行き場のない怒りを抱える悩める若

者たちが取り返しのつかない事件を

引き起こしていく模様を描いた戦後

アメリカ青春映画の不朽の名作。

主演:ジェームズ・ディーンとナタ

リー・ウッド。監督はニコラス・レ

イ。1955年公開。

 

17歳の少年ジムは、この街に引っ

越してきたばかり。なのに酔って、

その日の集団暴行事件の容疑者とし

て署に連行される始末。翌日新しい

ハイスクールに登校したジムは、昨

夜警察署で出会ったジュディと再会

する。彼女はバズ率いる不良グルー

プと一緒だった。さっそく彼等に目

を付けられたジムは、策略にはまっ

てチキンレース対決をすることにな

るのだが…。

 

イースターの夜、それぞれ別々に警

察署に連行された3人の若者が署内

で交錯する場面で映画は幕を開ける。

ジムは深酔いして路上に寝込み、ジ

ュディは家を飛び出して深夜まで外

出、プラトーは仔犬を撃ったことで

保護されていた。ジムは少年課のレ

イ刑事の聞き取りにもすねて逆らう。

レイに少年院行きになるぞと諭され

ても「誰かを殴りそうだ。ぶち込ん

でよ」と自棄気味のジムは、それな

ら机を殴れと言われて本当に何度も

机を蹴りパンチを浴びせ、手にダメ

ージを受けて顔をしかめる。それで

吹っ切れたのか、家族について「あ

んな家では暮らせないよ。母に責め

られ父は耐えてる。動物園さ。父が

勇気を見せて母をやり込めれば…。

僕は父みたいになるのはごめんだ」

と気持ちをレイに吐露。そして「親

は引っ越せば友達ができると思って

る」と。ジムは、我慢できなくなっ

たら俺のところに来て話せ、親より

気楽だろと親身に言ってくれるレイ

に信頼を寄せ、迎えに来た両親らと

ともに家に戻る。ジュディも同じよ

うに両親に反発して家に居場所が見

つけられない。そして父親からの愛

情に飢えていた。

 

翌朝、新しい高校に初登校したジム

はジュディやプラトーに再会するが、

ジュディは不良グループと行動を共

にしていた。校外学習のプラネタリ

ウムの終了後、グループのボスのバ

ズに愛車のタイヤに故意にナイフを

刺されてパンクさせられたジムは、

成り行き上、ジムとナイフを手にケ

ンカする羽目に陥る。その最中に職

員に見つかり制止されたため、決着

はその夜のチキン・レースでつける

こととなる。海に面した崖に向かっ

て猛スピードで車を走らせ、先にド

アを開けて脱出した方が負けという

危険極まりない度胸比べだ。不良仲

間やジュディ、プラトーらが見守る

中、レースは始まる。ジムは崖の手

前で上手く脱出したが、バズは袖が

ドアハンドルに引っ掛かって脱出に

失敗し海に車ごと転落して事故死し

てしまう。怖くなった不良仲間たち

は一目散に逃げ、ジムとジュディと

プラトーの3人だけは呆然として崖

の上に佇むが、何もすることは出来

ず、止む無く街に帰る。

ジムは帰宅して両親に「一人の少年

が死んだんだ。なかったフリなんて

できない。正しいことをしたい」と

告げて警察に行こうとするが、両親

は「誰かに見られたのか。どうして

お前だけが行くの」と反対され、家

を飛び出す。ジムは警察署を訪れて

レイを呼ぶが不在と知り、ジュディ

と共に、プラトーに教えてもらった

プラネタリウム近くの空き家に向か

う。一方、ジムが警察に届けるのを

恐れたバズの不良仲間たちにジムの

住所が記されたアドレス帳を強奪さ

れたプラトーも、ジムとジュディに

合流する。3人は身の上話や空き家

の探索などをするうちに親交を深め、

しばし時を忘れる。プラトーが眠っ

てしまったためにジムとジュディは

2人で探索を続けるうちに互いに愛

する気持ちを確認し、抱擁し合う。

ジュディの「ずっと愛されることを

求めていた私が人を愛してる。簡単

なのね」という言葉が心に残る。

 

しかし物語は悲しい方向に展開して

いく。不良仲間たちが空き家を見つ

けて一人休んでいたプラトーを追い

回し、プラトーは応戦して相手に銃

を放ってしまう。そこに巡回中の警

官らも到着し、ジムとジュディに一

人で置いておかれ見放されたと勘違

いしたプラトーはパニックになり、

空き家から逃亡して発砲も躊躇わず

近隣のプラネタリウムに駆け込む。

プラトーを制止して救おうと、ジム

とジュディもプラネタリウム内に進

入し、プラトーを説得する。説得に

応じて外に出てきたプラトーであっ

たが、現場は警察やジムの両親・プ

ラトー家のメイドらも駆けつけて騒

然としており、銃を手にしていたプ

ラトーが動揺して逃げようとしたこ

とで警官に射殺されてしまう。プラ

トーの身体に寄りすがって泣き叫ぶ

ジムを父親が慰め、自分も強くなる

から一緒にやっていこうと漸く親子

の気持ちが通じ合う兆しが浮かぶ。

ジムはジェシーを友達と言って両親

紹介し、寒がりだったプラトーの動

かない身体に自分のジャンパーを着

せて送り出したところで映画は幕を

閉じる。

 

伝説の俳優であるジェームズ・ディ

ーンは第1作の「エデンの東」に続

いての主演となったが、公開前の事

故死により本作が遺作となってしま

った。「エデンの東」はもっと宗教

的で人間の本質を描き出そうとして

いたので、こちらの方がストーリー

も分かりやすい気がするが、何れも

愛に飢えた悩める若者を演じる彼の

輝きは比類なきレベルと言える。不

良っぽくて憂いのある、すねた表情

は天性のものだが、24歳にして生

涯を閉じた悲劇のヒーローであるこ

とが彼の存在を神格化している面も

ある。後半の赤いジャンパーと白い

Tシャツにジーンズというファッシ

ョンスタイル、そして咥えタバコ姿

から匂い立つカッコ良さは永遠に語

り継がれるだろう。子供と大人の間

にティーンエイジという揺れ動く多

感な時期があることを体現する俳優

として右に出る人はいない。

 

相手役のジュディを演じるナタリー

・ウッドの美貌も特筆レベル。最初

に登場する時の真っ赤な口紅がどぎ

つい “あばずれ”風よりも、普通のメ

イクの方が魅力がある。ハンサムな

ジミーとの美男美女のカップルの絵

姿は鮮烈だ。

 

アメリカの高校の自由な気風や、当

時のクラシカルなクルマ、チキンレ

ースやナイフを手にしたケンカなど

ヤンチャというかギャング的な強さ

に憧れた一昔前のアメリカの雰囲気

がよく現れている。