ページをめくるたび
過去と今とが交錯する。
娘である私。
母である私。
ささやかな日常を切り抜いた
母娘の微笑ましいやりとりに、
顔がほころび
同時に
目頭が熱くなる。
温かさと淋しさとが
ない交ぜになる。
子供だった過去の私と
母親である今の私と。
本の中の
『あたし』と『おかあさん』に
自分を投影して。
写真には収められない
日常のひとコマ。
私のまぶたの裏にだけ焼き付いた
誰にも見せることのできない
大事な、ひとコマ。
一瞬一瞬の
なんてことない、
だけど、
かけがえのない
キラキラとした思い出。
その一つ一つがいとおしく
その全てを忘れたくないのに
少しずつ記憶の彼方に
追いやられてしまっていた思い出たち。
今のこの瞬間も
次の瞬間には過去のものとなり、
つい最近のことのように
思えたやりとりは
既に記憶の中にしか
なくなっていることに気づかされる。
いつもそこにいる
小さなひとは
もう、
自分が思っているほど
小さくはなくて
もう、
あの日々は
二度と戻ってくることはない
ということを思い知る。
どれだけ覚えていられるんだろう。
どれだけ覚えていてくれるんだろう。
私と母の
私と娘の
大切な日々を。
いつまで抱っこできるかな。
いつまで隣で眠れるかな。
いつまで手を繋いでくれるかな。
いつまで頭をなでられるかな。
いつまで『だいすき』と言ってくれるかな。
今しかできないことがあること。
今しか見られない光景があること。
忘れないように。