連日、能登半島地震関連のニュースが途切れない。
被災地では、寒さに加え雨や雪、物資不足、あらゆる復旧困難などで、筆舌に尽くしがたい苦労をしている人々が大勢いる。
何が大変かとわざわざ聞かなくても、地震列島日本、災害大国日本なら、被害とは、被災とはどんなものか、体験し、見尽くし、考え尽くしているように思われるのだが。
テレビ画面では。
石川県知事が、とある避難所を訪れて、30代くらいの女性に尋ねていた。
「何か、困っていることはありますか。」
問われた女性は、一瞬絶句したように見えた。
しかし次の瞬間、はっきりと答えた。
「困っていることだらけです。」
女性は、水などの問題を少し伝えたあと、自身の優先順位に従ったのだろう、保育所のことを訴えていた。
飼い主も、絶句していた。
だから、知事がどう答えたかは聞いていなかった。
「他に、聞きようがあっただろうに。
もっと具体的に。
あの女性は、がっかりしただろうな。」
飼い主は、なんだか悲しかった。
知事も、突然積まれた問題の山の巨大さに、感覚が麻痺していたのかもしれない。
しかし、避難所イコール困っている人々、と言っても過言ではない。
困っていなければ、避難所などいらないのだ。
「3週間経っても、同じ質問しかされない。
被災した人々の気持ちが軽くなることが、ますます遠退くような気がする。
何を、どうして欲しいか。
お困りごとは?なんて、アバウトに聞かれるより、何を、どうして欲しいかだよね。
極限状態で耐えて頑張る人々の要望希望が、一つでも実現叶うといいなあ。」
飼い主は、先日のことを振り返る。
「夫が、施設にいる婆様に面会に行った。
私は、夫に伝えた。
日用品で、補充するものはあるか聞いてきてと。
夫は、帰ってから私に言った。
『何か足りないものはないか聞いたけど、ないようだった。』
私は言った。
具体的に、一品一品聞いてきて、と言わなかった私が悪いかもしれない。
お年寄りは、いきなり何かないか聞いても、まず答えられないよ。
もし、減ってないる消耗品があっても、瞬時に思い出すのは稀だ。
だから、ティッシュは、まだある?
歯みがき粉は、減ってない?
洗剤は、この間足したよね。
とか、面倒でも日用品一つ一つについて聞いた方が確実に思い出してくれるよ。
そんなに項目ないんだし、お婆さんは、頭がしっかりしてる方だし。
何かない?みたいなアバウトな質問だと、無駄足になることが多いよ。
まあ、普通お年寄りはね。
私は、父の買い物に行くとき、いちいち確認してた。
定番の品々は、きちんと把握して、言われなくても買ってきて補充してたけど、それ以外のものは。
具体的に品物の名前を出して。
入浴剤は?ポリデントは?
そして、父が言ってもたぶん在庫があるはずという物は、探してみてあることを見せたり。
お年寄りは、記憶も曖昧だったり確認しても覚えていないこともあるから、私たちの見通しとは違う。
買い物の結果がパーフェクトにならないこともある。
まあ、仕方ない。
さんざん見てきたから、そう思う。
そういう場面のお年寄りは、ちぐはぐでも仕方ない。
でも、被災した人々は、無いもの足りないものして欲しいことを忘れたりしないよ。
今、この場で、切実だから。
ストレートに出てくる。
間違いなく。
それをいかに吸い上げるか、だろうね。」
テレビの、ほんの一場面に引っ掛かっていた飼い主が、車を出してきた。
お!
やったあ❕
お出かけだ-❕
飼い主が、助手席のドアを開き。
いつもなら、ボクを抱っこして、椅子の座面に座らせるのに。
今日から、助手席の足元の空間に、直にクッションが置かれていた。
ボクは、自分でとび乗ることができた。
飼い主が言った。
「これなら、私も伊太郎を持ち上げて腰を痛めないし、伊太郎が自分で乗り降りすれば楽だ。
今ごろ考えてついてさ、我ながら情けない。
なぜ、もっと早く気がついて、こういうふうにしなかったんだろうな。」
なぜって?
飼い主が、【何が、どう困っているか。具体的に、どうすれば悩みが改善されるか】考えなかったからでしょう。