Ray of hope 161 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

アスベルさんが部屋を出ると同時くらいに

ジュンさんとサトシのお父さんが、血相を変えて部屋に駆け込んできた


「サトシが ・・・ 俺達の名前を ・・・ 呼びかけて ・・・」


そう言い終わらないうちに

お父さんは壁に駆け寄って手をあてて


「サトシ、聞こえる?お父さんだ ・・・

 何故、証を戻した ・・・ 戻ってくるって約束したはずだ

 母さんだって ・・・ サトシに会いたいって願ってる

 あの時、待ってるって言ってただろう

 行かないでくれ ・・・ 頼むから帰って来て ・・・」



悲痛な叫びは最後には泣き声に変って、言葉が聞き取れない

ただ壁を叩き続けている

お父さんの隣で、掌に乗せたものを茫然と見つめるジュン君




何を持ってる? 




雅紀と二人で覗き込んで絶句した



どんな時でも持っていた時計が ・・・

玉座の間に入るときも握り締めてた証が ・・・

ジュンさんの掌の上に ・・・ 証が二つある



「兄さん、これはどういう意味ですか?

 この証は兄さんの物だと ・・・ 答えて ・・・ 」


ジュンさんの瞳からも泪が零れ落ちてる



「みんな揃ってるんだね ・・・ 良かった ・・・ 

 結界の外に安全に送ったつもりだけど不安だったから



 父さん ・・・ もうすぐ完成する ・・・ あと少しなんだけど

 完成した時、力が残ってるか自信がないんだ

 戻れないかもしれない ・・・ その時はごめんね 


 1年間一緒に暮らせて楽しかった、父さんの子守唄も聞けた

 色んな所にも行ったね

 父さんとの喧嘩も楽しかった ・・・

 いっぱい甘えさせてくれてありがとう


 俺ね、父さんと母さんの子どもに生まれてきて

 ホントに幸せだよ ・・・ 母さんに会ったら


 また、俺を産んで欲しいって伝えて ・・・」




「ダメだ ・・・ 自分で直接伝えなさい

 母さんに会って『お帰り』って言う約束だよ

 サトシの願いならどんな事でも叶えてあげたいけど

 今回は承服できない、父さんがそこに迎えに行く ・・・


 だから、ここを開けてくれないか ・・・ お願いだサトシ ・・・」




「兄さん、俺もその選択は認めない

 この国で暮らすって、絶対戻るからって ・・・

 兄さんは嘘をつかない人でしょ ・・・ 

 さっきから ・・・ この証は泣き続けてる ・・・

 それに ・・・ 国中のエルフが兄さんの無事を祈ってるんだよ

 城の外の庭にはたくさんのエルフが、兄さんに力を送ってる

 みんな待ってるんだ ・・・ そんな悲しいこと言わないで ・・・」



壁越しから聞こえる、サトシのすすり泣く声



「 ・・・・ ジュン ・・・ ありがとう ・・・

 でも、これは俺の仕事なんだ ・・・ 最善を尽くさなきゃ ・・・

 また、同じことが起こる ・・・

 

 この自然に満ちた素晴らしいエルフの国 ・・・ 

 緑が溢れて、花々が色を添え、その周りを妖精が飛び交う ・・・

 壊したくないんだ ・・・ いつまでもこのままで ・・・

 この国を守ってきたのはジュンの末裔 ・・・ 感謝しているんだ

 遠い昔、この国を捨てて旅に出た

 無責任な俺を許してくれてありがとう


 その証は、次代の王を守り続けるから

 ジュン、ごめん ・・・ また押し付けてしまう


 父さん、お爺様お婆様を ・・・ お願い ・・・


 

 みんなが力を送ってくれていたんだね、だからこんなに力が ・・・」



ジュンさんはサトシのお父さんに抱きしめられて

泣きながら、それでもなお



「俺も父上と迎えに行きます、ここを開けてください ・・・ お願い ・・・」

って、壁を叩きながら叫び続けてる


 

