アンティークショップ 紅玉 54 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

お店を臨時休業にしたので

いつもは目が届かない場所を綺麗に掃除して

時計を見ると2時間が過ぎてた


昼食の準備をして智を起こさないと

リビングに戻るとソファーに誰か座ってる ・・・ 翔さん? ・・・



落ち着け ・・・ この人が翔太郎さん?

本当に翔さんそっくりなんだ ・・・ 慌てないで話し掛けないと


翔太郎さんは俺の顔を見て、ビクッと体を強張らせて

戸惑いと不安げな瞳を伏せた


なんて言えばいい ・・・ 初めましてだけど

いきなり部屋のソファーに座ってる人を警戒しないのもおかしいし
でも、何処から入ったんですかって聞けないし ・・・

取りあえず笑顔で


「この前いらしたことありますよね

 翔太郎さん? ・・・」


そう訊ねると

ホッとした顔をして


「すみません勝手に入って

 初めまして、影山翔太郎と言います」



「俺はカズと言います

 翔太郎さんならいつ来てくださっても歓迎ですよ

 お噂は伺っております

 呼んで来ましょうか?」

って、訊ねると


「勝手に来てしまったから ・・・ ハルさんに叱られてしまうかもしれない ・・・

 ここに来たいって願わないでって言われたから ・・・

 待てなかったんです ・・・ 会いに来てくれるのを ・・・」


翔太郎さんの瞳が淋しそうに揺れてる

逢いたくて ・・・ 想いだけが募って ・・・ 

無意識に跳んでしまったんだろう


表情が凄く硬い ・・・ 

ああ、色白で ・・・ 翔さんより華奢で ・・・

でも瞳だけは同じ ・・・ 澄んだ綺麗な瞳をしてる


取りあえずリラックスさせないと


「珈琲、飲みませんか?今、淹れますね ・・・

 そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ

 大切な翔太郎さんの事を怒るはずありませんから」


そう声を掛けると、硬い表情が少しだけ和らいだ


「珈琲ですか?俺あまり飲んだことない ・・・

 ご馳走になってもいいですか?


 それから ・・・ あのガラスの箱見せて頂いて良いですか?」

そう言って、窓際に置かれたガラス箱を指さす



「ガラス箱? ああ ・・・ そこの ・・・

 どうぞ、ゆっくり見てください

 今、珈琲淹れますから待っててください」


お湯を沸かして、ゆっくり珈琲を淹れる


翔太郎さんは大切そうにガラス箱を持ち上げて

何か話しかけてるような表情 ・・・

珈琲の香りに気が付いて


「すごく良い匂いですね

 俺、あまり珈琲は飲んだことないから」

って、俺の顔を見て笑う


ソファーの前のローテーブルに珈琲を置いて


「どうぞ、熱いですから気を付けてください


 ゆっくりしてくださいね、今呼んで来ますから

 あっ ・・・ 勝手に帰らないで下さいね

 俺がハルから叱られますから」


そう伝えると、少しだけ緊張した顔で頷いてくれた


急いで階段を駆け上がって、智の部屋のドアを叩いて

返事を待たずに中に入る


「智 ・・・ 起きてください ・・・ 智」


ベッドの中でうつ伏せに寝てる智の背中を揺すると


「う~ん ・・・ カズ ・・・ もう3時間たった」

って、眠そうな顔で俺の方を見た


「翔太郎さんがいらしています」

そう告げると、いきなり起き上がって


「リビングにいるの?」

そう言いながら、もう立ち上がって部屋を出て行こうとする



「はい ・・・ いま、コーヒーをお出ししました

 

