世界経済の中心であるニューヨーク

のウォール街における企業買収や株

操作などマネー戦争の非情な実態と

渦巻く野望や欲望を赤裸々に描いた

社会派の金融サスペンス映画。

監督はオリヴァー・ストーン、主演

はマイケル・ダグラスとチャーリー

・シーン。1987年公開。

 

野心に燃える若き証券マンのバドは

自分の持てる頭脳と行動力の全てを

注ぎ、一獲千金を狙っていた。億万

長者ゲッコーに取り入るために、父

の勤める航空会社の情報を渡し、イ

ンサイダー取引した事で夢が叶えら

れ、大金を手にするが…。

 

バドは電話営業を粘り強く重ねたこ

とで大富豪の大物投資家ゲッコーと

の面会を叶え、父が勤めるブルース

ター航空の内情を知らせることで関

心を示したゲッコーから大口の注文

を取ることに成功する。

“情報”を取ってこいと命じるゲッコ

ーに応える形で、バドは友人の弁護

士法人のオフィス清掃員監督をして

不正に企業秘密を手に入れたり、ゲ

ッコーのライバル投資家ワイルドマ

ンが誰に会ったか行動を監視して動

きを推測するなど有用な情報をゲッ

コーに提供することで株式売買で儲

けたゲッコーから巨額の見返り報酬

を得る。更にゲッコーから紹介され

たブロンド美女ダリアンと恋に落ち、

豪華な高層マンションで同棲を始め

る。

しかし自分がゲッコーに勧めた再建

を前提としたブルースター航空の買

収案件で、ゲッコーは再建する気は

毛頭なく売却・解体を目論んでいた

ことを知り、憤慨したバドは、ワイ

ルドマンと手を組んでゲッコーに仕

手戦を仕掛ける。思惑通り報復に成

功したバドだったが、証券会社に戻

るとインサイダー取引の容疑で逮捕

され、ダリアンに家を出ていかれる。

最後、広い公園でゲッコーと再対面

したバドは大損したゲッコーから罵

倒・殴打されるが、彼との会話を録

音したテープを証券取引委員会に提

出し、司法の手がゲッコーにも伸び

ることを示唆して物語は終わる。

 

ストーリーもリアルに出来ていて面

白いが、80年代半ばの米国の証券

業界の熾烈さや活況、成功した投資

家の栄華が描かれていてなかなか強

烈だ。バドが勤める証券会社では市

場が開いた途端、凄まじいほどの証

券売買の電話注文が飛び交い、営業

員はノルマが達成できないとクビ、

損失を被った大口投資家が支払いを

拒否すると自腹で補填するなどコン

プライアンス欠如の様相も出てくる。

バドがゲッコーとの面会が叶ったの

は59日連続で電話を掛けたとか、

誕生日に手に入り難い好物の葉巻を

持参するなど涙ぐましい忍耐と努力

であることも。

そしてまたゲッコーの非情で金儲け

一点主義、というか倫理観ゼロで決

してブレない姿勢もスゴイとしか言

いようがない。その発言では「セー

ルストークはいらない。儲けさせれ

ば見返りをタンマリやろう」「大衆

の投資はダーツ。私はダーツではな

く、確実なものにかける。だから情

報を取ってこい」「内部情報なしに

大金は儲けられない。億の金を稼が

せてやる」「欲は善だ」「儲ける者

がいれば損する者がいる。それを奪

い合うだけだ」…など。

バドも最初のうちは「それは違法で

す」と抵抗を示したこともあったが、

豪華なリムジン、邸宅、オフィス、

プライベートジェットと贅沢な暮ら

しを見せられ、すぐに感覚が麻痺し

てしまう。

 

ただ製作者側もそれを是とした訳で

はなく、ゲッコーはしっぺ返しに合

うし、2人とも最後は後ろに手が回

ることになる。バドの父が最後にバ

ドに投げ掛ける言葉「あぶく銭を求

めず、物を作れ」「売り買いでなく

創造するんだ」が胸に刺さる。細か

い点ではあるが、バドとダリアンが

暮らす部屋の内装はインテリアコー

ディネーターのダリアンの意匠のよ

うだがセンスが???だったり、寿司

握り器が出てきて面白い。またダリ

アンより前にゲッコーがバドに派遣

する美女も驚き。

 

出演者ではゲッコー役のマイケル・

ダグラスの堂々たる存在感に圧倒さ

れる。大株主になっている企業の株

主総会で経営陣を批判するスピーチ

の場面などは名演だ。女優陣ではダ

リアン役のダリル・ハンナの妖艶な

美貌が印象に残る。