」

 

鮫島祖父さんが真っ直ぐに俺の目を見た

 

俺はまず二宮君に許可を貰う

 

「二宮君、俺達の力だけでの事務所経営は無理が有る

 そこは理解してくれてると思う

 正直、二人を売り出す為には資金が必要なんだ

 そこで、鮫島さんにスポンサーになって頂けるように

 お願いしたいと思う」

 

現状は理解していても戸惑うのは必定

二宮君が厳しい顔をして訊ねる

 

「大野さんの気持ちは ・・・ 大丈夫なんでしょうか?」

 

見守って欲しいという言葉を

理解されてると信じてる

仕事に口出しだけはさせないつもりだ

 

「そこはきっちり線を引かせて頂く

 幸い、鮫島さんの息子であることは公表していない

 あくまで大野智として仕事を取ってくる

 仕事に関しての口出しは遠慮して頂く」

 

「それなら大丈夫だと思います」

 

俺達は頷き合って、鮫島さん達に向き直った

 

「鮫島さん ・・・ 私共の事務所は生まれたての半人前です

 ただし、所属してる役者は超一流だと自負しております

 出来ましたら、私共のスポンサーになって頂けないでしょうか?

 これはあくまでもビジネスのお話

 公私混同は致しません

 見込みがないと判断されたら

 引き揚げて頂いて構いません

 その時は、出資金の返済をさせて頂きます

 どうぞご検討ください」

 

二人で頭を下げた

 

もっと早くするべきだったんだ

俺は、貴方を裏切ることになるかもしれない

 

「二人とも頭を上げなさい ・・・

 お前さんたちの覚悟を聞きたかった

 儂が今日来た目的は一つ

 お前さんたちの事務所に出資させて頂けんか?

 ビジネスのイロハも知らん若造が、必死で頑張っておる

 その手伝いをさせて貰いたいんじゃ

 孫が可愛いからじゃない

 お前さんたちの夢を叶える、手伝いがしたいんじゃ」

 

 

へ? ・・・ 出資の話?

二宮君を見たら同じように

面食らった顔をしている

 

「実は智には、ずっと話をしていたんじゃが

 中々、首を縦に振ってはくれなんだ

 それは、儂が信用されとらんと言う事じゃな

 自業自得じゃから ・・・」

 

そう言って大きな声で笑う

まるでキツネに抓まれたみたいな話

鮫島祖父さんはなおも話を続ける

 

「あの子の許しを得るまで、待つつもりだった

 今日の昼に、やっとお前さんに話す許可を貰った

 その事を息子に相談したら

 それでは、正式にビジネス契約をした方が良い

 そう言われてな ・・・ 少々、厳しい事を聞かせて貰った」

 

「本当に智君がそう言ったんですか?」

 

「嘘はついておらんぞ、お前さんと同じ返事じゃった

 見込みが無ければ切り捨てて欲しいと

 出資金は返済すると ・・・あの子は頑固だから

 そうなったら身を粉にして働いて返すだろう

 そこはお前さんが守ってくれるんじゃろ?

 あの子を本場のブロードウェイに

 連れて行ってあげてくれんか」

 

にこやかな顔で俺と二宮君を見た

 

「勿論です ・・・ 

 ゆくゆくは劇団を持つのが夢ですから」

 

「願ってもないお話です ・・・」

 

「二人がそう言うなら、断る理由もなかろう?」

 

「はい喜んでお受けします」

 

「では、 正式な契約をする前に 

 大まかな条件を提示させて頂きます」

 

鮫島さんが淡々とした声で話し始める

 

「条件ですか?」

 

「当然です、これはビジネスです

 万が一不利益の場合は引き上げます

 それでは申し上げます

 条件1、この事務所を株式会社にする

 条件2、社長は櫻井君の父上にお願いしたい

 つまりは正式な株式会社にしてください

 福利厚生も必要だからね

 それ以外の細々としたことは文書でお渡しいたします」

 

「それは今すぐにですか?」

 

「出来れば、そうして頂きたい」

 

鮫島祖父さんが手をヒラヒラさせて

 

「そこまで急がんでもいい ・・・

 先ずは儂が出資する事を認めてくれ

 それからじゃ ・・・ 

 軌道に乗ったら会社にすればよいじゃろう」

 

鮫島さんに言って聞かせる

 

 

話しのスピードに付いていけないとはこの事で

どう返事して良いのかすら、あやふやになってくる

 

「正直に言います、僕は全く経営は素人です

 イロハを教えては貰えませんでしょうか

 それは父も同じだと思います」

 

「それは違うぞ 

 お主の父上は有能な方じゃ

 昔、調べさせてもらったからのう ・・・

 だから、白羽の矢を立てたんじゃ」

 

「ああ ・・・ あの時 ・・・」

 

「済まなかったな ・・・」

そう言って、頭をぺこりと下げた

 

「もう時効です ・・・ 僕に教えてください」

 

「それは此奴が教えてくれるじゃろう

 儂は時代遅れじゃからな ・・・ 

 さて、お茶を呼ばれようかな」

 

鮫島祖父さんは茶目っ気たっぷりの笑みを浮かべて

二宮君の淹れたお茶を啜った

 

 

 

 

 

 

<続きます>