生命保険協会発行、「裁定概要集」令和5年度第1四半期です。

 

 

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[事案2022-110]新契約無効請求 ・令和5年5月23日 和解成立

 <事案の概要> 募集人の説明不足を理由に、契約の無効を求めて申立てのあったもの。 

<申立人の主張> 平成29年1月に契約した終身保険について、以下等の理由により、契約を無効として既払 込保険料を返還してほしい。 

(1)身内の不幸により心身が衰弱している中、長時間自宅に滞在されて勧誘を受けたため、自 分に合っている良い保険なのだろうと信じて必要のない契約をしてしまった。

(2)収入がなく独身で子供もいない自分に見合った保険ではなく、適合性の原則に反している。

 (3)契約の際、募集人から、設計書により説明を受けたが、「解約返戻金の額は、ほとんどの場 合、既払込保険料の合計額より少なくなります」と書かれた箇所は詳しく説明されていな い。

 <保険会社の主張> 以下等の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

 (1)本契約は特定保険契約ではないため、金融商品取引法の適合性原則は適用されない。

 (2)申立人は、設計書による説明を受けており、かつ契約内容は複雑なものではなく容易に理 解可能なものであり、本契約が意向に沿うものであることを意向確認書で確認している。 

(3)募集人は、契約締結の際、設計書を1頁ずつ順番に説明しており、設計書の「死亡保険金・ 解約返戻金などの推移」の表中にマーカーが引かれていることからすれば、申立人は、解 約返戻金が既払込保険料総額を下回ることについて理解していた。

 <裁定の概要>

 1.裁定手続 裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、契約時の状況と和解を相当 とする事情の有無を確認するため、申立人および募集人に対して事情聴取を行った。

 2.裁定結果 上記手続の結果、募集人の説明不足は認められないものの、以下の理由により、本件は和解 により解決を図るのが相当であると判断し、和解案を当事者双方に提示し、その受諾を勧告し たところ、同意が得られたので、手続を終了した。

 (1)本契約は、申立外契約の死亡保険金請求手続の際に申し込まれており、かつその死亡保険 金を前納保険料として本契約に充当しているが、安易に死亡保険金を別の保険契約の保険 料に充当するという提案をすることは望ましくない。

 (2)募集人の事情聴取の結果によっても、申立人が、死亡保険金のほとんどを本契約の保険料 に充当することを積極的に希望していたとうかがうことはできなかった。

 (3)申立人の親族の死後3週間程度しか経過しておらず、今後の家計の収支も定かではない状 態で即日契約手続を行うことは望ましいこととは言えず、手続を後日にするなど、十分に 検討する期間を設ける配慮が必要であった。