確実に聴力は衰えて

あたしの耳はベースの音を見付けられなくなってきている。



記憶を思い出を名前を今までをこれからを失って生きているお姉ちゃんの姿を見るのが怖い。

だけど、

もう長くないと知っていて会いに行かないのは薄情かな。

これは残されたあたしの感覚。

なくなってしまえば

そんなことさえ思わない。

足しては引いてゼロになる。

さよならは早いと知りながら、

さよならを言わないことを

了とできないのは生きているもののエゴで。



あの日あの人が言っていた言葉が今となっては空虚でも

咎められない。

人間は変わるものだから。



忘れるなこれが・・・



あの日

泣いたことさえ空虚に思えるくらい

冷めてしまえば

温度はマイナスに近く。

愛が冷めないように

火をくべる力さえもうない。



小さなあたしに戻ってしまえば全てはラクで。

なんの努力も悩みもいらない、そのままのあたしでいるなら、何も苦しくはない。

口と耳を閉ざしたあたし。

一番ラクなあたし。

苦しくない。

傷付かない。

動じない。

何も恐れない。

無感動のあたしに返るなら。

音楽に出会う前の

自己完結のあたしに戻れるなら。

今悩んでいることさえ、小さな痛みと忘れられる。

ここで、逆接できない今のあたし。

答えはもう出ているだろうか。



もう涙もでない

無表情で。

何かを顔に表すのさえ億劫。

希望がない代わりに絶望もない。

波のない湖みたい。



あたしはあの人に答えを委ねようとしている。

自分で考えることさえもうきつい。

彼があたしに呈示する答えは、あたしの行動で変わるとわかるけれど。

何かをする気になんてならない。

眠るのも生きるのも水を飲むのも面倒だ。

光を失った世界には陰さえない。

何もない無で

それは案外きれいで。

誰かが作った世界を生きるのも

悪くないと思う。