Treasure of life 42 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

貴方が携帯電話を取り出して

一瞬困った顔をした

それから、画面をタップしてスピーカーにした

 

「もしもし ・・・ 大野智君の携帯で間違いありませんか?」

 

鮫島さんの声が緊張で震えてるのが分かる

 

黙って車を路肩に止めた

 

「はい ・・・ そうです ・・・」

 

「私は ・・・」

 

「鮫島さん ・・・ ご無沙汰しています

 昨年の冬以来ですね ・・・ ご用件は何でしょうか?」

 

貴方の表情は落ち着いてる

取り乱す様子もない

だけど言葉がちょっと固いから緊張してる

 

繋いだ手をギュッと握り締めると

俺の方を向いて笑みを浮かべて小さく頷いた

 

「こんな事お願いできる立場でないのは重々承知しています

 それでも ・・・ 恥を忍んでお願いしたい

 どうか、私と ・・・ 私の父と会って頂けないだろうか?」

 

貴方がずっと待ち望んでた言葉

会いたい ・・・ 

その一言が聞きたかったんだよね

 

それだけで鼻の奥がツンとした

 

「会ってどうしたいんですか?」

 

冷静だけど突き放したような冷たさはない

 

「 ・・・ 今までの事を謝りたい ・・・

 私達がした事を、許して貰えるとは思っていない ・・・

 だけど ・・・ どうしても君に会いたいんだ ・・・

 私の ・・・ 私の大切な大切な息子に ・・・

 どうか ・・・ どうか ・・・ 会って頂けないだろうか? ・・・」

 

鮫島さんが電話の向こうですすり泣いてる ・・・

 

「2人で会いにみえるのですか?」

 

「 智君が嫌でなければ  ・・・ 

  一緒に会って頂けますか? ・・・」

 

「お二人とも覚悟して下さい

 僕の心の中に溜まった全てを吐き出すつもりです

 それでも良ければ会いに来てください」

 

態と厳しい言葉を伝えてるけど

顏が穏やかなんだ ・・・貴方はもう許してるんだね

 

「勿論だよ ・・・ 

 どんな責めも受ける覚悟は出来ています

 それは父も同じでしょう

 君を独りぼっちにした原因は私達 ・・・」

 

懺悔の想いがこっちまで伝わってくる声

 

「必ず二人で ・・・

 万が一『儂は良いから一人で会ってこい』

 そう言われても

 引っ張ってでも連れて来て

 『僕から逃げたら許さない』

 そう伝えてください」

 

鮫島さんが鼻をグスグスにしながら泣いて

 

「必ず ・・・ 連れて行く ・・・ 約束する

 何時?どこに伺えば良いでしょうか?」

 

「今稽古に入っているので

 次のお休みの日 ・・・ 翔君いつだっけ?」

 

貴方が小さな声で訊ねる

 

「次の日曜だよ」

 

「次の日曜の10時

 僕がこの街で最初に住んだ部屋

 公園の側のアパートの部屋

 ご存知ですよね?

 そこに来てください」

 

「分かりました、必ず伺います

 こんな無理なお願いを聞いてくれて

 ホントにありがとう」

 

「ひとつ確認していいですか?」

 

「何なりと聞いてください」

 

「一番の目的はなんですか?」

 

「会いたい ・・・ 私の大事な息子に会いたいんだ」

 

貴方の瞳に涙が浮かんでる

ずっと言っていたものね

どうして会いに来てくれないのかって ・・・

 

謝るのは二の次なんだ

会って欲しい ・・・ その次が謝りたいなんだよね

 

「では、お待ちしています

 失礼いたします」

 

「ありがとう ・・・ 必ず伺うから ・・・」

 

最後の言葉を聞く前に電話を切った貴方

 

薄っすら濡れた瞳を両掌で拭って

それから、ゆっくり俺の方を向いた

 

「ずっと手を繋いでてくれてありがとう ・・・

 翔君、知ってたでしょ?」

 

そう言ってクスっと笑う

 

「え ・・・ 何の ・・・」

 

答えるより先に貴方が俺に抱き付いて

俺の耳元で呟く

 

「翔君が、鮫島さんに言ってくれたんじゃないの?」

 

「ううん ・・・ 俺は何も言っていないよ」

 

「本当?」

 

「鮫島さんが貴方に逢いたいって連絡されてきたんだ

 貴方が舞台の稽古に入ってるのはご存じだった

 だから、いつ電話したらいいかを相談された

 俺ね、貴方はもう大丈夫だって思ったから

 何時でも良いと思いますって答えた

 まさか、今日の今日に掛かって来るとは思わなかったけど」

 

それだけ貴方に逢いたいんだ

あの方も毎朝公園にいらしてたから

 

「それを聞いて、ちょっとホッとした ・・・

 翔君に言われたから

 本意ではないのに逢いたいって言ったのかなって ・・・」

 

「そうじゃないよ、お母さんも、鮫島さんも

 口に出せなかったんだ、後悔の念が強くてね

 本当は貴方に逢いたくて仕方なかった

 やっと言えたんだよ

 それから ・・・ 貴方の伝えたかったことは

 ちゃんと伝わっていたみたいだよ」

 

罪悪感で身動き取れなかった鮫島さんを動かしたのは

紛れもなくお爺さんの一言だから

あの方も同じ、罪悪感で動けない ・・・

 

「うん ・・・ ちゃんと伝わってた ・・・

 今度も ・・・ 届くと良いけど ・・・」

貴方は伏目がちに呟く

 

「届いてる ・・・ もう受け取ってるよ

 それより大丈夫?

 その日、俺も側に居て大丈夫?」

 

「一緒に居て ・・・ あのね ・・・

 すぐに親子にはなれない ・・・

 まだ、母さんって呼べてないのに

 父、祖父ってすぐにはなれない

 ただ、もう憎みたくないから

 新しく始める第1歩にしたい ・・・

 こんなふうに思えるようになれたのは

 翔君やお母さんお父さんの存在なんだ

 ありがとう」

 

貴方が俺の事をギュッと抱きしめた

 

「貴方と出逢って、俺は優しくなれたんだ

 貴方から沢山の事を教わってる

 側に居るから ・・・ ずっと側に居て」

 

「うん ・・・ もう、絶対離れないから」

 

「kissしていい?」

 

 

貴方は返事の代わりに、甘いkissをくれた

 

 

 

お爺さん来てくれるといいね

きっと伝わってるはず

 

貴方の心の中のモヤモヤしてた事を

やっと全部吐き出せるね

 

 

 

 

<続きます>