A Sweet Moment 65 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

あの人の唇から絞り出すように零れた言葉

「俺達 ・・・ 別れよう」

泪をいっぱい溜めて ・・・ その涙を零さないように笑って

大好きだった ・・・ その言葉だけを残して ・・・

そして ・・・ 決して振り返らなかった ・・・・



別れたくない、待ってるから

俺はここで貴方の帰りを待ってるから


言えなかった ・・・ 俺を置いていく貴方に

俺の想いなんて届かないように気がして ・・・


貴方の後ろ姿が暗闇に紛れて ・・・ 見えなくなった


「ヤダ ・・・ 傍に居てよ ・・・ 俺の傍に ・・・

 行かないで ・・・ どこにも行かないで ・・・・


って泣きながら、喉につかえてた言葉を解放した

届くはずのない言葉は、暗闇の中に飲み込まれて

俺はそこから動けなかった



空っぽになった心を抱きしめながら

それでも朝はやってくる


貴方がいたあたりまえの日々は、本当は特別な日々だったって

今更気が付いたって遅いよね ・・・



貴方の送別会の日、雅紀から何度もラインが入った


「翔ちゃん、本当に来ないの?

 大ちゃん淋しそうだよ」 って ・・・


顔を見るのも辛いんだ ・・・ 

貴方からの別れの言葉は受け取ったけど

笑顔で見送る事なんて出来ないから


あの夏の日二人で来た海にいた

あの場所で約束したはずなのに

あの日の二人はもういない

波が全部飲み込んで連れて行った


日がな一日海を眺めて ・・・ 貴方への想いを捨てた ・・・

それでも捨てきれない想いは心の隅に残ったまま ・・・


翔君 ・・・ 翔君 ・・・ 大好きだよ

そう言って、優しく笑う貴方の顔が消えてくれないんだ ・・・



夜遅く家に着いた

携帯を開けば雅紀たちからのライン ・・・ それをぼんやり眺めてた


「送別会終わった、大ちゃん帰ったよ ・・・ 淋しそうんだった

 俺と潤君は泣いちゃった ・・・

 翔ちゃんに、よろしく伝えてって ・・・ 本当に良かったの?

 仲良かったでしょ? ・・・

 大ちゃんね、出発の日を教えてくれないんだ

 見送られるのは苦手だからって

 マスターも知らないって 

 翔ちゃん知ってる? もし知ってたら教えて?」

 

雅紀、俺にはもう関係ない事なんだ


「ごめん、知らない」

その一文だけを返した


すぐ後にラインじゃないメールが入った ・・・ 二宮君から


「すみません、マスターからの伝言です

 明日、カンテラに来てほしいそうです」



今は何も聞きたくないのに ・・・    

大野さんから貰った卒業祝いも封は切っていない

見えないようにクローゼットの奥に仕舞いこんだ



翌日もグズグズと一日を過ごして

夕方『カンテラ』に向かった


ドアを開けて店に入ると、お客さんは一人もいなかった


マスターが黙って俺を横目で見て

カウンターに座るように目配せして店の外に出てった


カウンターに座って待ってると

戻ってきたマスターが俺の隣に座った


「店は閉めたから人は来ないよ


 朝来てくれることを願ってたけど ・・・

 智は ・・・ 今日の午後の便でNYに発った

 朝一で顔を出して、その足で出かけて行った

 笑顔がね ・・・ 淋しそうだった ・・・


 櫻井君とは話したといってた

 それでも発つ前に会わせたかったんだ ・・・ 」


NYに ・・・ 行ってしまった ・・・

俺は ・・・ さよならすら言ってない



「櫻井君は、智のこと誤解してるのかなって思って ・・・


 何も相談せずに勝手にNY行を決めて

 自分勝手だって思ってるよね

 確かにそうかもしれない ・・・


 ずっと悩んでた ・・・ それだけは見てて分かった


 でもね、彼奴は誰にも相談しなかった ・・・ 

 俺にすら相談しなかったんだ

 一人で考えて ・・・ 一人で決めた ・・・

  

 

 あんなに優しい奴が、受験勉強で頑張ってる君に相談できたかな?

 もし相談されたら君はどうしてた?」



不意に問い掛けられた言葉

相談されたら ・・・ どうしただろうか



「分かりません ・・・ 」


そんな余裕なかった ・・・ 

貴方の夢を自分事の様に考えることなんて

出来るはずない ・・・ 自分の想いで精一杯で ・・・



「全部決めてから話してくれた ・・・

 大学を辞めてNYに行く ・・・ 親御さんに大反対されたそうだ

 それでも説得して ・・・ やっと許してもらったって

 費用は出してもらえないからって、バイトも頑張ってた


 彼奴ね、君に相応しい人間になりたいって言ってた

 挑戦もしないで夢を諦める事はしたくない

 中途半端な人間にだけはなりたくないって

 君が頑張ってる姿見て決断したそうだ


 待ってて欲しいって ・・・ 言えたらどれだけ楽だろうって

 君が困ってても傍に居てあげられないのに無責任だよねって 

 悲しそうに笑ってた



 今更聞きたくないよな ・・・ 君の中でも結論が出てるって事だから

 呼び出してすまなかった ・・・ 」



マスターの横顔も淋しそうで ・・・

堪えて想いが ・・・ 泪と一緒に溢れだした



「もう ・・ 遅いんです ・・・ 俺 ・・・ 頑張ってって言えなかった

 待ってる ・・・ って ・・・ ここで待ってる ・・・ から ・・・

 ううん ・・・ そっち行くから ・・・ 会いに行くからって ・・・

 ・・・ 素直になれなくて ・・・ 好きなのに ・・・

 別れたくないのに ・・・ 拗ねて ・・・ 不貞腐れて ・・・

 あの人の辛さを理解できなくて ・・・ ぅう ・・ っ ・・・ 責めて ・・・

 ・・・ 酷いこと言って ・・・  言わせてしまったんです別れの言葉を ・・・

 それなのに ・・・ 最後まで笑ってくれて

 ・・・ ありがとう ・・・ 楽しかったって ・・・

 俺 ・・・ どうしていいか ・・・ もう ・・・ 分かんなくて ・・・

 どうすればよかったの ・・・ 顔見たら ・・・ 行かないでって ・・・

 笑って送り出せない ・・・ 出来ないから ・・・ だって大好きなんだ ・・・

 今だって ・・・ 淋しくて押しつぶされそうで ・・・ 」


カウンターに突っ伏して泣いた


「そうだよな君だって我慢してた ・・・ 

 会えば引き止めてしまう、君もまた一番つらい選択をしたんだ

 この先 ・・・ 君にとって本当に必要な相手なら ・・・

 きっと二人の道は重なるはず ・・・ 

 たくさん恋をしなさい、それでも彼奴なら掴まえに行けばいい

 どんな事でも遅いって事はないんだから」


そう言って、俺の背中を優しく叩いて


「美味しいコーヒーを淹れるから飲んでいきなさい」

って、マスターは席を立った





その日の夜、やっとの想いで


「貴方の夢が叶いますように

 日本からエールを送り続けます

 元気で頑張って下さい」

 って、メールを送った



貴方からは

「ありがとう、頑張るよ

 翔君も元気で」

って返信が届いた

 



ありがとう ・・・ 俺を愛してくれて ・・・ まだうまく笑えないけど ・・・ 

それでも貴方の夢が叶って欲しいって ・・・ やっと言えた ・・・






いつか ・・・ また会える日まで

俺も貴方に相応しい人になれるように

頑張るから ・・・ 




 

 

   

 

 

<続きます>