30歳の若さで夭折し、死後に日本

の近代詩史にその名を刻む高評価を

得た天才詩人・中原中也の詩集「山

羊の歌」に収録された彼の代表作で

もある詩。1934年刊行。


詩の構成は、「汚れつちまつた悲し

みに(は)」をリフレインにしてそれ

に続く文が8回繰り返される内容。


汚れつちまつた悲しみに

今日も小雪の降りかかる

汚れつちまつた悲しみに

今日も風さへ吹きすぎる

汚れつちまつた悲しみは

たとへば狐の皮袋

汚れつちまつた悲しみは

小雪のかつてちぢこまる

汚れつちまつた悲しみは

なにのぞむなくねがふなく

汚れつちまつた悲しみは

懈怠のうちに死を夢む

汚れつちまつた悲しみに

いたいたしくも怖気づき

汚れつちまつた悲しみに

なすところもなく日は暮れる…


詩は七五調になっていてリズミカル

に読めるが、内容は彼独特の世界観

に覆われつつ、深い悲しみや孤独感

あるいは絶望に近い想いも読み取れ

る。日本では悲しみは美化される傾

向にあるが、それに汚れちまったと

付けることで苦しさを強調している

のかもしれない。ただ傷ついた中で

も、ここから下はもう無く上を向こ

うとしている面を感じ取れる気もす

る。


中学か高校の教科書でやはり中也の

代表作である「サーカス」を学んだ

記憶がある。真島昌利などミュージ

シャンにも大きな影響を与えた偉大

な詩人の名が褪せることは無いだろ

う。