マーベル・コミックに登場するアメ

リカのスーパーヒーローで、怒りを

感じると緑色の肌の巨人 “ハルク”

に変身してしまう青年の苦悩と活躍

を描くマーベル・コミック実写化の

アクション映画。ハルクは後にスー

パーヒーロー・チーム「アベンジャ

ーズ」の一員に加わる。

2008年公開。主演はエドワード・

ノートン。

 

科学者のブルース・バナーは、恋人

ベティの父、ロス将軍の命令を受け

て人体への放射線抵抗を研究してい

た。ところがその研究実験中に事故

が発生、多量のガンマ線を浴びたブ

ルースは怒りを感じて心拍数が200

を超えると約2.7mもの巨大な緑色

のモンスター=ハルクに変身する特

殊体質となってしまう。それ以来、

彼を利用しようとする軍の追跡を逃

れ、ブラジルに身を隠して治療薬開

発と細胞の解明に専念するブルース。

しかし、ふとした出来事からブルー

スの居場所が割れてしまい、ロス将

軍によって送り込まれた特殊部隊員

ブロンスキーらに包囲されてしまう。

だがその時ブルースはハルクへと変

身、部隊を一蹴し、間一髪のとこで

逃亡に成功するのだったが…。

 

オープニングはブルースの潜伏先の

ブラジル・ホッシーニャで始まる。

街は急傾斜の丘陵地に古びた住居や

建物がひしめき合うように密集して

乱雑に並ぶ。ブルースは武道家に師

事し、感情を抑えて肉体をコントロ

ールし心拍数を制御する修行を行い

つつ、ブルーという名の研究者とメ

ール交換で協力を得、治療薬開発に

注力しているが難航している。ある

日、勤務している飲料瓶詰工場で不

意に手を切ってしまったことで彼の

血液が混入したソーダがアメリカに

出荷されてしまう。それを飲んだ男

性にガンマ線汚染の可能性が発見さ

れ、実験の責任者だった軍のロス将

軍は工場を割り出し、ブロンスキー

を含む精鋭部隊を現地に派遣。間一

髪で逃亡したブルースは執拗に追う

部隊から走って逃げ回っているうち

に心拍数が200を超え、ハルクに変

身してしまう。マシンガンの銃弾も

手榴弾も効かず、フォークリフトを

ソフトボールのように放り投げる想

像を絶する怪力を発揮したハルクは

部隊を壊滅。この序盤のハルク登場

シーンは戦慄的だ。

 

ただ一人生き延びたブロンスキーは

怪力に魅せられ、自分もその力を得

ようと軍が極秘に進めていたスーパ

ーソルジャー計画の実験に志願する。

一方、ブルースはアメリカに戻り実

験の参画者の1人だった細胞学者で

恋人のベティに再会。ベティはロス

将軍の娘でもあった。そんな二人に

軍の追跡の手が伸びる。大学構内で

襲撃され再びハルクに変身したブル

ースは軍用車両の攻撃を撃破し、ブ

ロンスキーは瀕死の重傷を負う。だ

がハルクは抗戦中にベティを認識し

て救出。二人は逃亡を続けるが、そ

の途中でベティはブルースの苦悩を

理解する。二人は治療の鍵を握るブ

ルーが大学教授であることを突き止

めてその元を訪ねる。解毒薬を血液

に注入しブルースの肉体は元に戻っ

たように見えた。そこに再び軍の部

隊が乗り込み、ブルースは身柄を拘

束される。

しかし事態は思わぬ展開に。ブロン

スキーがブルーを脅し、研究用に培

養していたブルースの血液を体内に

注入させると、ブロンスキーの身体

はハルクのような超怪力の巨体に変

異。ニューヨークの街中で暴れ始め、

街はパニックに陥る。軍用ヘリで移

送される途中だったブルースは、事

態を収めるには自分がハルクに変身

して倒すしかないと決意。自らの意

思で3度目の変身を遂げたハルクは

変異したブロンスキーとの死闘の末、

勝利する。

 

事態が収まった翌朝、ブルースが去

ったニューヨークの港でベティは一

人たたずむ。一方、ブルースも一人、

カナダの山奥で再び感情を制御する

訓練を始めていた。そしてSHIELD

を訪れたトニー・スタークがスーパ

ーヒーローを集めチームを編成する

計画を持ちかけて映画は終わる。

 

映画の最大の見所はもちろん3度登

場するハルクの戦闘場面。圧倒的な

パワーは大迫力で戦慄を覚えるが、

悪事を働く目的とは無縁なので爽快

だし、逆に軍事実験の犠牲者であっ

て、それを軍事利用しようとするロ

ス将軍とブロンスキーら悪役に反攻

するブルースとハルクに感情移入す

ることになる。むしろ実験の失敗に

よりベティと別離することになった

ブルースの理不尽で不幸な境遇を思

うとホントに痛ましい。

ブルースやハルクを懸命に救おうと

するベティの献身と愛情も、最後に

再び離れることになってしまった二

人の結末は残酷で哀切だ。単なる勧

善懲悪のアクション映画に留まらず、

ヒューマンドラマ的要素も強いのが

映画を味わい深くしていると言える。

 

ブルース役のエドワード・ノートン

は、この後に続くアベンジャーズ・

シリーズでブルース役を務めるマー

ク・ラファロと異なるので最初は違

和感もあったが、知的な面や人間と

しての苦悩を表現するには彼の方が

合っているような気もする。

ベティ役のリヴ・タイラーは登場は

中盤からだが素晴らしい存在感を発

揮している。父親譲りの少し個性的

な顔立ちの美貌は情熱的でセクシー

な魅力がある。

 

中学生の頃に時々見ていたTVドラ

マ版の「超人ハルク」も面白かった

のでキャラクター的にハルクは好き

だ。アベンジャーズ・シリーズでも

活躍を応援しながら観ていた。