取りあえず始めようか 46 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

引っ越し前にお店に来て欲しいって

どう考えても下心あるだろう

そもそも、これで縁が切れる訳じゃない

向こうは大家で、こっちは店子になるんだ

隠してまで貸したかった事が腑に落ちない

そこの所、追及したいんだけど

借主は貴方だから我慢してる

俺としては最大の譲歩だと思うんだけど

 

「またまた ・・・ 難しい顔してるね」

呆れた声でマスターが苦笑い

 

「マスター聞いて、すげぇ感じ悪いでしょ

 朝からずっとこんな感じなの」

 

呆れたを通り越した顔で貴方が呟く

 

「離れるのが淋しいんだよ

 それくらい許してあげなさい」

 

そうだそうだ ・・・ マスターもっと言ってください

 

「離れるって言っても、丸々2か月ないよ

 俺の引っ越しは連休中だから

 ずっと一緒に居るんですよ

 離れてる期間なんて、あっという間なのに

 すげぇ大袈裟なの」

 

口を尖らせて剥れた顔で俺をチラッと見る

 

「それは違うでしょ

 毎日一緒に居たんだよ

 それが週に2日間だけになるんだよ

 俺に取っては由々しき事態です

 分かってても淋しいに決まってるでしょ」

 

この言葉、何回言ったかな ・・・

 

「はあ ・・・ まだ言ってる ・・・

 ずっとこの調子 ・・・ 納得しても、すぐこんな感じ ・・・

 本当に大丈夫かな ・・・ 心配になってきた ・・・

 マスター、俺が向うに行った後

 コイツの事頼んでいい?」

 

マスターがお気の毒って顔をして

クスっと笑った

 

「いいよ、彼がこっちにいる間

 夕食の面倒は見てあげる」

 

「マスター、ホントにいい?」

 

「もちろん、引き受けたよ」

 

貴方が嬉しそうな顔をして

 

「良かった、これで安心して京都に行ける」

そう言って俺の肩を叩いた

 

何が安心なの?

ジト目で睨みつめると

マスターが破顔して

 

「アハハ ・・・ 相当手を焼いてそうだね ・・・

 まあ、一緒に暮らし始めてひと月だっけ?」

 

「ええ」

 

貴方が困ったなぁって顔で頭を掻いて答える

 

「一番甘い時に離れるんだ

 そりゃ、言いたくなくても愚痴りたくなる

 それくらいは許してあげなさい

 まあ、君の心の中の不安も

 彼が一緒に吐き出してくれてると思えばいい

 君は溜め込むタイプだから

 彼はよく分かってるって事だ」

 

貴方の心の中の不安?

キョトンとした顔でマスターを見ると

 

「大野君だって、君と同じくらい離れることに不安なんだ

 だけど、一緒に揺れる訳に行かないだろう

 そうなると、君は暴走する(笑)

 だから平気な顔をしてるんだ

 それくらい分かってあげないと」

 

マスターが柔らかい口調で諭すように話す

 

「マスターには隠せないな ・・・

 コイツがあたふたするから

 しっかりしなきゃって思って ・・・

 でも、それが却って裏目に出ることがある」

 

ちょっと困った顔で呟く

 

「まあ、そうやって育んでいくんだ

 偶には彼を思いっきり困らせてあげなさい(笑)

 お互いの根底に流れてるのは

 相手を思いやる気持ちだから

 それが有れば大丈夫だよ

 櫻井君、彼が安心って言ったのは

 食生活がきちんとしてれば

 健康面は心配する必要がなくなるって意味だよ

 彼は君の事しか考えてない(笑)」

 

「もういいから ・・・ 恥かしくなってきた」


貴方が耳まで赤くなってる

 

「智君 ・・・ ありがとう ・・・

 俺大丈夫だよ、ちゃんと出来るから安心して」

 

 

この人の優しさ甘え切ってる俺

流石に面目ない ・・・ 穴が有ったら入りたくなってきた ・・・

 

そんな空気を変えるように

マスターが明るい声で

 

「環境が変わるんだ不安になって当然

 馴れるまでの辛抱だから

 それに、夏前には一緒に暮らせるんだろ

 さて、忙しいのに呼んだのは、これを渡したかったんだ」

 

マスターが紙袋から箱を取り出して

カウンターテーブルに置いた

 

「なに?」

貴方が箱を手に取って、マスターの顔を見た

 

「君たち二人に引っ越し祝いだよ

 コーヒーが好きな二人だから

 ペアのコーヒーカップにした

 向こうで使ってくれるかな?」

 

「開けてもよろしいでしょうか?」

 

「どうぞ、気に入って貰えると嬉しいんだけど」

 

貴方が包装紙を綺麗に剥がして

化粧箱の蓋を開けた

 

箱の中に入ってたのは

白磁に持ち手が青いロープ状のデザイン

もち手(ハンドル)下に金のリボン

シンプルだけど品が有る

 

「あれ、マスターこれ ・・・ 」

 

「これがどうしたの?」

 

貴方が『何?』って顔で見つめる

 

マスターが人差し指を口に当てた

 

カップの裏の刻印

イギリスのアンティークだ

良いのか?こんな高いもの頂いて

 

「頂いても宜しいのでしょうか?」

 

マスターはニッコリ笑って

 

「勿論、彼のイメージじゃない?」

 

「ええ、凛とした感じが似てます ・・・」

 

「気に入って貰えると嬉しいんだけど」

 

「すげぇ、カッコいいよねこのデザイン

 すっきりとして品が有って ・・・ 気に入った

 マスターありがとう」

 

この人、分かってるのかな?

かなり高額だと思うけど

 

「それは良かった、選んだ甲斐がある 

 このカップで、美味しいコーヒーを飲んでくれると嬉しいかな

 新しい土地に馴れるまでが大変だけど

 君達なら大丈夫だ

 それに月一で顔見せてくれるんだろ?」

 

「ええ、マスターの顔見ないとねダメでしょ?

 遠慮なく頂きます、大切にするね

 翔君、家の家宝だな」

そう言ってニッコリ笑う

 

この人、物の価値は分かってるのかも

そうだよな ・・・ アンティークとか詳しそうだ

 

 

家の家宝 ・・・ その言葉がくすぐったくて嬉しい

やっぱり結婚しよう

 

 

 

 

 

 

<続きます>