二回1死走者なしから四球で出塁したイチローが、相手先発右腕グレイの大きな投球動作をついて、1ボールからの2球目にスタートを切った。相手捕手の二塁送球もワンバウンドとなり、悠々とセーフ。514日ぶりに盗塁を成功させた。
「いや、(足の調整は)全然進んでいないです。いつも通り。この時期は進まないですよ」と淡々と話したが、一塁側のロッキーズベンチは大騒ぎとなった。
「『あれが本当に45歳か?』って、みんなが驚いていたよ」
2014年までマリナーズに在籍し、現在はロ軍でメジャー復帰を目指すマイケル・ソーンダース外野手(32)が明かした。試合前にイチローと長く話し込んでいたが、「やっぱりすごいな。俺も見習わないと」と刺激を受けていた。
スコット・サービス監督(51)も試合後、「きょうはイチローの質問はいいのか?」と催促するほどだったが、この盗塁は、選手復帰を果たしたイチローの今の状況を如実に示している。
東京ドームでの開幕カード(日本時間3月20、21日、対アスレチックス)は出場する可能性が高いが、米国に戻ってからの起用は不透明。米メディアも懐疑的な見方をしている。キャンプインの日に「期待を裏切りたい。安易な責任のない意見かな、そういうものを裏切りたい」とイチローは語ったが、そのためにはオープン戦での活躍が必須条件。アピールできなければ、簡単に『衰えた』というレッテルを貼られる。
イチローとしては結果を出し続けるしかない。だから盗塁も狙っていた。
「(仕掛けようという気持ちが)なかったら走らないでしょう。なくて走ることはない」と話し、意識して自分からアクションを起こそうとしているのかとの問いにも「そりゃ、そうでしょう」ときっぱり答えた。
45歳のベテランはなりふり構わず、がむしゃらにポジションを奪いにいく。“期待”を裏切るために。
データBOX
メジャーで45歳シーズン以降に盗塁を決めたのは、1909年のアーリー・ラッサム(ジャイアンツ、49歳=1)、26年のジミー・オースティン(ブラウンズ、47歳=1)、86年のピート・ローズ(レッズ、45歳=3)、2004-07年のフリオ・フランコ(ブレーブス、メッツ、46歳=4、47歳=4、48歳=6、49歳=2)、12年のオマー・ビスケル(ブルージェイズ、45歳=3)がいる。プロ野球で45歳シーズン以降に盗塁したのは、47年の阪急・浜崎真二(46歳=1)しかいない。