2成年後見制度とその限界

質問 認知症などによって意思判断能力が失われた場合には成年後見制度を活用することで資産・事業承継対策は万全に行われると考えて良いでしょうか。

回答 成年後見制度とは、認知症や病気、あるいは知的障害、精神障害等の事情により、意思判断能力が万全ではない人の法律行為や財産の管理を本人に代わって行う制度です。

後見人は本人のために財産をしっかり守るという職務を負うことから、家庭裁判所もしくは後見監督人の指導監督下に置かれます。

したがって、本人にとって本当に意味のある、合理的な理由のある支出しか認められず、推定相続人や、家族にメリットのあるような行為、例えば将来の相続を見越して生前贈与や財産を整理・処分することは基本的には認められません。

つまり成年後見人を利用している限りにおいては、柔軟な財産の管理は難しく、家族のための支出や、将来の相続対策を考えたくてもほぼ何もできません。また、例え本人のためであったとしても、積極的な投資や運用なども実行できません。

成年後見人の目的は、意思判断能力を失った被後見人の代わりに、後見人が、被相続人の財産を守るよう、強い権限で管理することです。したがって、本人や周囲の希望とは関係なくよって最低限必要な支出しか認められなくなります。一方で被保険者の身上監護については成年後見制度を利用するしか方法はありません。

以上のことから、家族信託と成年後見制度とをうまく組み合わせて双方の利点を活かす設計が必要となります。