 智 ・・・ 本当に翔さんにそっくりで ・・・

 翔太郎さんは、あの姿のまま転生されたんですね

 ・・・ 言葉が ・・・  俺の事はカズとしか伝えていません

 智に任せます ・・・ 


 それと翔太郎さん不安がっています

 ハルさんに叱られるかもしれないって」


前を歩く智の背中に伝えると


「分かった ・・・ カズは俺の弟って伝えるから

 きっと、いらぬ心配してるはずだから安心させないと」


智は階段を駆け降りて、リビングに急いで入って行った

俺も慌てて後を追う



「翔太郎」

智が声を掛けると、ばつが悪そうに俯く翔太郎さん


「ハルさんごめんなさい ・・・ 俺 ・・・」

って小さく呟くと


「会いに行こうって思ってたんだ

 待てなかった?」

そう言って、翔太郎さんを抱きしめた


「逢いたくて ・・・ ハルさんに逢いたいって思ったら ・・・」

サトシは翔太郎さんの頭を優しく撫でて



「疲れてない?大丈夫だった

 そんな顔しないの ・・・ 翔太郎は笑ってて ・・・

 この前飲めなかった珈琲よりおいしいかも知れないよ」


って、顔を覗き込んで一緒にソファーに腰掛けた


「この珈琲、あまり苦くなくておいしい ・・・


 仕事場に着いたら ・・・ どうしてもハルさんの顔が見たいって ・・・

 気が付いたら来てたんだ ・・・」


そう言って、智を愛しそうに見つめる眼差し



このまま翔太郎さんの傍に居たいって気持ち、分からないでもない

智への想いだけを力にして必死に立ってる、一途で健気で ・・・

それがなくなったら折れてしまいそうな儚さがある ・・・



あの頃のサトシが悩んだのも当然だと思う ・・・

俺は全力で智を支えないと ・・・



「翔太郎、弟のカズ

 会ったのは初めて?」


「一度だけ ・・・ その時は挨拶もしないで帰ってしまって

 すみませんでした」

って、ぺこりと頭を下げた


「いいえ ・・・ 弟のカズです

 よろしくお願いします」



翔太郎さん、あの時の約束憶えてますか ・・・

智が俺を貴方に紹介してくれました ・・・

あの遠い日、壁越しにした約束 ・・・ 思い出して涙が零れそうで

必死で涙を堪えた ・・・ 

 


「翔太郎、一緒に帰ろう

 仕事場に着いたばかりって事は、今日の仕事があるって事でしょ

 俺は翔太郎の部屋の前で待ってるから

 きちんと仕事してこなくちゃね

 カズ、翔太郎を送っていくから」


そう言って、翔太郎さんと手を繋いで立ち上がった


「待っててくれるの?本当に」

そう訊ねる翔太郎さんの顔が、花が咲いたような笑顔で ・・・



「嘘はつかない、待ってる

 いつものように帰った場所に俺がいなくても心配しないで

 用事を済ませて、翔太郎の家の前に居るから

 夕飯一緒に食べよう、今日は牛鍋がいいかな」


智は俺の顔を見て大きく頷いて

翔太郎さんの手を引いて部屋を出て行こうとする


翔太郎さんが智に声を掛ける


「ハルさん待って」

そう言って、俺の傍に駆け寄って来て手を握り締めて


「カズさん、とても美味しい珈琲でした

 ありがとう ・・・ なんだろう ・・・ 

 ずっと昔からカズさんの事知ってる気がする

 ハルさんから聞いてたからかな ・・・

 じゃあまた、今度は俺がご馳走しますね」


そう言って、笑顔で俺の顔を見つめて

握り締めた手を離して、智の傍に戻って行った

智は翔太郎を愛しそうに見つめて、彼の手をギュッと握り締めて


「じゃあ、カズ行ってくるね」


それだけ言って、部屋を出て行った



二人が部屋から出て行ったあと ・・・ 堪えていた泪が零れ落ちた



あの頃、どうして受け入れられなかったんだろう

あんなに素敵な人を ・・・ 俺だけでも応援してあげれば ・・・

あの身を切るような、切ない別れはなかったかもしれないのに ・・・




どうか ・・・ 翔太郎さんの願いを 

・・・ 叶えてあげて下さい




待ってますから

この家で翔太郎さんが帰ってくることを








<続きます>