アンティークショップ 紅玉 56 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

あの眩しい光の扉をくぐると広がる世界

その世界にハルさんはいる ・・・ こことは違う世界 ・・・


俺の想いが作り出した幻想が扉を開けて

理想のハルさんを連れてくるんだって思ってた


なのに ・・・ ハルさんは現実で ・・・ その想いも本物で ・・・

俺を見つめる眼差しに、嘘偽りがない事も理解してる



邸で見かけたハルさんは、とても淋しそうな眼をしてた

瞳の奥に隠してる孤独と苦悩 ・・・ 不安と戸惑いが交互に揺れて

だから抱きしめてあげたくて、その孤独を俺が埋めてあげたくて

その想いが抑えられなくて ・・・ あの人しか見えなくなってた ・・・



いま、目の前にいるハルさんには、孤独や戸惑いはない

俺を見つめる眼差しは柔らかくて温かい

俺を丸ごと受け入れて、包み込むように愛してくれる



同じ匂いなのに ・・・ その違和感は拭えない ・・・

ハルさん? ・・・ 違うよね ・・・  

俺の愛したハルさんだけど ・・・ この世界のハルさんじゃない ・・・

なんかの本で読んだ異世界の住人そんな気がするんだ


でもそんな事問題じゃないって

この前、一人で帰された時の淋しさを思い出したら

俺と一緒にこの世界に来てくれただけで ・・・ 充分幸せだから ・・・


いつか ・・・ 俺の前から消えてしまったとしても ・・・ 

決して後悔しない様に ・・・ 精一杯愛するから ・・・

一人になっても、ハルさんだけを愛して生きていけるように ・・・



仕事が終わって一目散に家に向かう

後ろから、先輩が大声で呼ぶけど聞こえない振りをする


「翔太郎 ・・・ 走ったら危ないだろう ・・・ 気を付けて帰れ」

って、先輩の言葉だけが追いかけてきたけど

振り向かずに、大きく頷いて答えたつもり


これほど時間が過ぎるのがもどかしく感じたのも初めて

玄関の扉をあけて、自分の部屋の扉の取っ手を握り締めて

思いっきり開けた



その瞬間 ・・・ 俺の大好きな笑顔が


「お帰り ・・・ そんなに慌てなくてもどこにも行かないよ」

って、クスクス笑ってる


何だか、恥ずかしくて


「ただいま帰りました」

って、小さい声で呟いて俯くと


「やり直しだよ、もっと元気よく帰って来なきゃ」

って、不服そうな顔をする


だから、思いっきり元気よく

「ハルさん、ただいま」

って、伝えると



「待ってたよ、おかえり」

そう言って、俺を抱きしめてくれる

俺もそれに応えるように、ギュッと抱きしめ返すと



「翔太郎 ・・・ 俺はいつでも翔太郎の帰りを待ってるから

必ずお帰りって言うから ・・・ ただいまって ・・・ 言って

・・・ それだけは憶えておいて ・・・」


貴方が待つ家に帰る ・・・ 夢のような毎日だって思う

叶うって言ってくれたから ・・・ 信じるよ ・・


俺に廻した腕を解いて

机の上に置かれた紙袋を手に取って


「そうだ、今日銀座に行って来たんだ

 この前の路面電車にのって」

って、嬉しそうに話すハルさんの表情が癪に触って


「ずるい ・・・ 俺も行きたかったのに」

って、怒った顔をしたら、苦笑いして


「ごめん ・・・ 今度は一緒にいこうな ・・・

 それよりこれ、木村屋のパンを買って来たんだ」

って俺の掌の上に紙袋を置いて


「あんパンは知ってたんだけど、ジャムパンってのもあるんだな」

って、興味津々な顔


「知らなかったの?だいぶ前からあるよ 

 食べた事ないの?」

って、訊ねると


「ない ・・・ ここのあんパンは食べた事あるけど

 ジャムパンはないな ・・・

 爺さんがあんパン好きだったから、あんパンしかもらった事なくて」


「ジャムは食べた事ないの?」


「あるよ、カズが作ってくれるから」


ジャムパン食べた事がない人より

ジャム作って食べてる人の方が珍しいって思うんだけど


「俺なんか変な事言った?」

って、焦った顔で見つめるから


「ジャムを手作りするって珍しいなって思って

 外国の人だからか、納得しました」

そう言って袋の中を見ると、パンが二個入ってた


「両方買って来た

 半分ずつ食べればいいかなって思って

 でもよく考えたら、夕食を食べに行くって約束だから

 夜食でもいいかなって思ってる」


牛鍋食べに行こうって言ってたけど

あまり外には出たくないな ・・・ 二人でいたい ・・・ 我儘かな


