アンティークショップ 紅玉 47 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

カズが用意してくれたあの頃の服に袖を通す

微かに君がいた時代の香りを運んでくる


色褪せない想いと同じように、殆ど当時のままの状態

空気に触れさせない空間に置いてあるんだから

当然と言えば当然 ・・・


ポケットにお金を入れて、この時代の物は全て取り外した

持って行くのは ・・・ 口うるさい此奴だけ


「状況把握できてる?」

そう訊ねると


「ええ、彼の想いが智の元に届いた

 蒼のエルフである貴方の力が手助けしているんでしょう

 その手助けをしてる鍵がどこかにあるはずですが ・・・

 今のところ分かりませんね」


この相棒 ・・・ なんか知ってるな ・・・


「蒼のエルフの力か ・・・そんなに凄い物なのか?

 まあいい、翔太郎が呼んでいるのなら飛んでいくよ

 二度と後悔はしたくないから 

 あの頃の俺は翔太郎の前には絶対現れない」


俺にとっては好都合だと思う ・・・ 


「ふふ ・・・ あの頃の貴方と言ったら頑固で

 飽きれるくらい彼に対して過保護だった

 私の助言など耳に入らない、その上彼の本心すら見えていなかった

 今なら解るんでしょ?

 貴方だけを愛していた彼の想い ・・・ 受け止めてあげれば良い

 迷子になった彼の想いをもう一人の彼に戻してあげるべきです」



医者になって数年 ・・・ 確かに翔太郎は生きていた

ハルに恋をした翔太郎がどれだけ泣いていたのか

あの頃の俺は知らない ・・・ 逃げ出した俺の過ち ・・・



「行き方は分かってますか?」


「ああ ・・・ 多分 あそこが繋がってるはず」


「では、私は貴方のポケットの中で」


お前には席を外してもらう時もあるから

 ・・・ 伝えないけど ・・・



部屋を出て下に降りると、カズがリビングから出て来て



「智 気を付けて

 私はここで待っています」

って、神妙な顔で俺を見つめる



「カズ大丈夫、すぐに戻ってくる

 行ってくるから」


そう言って、カズの肩を掴んで頷くと

優しく笑ってくれた



地下へ続く ・・・ 翔太郎に時代に続く階段を降りる

君が待つ街へ俺を運んで

そう願った瞬間、明るい光に包み込まれた


目を開けたら、翔太郎の世界が広がっていた



歩道が煉瓦舗装 ・・・ 車が走る道路は未舗装

風が吹けば土埃が舞うだろう ・・・


陽の光りの柔らかさ、お日様の高さを見て朝だと思う

問題は今日が何曜日なのかって事だ

仕事の邪魔をしてもなんだし ・・・ って、道行く人がいない


意を決して扉を開けて中に入る


翔太郎の部屋の前 ・・・ 考えても仕方がない

大きく扉を二度ノックする


コンコン ・・・





中から人が動く音 ・・・



「はい ・・・ どちら様ですか」

翔太郎の警戒した様な声が返ってきた



「翔太郎、朝早くにごめん ・・・ ハルだけど」



バタッ ・・・ ドタッ ・・・




何かが倒れる大きな音がした



「翔太郎 ・・・ どうしたの?」



「イタッ ・・・ ハルさん ・・・ ちょっとだけ待って

 俺まだ着替えてないから ・・・

 今日はお休みで ・・・ ごめんなさい ・・・」


さっきの声とは違う、明るくて嬉しそうな声 ・・・


「翔太郎、ゆっくりで良いよ慌てないで

 もしかして転んだんじゃない? 大丈夫なの?」



部屋の奥の方から帰ってきた声



「大丈夫、少しぶつけただけ ・・・

 いま、着替えてる ・・・ あれ ・・・ えっ ・・・」



そそっかしいのは相変わらずだね ・・・



暫くすると、鍵を開けて扉が開いた

翔太郎はすごく嬉しそうにニコニコ笑ってる



「今日はお休みだから会いたいなって思ってた 

 そしたらハルさんの声がするから

 中に入って下さい」



そう言って俺を招き入れて扉を閉めた



「突然押しかけてすまない ・・・ もし、用があるならそちらを優先して

 俺はここで待ってるから」



「予定なんて ・・・ ハルさんが最優先だから ・・・

 昨日薬を取りに伺ったので

 もしかしたら、今日来てくれるかもって ・・・ 少しだけ期待してた」

って、少し恥ずかしそうに俯いた



あの屋敷で翔太郎に会うことはない

前日までには届けていたから

一度だけ爺さんに理由を聞かれたことがあるけど

曖昧に返事したら、それっきり聞かれなくなった事を覚えてる



「今日は翔太郎に付き合うよ

 行きたい場所があるんでしょ」

そう言うと、顔をあげて花が咲いたように笑う翔太郎

 


「おいで ・・・ 翔太郎」


思わず手を伸ばして抱き寄せてた

翔太郎が遠慮がちに俺の背中に腕を回す


「ハルさん ・・・ 会いたかった ・・・」

って、俺を見つめる翔太郎の眼差しが不安げに揺れる



愛しくて、ギュッと力を込めて抱きしめて

翔太郎の唇に俺のを重ねた

おずおずと応えるように小さな隙間が開いて

その中でお互いの舌を絡め合う

ぎこちない口づけ ・・・ それでも確かめる様に何度も ・・・




唇を離すと ・・・ 真っ赤な顔をして俺の胸に顔を埋めた

 


「翔太郎 ・・・ 愛してるよ ・・・」

って耳元で囁けば


「俺も ・・・ 」って小さく呟いて

回された手がギュッと俺を抱きしめた



この世界の俺が同じ事をしたら

歴史が変ってしまうだろう 

だから俺なんだと ・・・



お前の望みを叶えられるのは俺しかいないんだと思う



「今日は街に行きませんか?

 路面電車に乗ってみたいんです

 それから、牛鍋食べましょう ・・・ 

 あッ ・・・ そうだ今紅葉が見ごろなんですよね ・・・

 どっちがいいかな ・・・ 迷う ・・・ それに寫眞も ・・・」



一人であたふたしながら迷ってる



「ふふっ ・・・ 今日1日で全部しなくてもいいんじゃないの

 何度でも出かければ良い ・・・ 今日一番したい事は何?」



山に連れて行くのは良いけど

光りの道は使えない  ・・・ 

この時代の移動手段で ・・・


その為のお金は持ってきてる



「じゃあ、街に行きましょう

 路面電車に牛鍋です」



どれだけ時間が経っていても

翔太郎への想いは薄れていない



改めて確信するんだ

翔太郎はそのまま転生した

そして翔の中で目覚めることなく眠っていると




影山の家で抱かれる翔は ・・・ 翔太郎だね ・・・

きっと想いだけが ・・・ ずっと残ってるんだ ・・・




ごめんな ・・・ 迎えに来たから ・・・

君を翔に返すために ・・・




「じゃあ、出かけよう」




大好きな顔で笑う ・・・ 陽の光の様に温かくて

太陽の様に笑う翔太郎 ・・・




 


俺は何度この世界に来れるんだろう

お前の願いが叶えば ・・・ きっと、この道は閉ざされるだろう



一度だけ ・・・ 結ばれるために ・・・ 開いた時空 

そんな予感がしてるんだ ・・・




だから ・・・ 少しでも長く傍にいたい ・・・

許される限り ・・・













<続きます>