「カズ、雅紀 ・・・」


俺達の名前を呼ぶだけで、堪えていた泪が溢れ出して



「サトシ、俺達は家族でしょ ・・・ 3人がいるところが俺達の森だって

 家族だから助け合うって、ずっと言ってたじゃん


 嘘はつかないって、帰ってくるって



 カズだけじゃない、俺だってサトシが居なきゃ笑えない

 サトシが好きだって言ってくれたんだよ、俺の笑顔が一番だって



 お願いだから ・・・ 傍に行かせて

 玉座の間には入らないから、控えの間まででも ・・・

 もう少しサトシの近くに行かせて、終わったら抱きかかえられるように

 ・・・ お願いだから ・・・」



答えるサトシの声も泪混じりの声 ・・・


「雅紀 ・・・ 雅紀の笑顔 ・・・ 大好きだよ ・・・

 いつも俺を元気にさせてくれた ・・・ ありがとう ・・・

 雅紀がいるだけで、どんな事でも上手くいくような気がしてた

 だから今回もきっと上手くいく ・・・ カズの事頼んだよ

 雅紀になら ・・・ 安心して ・・・ 任せられる ・・・・・・

 ・・・ 楽しかったね ・・・ 3人で ・・・ いつも一緒に居て ・・・

 ありがとう ・・・ カズ ・・・ 聞こえてる ・・・ 怒ってる?」



雅紀は両手で顔を隠して号泣している




「聞こえません ・・・ 遠すぎて聞こえない ・・・

 近くに ・・・ もっと近くに来てくれなきゃ ・・・ 聞こえない ・・・

 サトシの ・・・ バカ ・・・ 戻るって ・・・

 嘘つき ・・・ 一人にしないって ・・・ 約束したじゃない ・・・」



大声で叫び続けることしか出来ない

体中の水分が泪と鼻水になって流れ出る



「泣き虫だな ・・・ いつまでたっても ・・・ 

 いつも泣かせるのは俺だけど ・・・ ごめんな ・・・


 孤独だった俺を救ってくれたのはカズだよ ・・・・


 二人で生きてきたね、どんな時も俺の隣にいてくれた

 可愛い俺の弟 ・・・ 俺の最初の家族になってくれたんだ

 泣いて、笑って、怒って  ・・・  楽しかった ・・・ 

 カズが居なかったら生きてこれなかった ・・・


 いつも一人で抱え込むって怒ってたでしょ

 だけどね、俺はカズに甘えていたし頼っていたよ

 カズが微笑んで頷いてくれるだけで安心できた


 繊細で思いやりがあって、ちょっと天邪鬼だけど人一倍優しくて

 

 ふふふ ・・・ 覚えてる?アイスクリームを初めて食べた時の事

 本当に嬉しそうな顔をしてた ・・・ あの笑顔 ・・・ 可愛かったな ・・・

 

 ・・・・ 帰りたい … な ・・・ あの森の家に ・・・ いつも笑ってたあの頃に ・・・

 喧嘩しちゃダメだよ

 雅紀は最高のエルフだから仲良くしてね ・・・」



ゆっくりと、泪を堪えながら話すサトシ



ぽたぽたと落ちる、自分の涙の粒を見つめながら

ここで引き下がったら、本当に失ってしまう

俺は ・・・ 俺達は諦めない




壁から少し離れたところで聞いていた櫻井さんもずっと泣いてる

そして俺の顔を見つめて、泪でぐしゃぐしゃな顔で頷く

雅紀も、ジュンさんも、お父さんも



全員が顔を見合わせて頷く



中に ・・・ 近くに入れて貰わなきゃ救い出せない



泪を堪えて


「そんな事知ってます、私が居ないとダメなんだから

 さっさと帰って来て下さい

 何一人で別れの挨拶なんかしているんです

 私は諦めてないですから

 森の家に帰りたいなら実現するまでです ・・・

 

 近くに行かせてください、仕事が終わったら一番に顔が見たいから

 玉座の前まで入れてください」



サトシは少し困ったような声で


「 ・・・ ごめん ・・・ 出来ない ・・・

 それだけはカズの頼みでも」 

 


「何故です?貴方は前回の蒼のエルフより力は強いって

 開ける事くらいできるでしょ

 玉座の間に入れて欲しいなんて言ってない

 近くに ・・・」



「入れてあげても、元いた場所に戻せる自信がない」

って、小さい声で答える



「サトシ、父さんだけでも入れてくれないか

 玉座の間を隔てる壁から力を送る ・・・

 サトシに力を分け与えられるのは私以外いないから

 二人なら淋しくないだろ


 お前を失うくらいなら一緒に居るよ ・・・ 二度と失いたくない

 母さんだって分かってくれる」



「兄さん ・・・ 昔兄さんを玉座の間に運んだ時

 玉座に座らせた途端、結界の外に出されたんだ

 だったらどんな状況でも、俺達は外に出される

 だから ・・・ お願いだから入れて下さい」



「そうだよ、サトシが玉座の間から出てきたら

 俺が抱き上げて外の世界に戻るから

 近くまで ・・・ 近くで 俺達の声を聞いて 」



「全員同じ気持ちなんです

 サトシの傍に ・・・ お願い ・・・ 」





壁越しから聞こえてくるのは咽び泣く声 ・・・・

サトシはひとしきり泣いた後 

観念したのか小さな声で



「・・・ 開けられるかどうか ・・・ 

 ジュン ・・・ 二つの証を結界に ・・・

 ただ、俺の持っていた証は力が残っているか ・・・」

って呟いた



「怒ってますよ、まだまだ力は残っているって」

って、ジュンさんが答えると


「二つの証が光を放てば ・・・ 開く ・・・

 入れたとしても、すぐに弾き飛ばされるかもしれない

 その覚悟だけはしておいて ・・・・」

って、やり方を教えてくれた



俺達は5人で頷きあった

ここからが本番 ・・・ 全ては櫻井さんに託す




言われた通り証を翳すと ・・・ 人が二人通れるくらいのスペースが開いた



俺達はまず櫻井さんとお父さんを通し

その後俺達3人が結界を通り過ぎた



階段を降りて、玉座の前の部屋に5人で辿り着くことが出来た




壁の傍まで行って


「サトシ ・・・ 聞こえる ・・・」

そう声を掛けると




「・・・ 聞こえる ・・・ カズ、雅紀、ジュン ・・・ 




 父さん ・・・ 父さん ・・・ 俺 ・・・ 一人じゃなかった ・・・

 皆が居てくれた ・・・ 

 



 もう ・・・ 時間がないから ・・・ 続きを始めるね

 ・・・ どれくらい経ってるの? ・・・・」




「サトシ、父さんの力を壁から送り込む

 大丈夫だから ・・・」 


お父さんが必死に語り掛ける



「サトシ ・・・ 三日目に入った ・・・ 今は夜中 ・・・」




「そう ・・・ 朝まで ・・・ には ・・ 終わるよ ・・・

 みんなの声が聞けて ・・・ 嬉しかった ・・・・

 ・・・ 有難う ・・・」


そう言った後





壁の近くで感じていたサトシの気配は消えて





透き通る様なサトシの歌声が聞こえてきた


 






 

<続きます>