Ray of hope 93 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

少しづつ秋の気配がする朝

日の出を迎えるころに起きだし出かけようとすると

後ろから声を掛けられる


「おはよう 翔さん、出かけるんだったら何か食べて行かないと

 山に入るんだから、バテちゃうわよ」


そう言って、優しく笑う



「祖母ちゃん、おはよう ・・・ 大丈夫だよ

 往復で2,3時間掛かるかな ・・・ 昼には戻れると思うから

 昼食はどこかで食べようよ」



「お昼はお昼、折角作ったんだし一人で食べるのは淋しいでしょ」


こうなると断れない ・・・ 仕方ないか


「そうだね、ゆっくりはできないよ」


そう言うと、嬉しそうに中に戻って行った



祖母と朝食を済ませて、家を出る



「翔さんが行きたい場所に辿り着けるといいわね

 気を付けて行ってらっしゃい」

そう言って、笑顔で送り出してくれた



登山道から登り始める

入り口付近は杉林、その中でも一番大きな杉の木に凭れてた ・・・

ここか ・・・ って ・・・ 確かに入口 ・・・



ゆっくり登り始める ・・・ 暫く平坦な道が続き

1時間くらい歩くと、樹齢が500年くらいはある杉の木が見えてくる

そこから先は ・・・ 少し歩くと、立ち入り禁止の看板が ・・・

その辺りからブナの原生林が ・・・ 

緑だった木々から、紅葉が始まった木々へと景色が変わる

多分この先にある ・・・ あの森が ・・・



ブナの森はデリケートだって聞いた ・・・ だから保護されてる

入っちゃダメなのかな ・・・ 立ち止まって辺りを見回す

森を漂う風が葉擦れを起こして、囁いているように聞こえる



ざわざわ ・・・ ざわざわ ・・・ ( ここから ) ・・・

 


大きなブナの木の傍の細い道が光ってる ・・・ 木漏れ日が照らしてるのか

まるで呼ばれているような気がして、その道を歩き始める



不思議な感覚なんだ ・・・ 俺はどこを歩いているんだろう

どれくらい歩いたか分からない ・・・

気が付いたら、あの場所についてた

懐かしい匂いに包まれて



倒木のベンチ ・・・ 温かくて ・・・  

俺はここに座った ・・・ 空を見上げて ・・・

射し込む光が顔を照らす ・・・ あの時は星空 ・・・



違う ・・・ もっと前 ・・・ もっと前に、ここに座った

遠い ・・・ 遠い ・・・ 昔 ・・・



誰かが謳ってる ・・・ その声を頼りに ・・・

 ・・・ 走ったんだ暗闇の中 ・・・ 



誰を捜してた ・・・・ 分からない ・・・



この場所が重要な場所だって事は分かる

それ以外は ・・・ どんなに考えても ・・・



この場所に辿り着けたことに意味があるのかも知れない

そう思って、来た道を戻ろうと歩き出した




気が付いたら、登山道の入口に居た


??? ・・・ 何が起こった ・・・


時計を見れば、登り始めて2時間 ・・・



これって ・・・ あの森は幻 ・・・ 

俺は引き返したのか、あの杉の木から ・・・

でも下山した事を覚えていない ・・・



狐に抓まれた気がして ・・・・

そのまま ・・・ 車に戻った ・・・ 大切な場所? ・・・



だけど ・・・ 心が満たされたんだ ・・・





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「彼が ・・・ そうなんですね ・・・ 」


通り過ぎた櫻井さんの後ろ姿を見つめながら

サトシのお父さんが呟いた



「はい、あの方がサトシの最愛の方です ・・・

 あの方には効かないんでしょうか、サトシの結界は」


そう尋ねると、お父さんは頭を振って


「いいえ、結界は破られていない ・・・

 サトシはこの森の精霊たちに愛されているんですね

 少し待ちましょう」


そう言って、古株に腰を下ろす


「連れまわして申し訳ないね」



「いいえ大丈夫です、この森はサトシと二人でよく歩きました

 冬は雪に閉ざされる場所もあって、秋に冬支度の為の食料や薪を集めて ・・・

 と言っても、俺は元の姿に戻りますからサトシの為の物ですが

 サトシはあまり食べないんです ・・・ 心配で ・・・」



「苦労したでしょ ・・・ 昔から食が細くてね ・・・

 この森で暮らしていたころ、あの子の母親も苦労してました

 その上 ・・・ 頑固でしょ ・・・ 何があっても投げ出さない ・・・

 この自然の中で過ごした時間が私の宝物なんです

 サトシはいつも笑っていた、精霊や妖精と話して ・・・

 あの子の笑顔が、私たちの幸せ ・・・」


そう言って、昔を思い出しているようだった



「サトシに出会えたことに感謝してます ・・・ 

 だからこそ幸せになって欲しい、あの笑顔が大好きなんです」



「君たち二人には感謝しています

 サトシは幸せに暮らしていたんですね ・・・ あの子を愛してくれて 

 本当にありがとう」



サトシ ・・・ 素敵なお父さんだね ・・・

 


「そろそろ行ってみましょうか?」

そう言って櫻井さんが入って行った場所に近づく



陽だまりのように暖かい空間

倒木のベンチがあって ・・・ 木漏れ日が射し込んで ・・・



「櫻井さんが居ない」

辺りを見回しながら呟くと



「やっぱり ・・・ 私たちが来ていることを知って 

 この森の精霊が彼をここまで連れて来て、麓まで帰したんでしょう

 

 彼に思い出してもらいたいから ・・・」



「彼が思い出すって事ですか?」



「サトシの事を思い出すことはありません、あの子が記憶を消した以上

 ただ、捜し続けるでしょう愛する人を ・・・ それが誰なのか彼は分からない

 サトシを捜し出せず、違う恋が始まれば ・・・ 二人は二度と出会えない」



「でも、彼は ・・・ 捜し出します ・・・ きっと ・・・

 例え ・・・・・・・・」




櫻井さんは、何かを感じてこの場所に来た

魂が呼び合うから




二人の絆を見てきたから ・・・




サトシ、迷わないで ・・・




櫻井さんは待ってる




どうか、サトシが笑顔で暮らせるように ・・・ 




俺は ・・・ 俺達は ・・・ サトシを支えるよ






<続きます>