「ふふ ・・・ その顔は出かけたくないんだろ ・・・

 そう言うかもって思って、いなり寿司も買って来たんだ

 翔太郎には賄いがあるかもしれないから、一人分しか買ってない

 その夕飯とこれを二人で食べれば、十分お腹いっぱいになる」


この人には敵わない ・・・ 何でもお見通しで ・・・

子どもみたいな俺



「何で分かったの?」

って、呟くと


「大切な人のことだから分かるよ


 良く晴れた日中ならまだしも

 暗くなった寒空の下に翔太郎を連れ出すのは心配なんだ

 風邪引いたら一大事 ・・・ 布団の住人になってしまう


 それにさ ・・・ 外だと手が繋げないし抱きしめられない」


 布団の住人って ・・・ 何で知ってるんだろう ・・・


「朝も行ったけど、もう寝込むことはない」

ってふくれっ面をすると



「意地っ張り ・・・ 昔、体が弱いって爺さんから聞いたよ

 それなら、出かけようか?」


って意地悪く聞くから


「ヤダ ・・・ 今日は出かけたくない ・・・

 あくまでも、今日はだからね」


そう言って背を向けると、後ろからすっぽり俺を抱きしめて


「・・・ 今日は出かけたくない ・・・ それでいいから ・・・

 ・・・ どれだけ待った俺が来るの?

 淋しかったんだろ」


って、掠れた声が耳元を擽る


「10日近く ・・・ もう会えないかもって ・・・」

廻された腕に頬を寄せる


「ごめん ・・・ 淋しい思いさせたね ・・・

 いっぱい話そう ・・・ 翔太郎の事聞かせて」



そう言って、項にそっと唇が触れた



それだけで ・・・ 体中が熱くなる



ハルさんは、俺を振り向かせて甘くて烈しい接吻をくれる

接吻だけで意識が飛びそうになるくらい


体中で求めてる

ハルさんは、明らかに変化してる俺に優しく触れて

ゆっくり刺激を繰り返して ・・・

俺の熱を吐き出させてくれた ・・・



「直ぐにでも抱きたい ・・・ けど ・・・ ゆっくりが良いんだ

 慌てて一つになりたくない ・・・ 愛してるから ・・・

 俺に任せてくれる ・・・」



今すぐにでも一つになりたいって思う反面

まだ少し怖いのも事実 ・・・ だって ・・・ 

俺は経験がないから ・・・  

接吻だってハルさんが初めてだから ・・・



「ごめん ・・・ 俺 ・・・ よく分かんなくて

 同じようにすればいいの?」


ハルさんのを、口に含んでも上手く出来なくて


「急がないで良い ・・・ 口じゃなくてもいい ・・・

 俺の手に重ねてくれるだけで ・・・ イケるから ・・・

  ・・・ だからゆっくりで良いんだ ・・・ 俺の全部はお前のだから ・・・ 

 少しずつ俺を受け入れて ・・・ 

 ああ ・・・ 翔太郎 ・・・ 愛してる」


って、同じように熱を吐き出した ・・・



ハルさんは一晩中俺を抱きしめて眠ってくれた

目を覚ますと



「翔太郎と迎える初めての朝だね」

って、嬉しそうに俺を見つめて抱きしめてくれる


「目が覚めたら ・・・ 居なくなってるかもしれないって ・・・

 だから、時間が止まればいいのにって」



「翔太郎は泣き虫だな ・・・ 黙って帰らないから

 ・・・ だから安心して ・・・ 笑ってて ・・・ 


 今日も仕事があるだろ ・・・ 早く支度しないと

 一緒に出るよ ・・・ 一旦帰って、また来るから」


そうだよね ・・・ 帰るんだよね ・・・

その言葉が淋しくて ・・・


「うん、待ってる」

って俯くと


「俺が来るまで我慢できなくて、どうしても逢いたくなったら

 跳んでおいで ・・・  

 それから、合い鍵を持ってていい?」



来ちゃダメって ・・・ 行って良いの?

キョトンとした顔で見つめると


「 ・・・ 但し毎日はダメだよ

 どうしても我慢できない時だからね

 その前に俺が来るから」


ハルさんの胸に抱き付いて


「うん ・・・ うん ・・・ 鍵も持ってて

 我慢できなくて逢いに行ったら ・・・ ごめん ・・・

 だから、逢いに来て ・・・ 」


背中に添えられた手が、ゆっくりとリズムを刻む




二人で出かける用意をして、ハルさんは俺を見送ってくれた


「いってらっしゃい、気を付けてな」

そう言って、笑顔で手を振ってくれる


俺もそれに応えて手を振って


「行ってきます」

って伝える

 

それから、少し歩いて振り向いた時には、

ハルさんの姿は ・・・ どこにもなかった






<続きます>