《指令No. 28 R&B》
009ノ1は、うなされていた。
実はそれが聴かされている音楽のせいだった。
目を覚ますと36(サム)という男が、待ち構えていた。
二重スパイと思われる男。
いつものように女であることを利用して、近づけたかに思われた。
男は、黒人であり、R&Bという音楽を愛する人物だった。
その音楽に暗号化した言葉を入れて、仲間たちと連絡しあっているのだった。
有名なミュージシャンもその一人だという。
そして今、また音楽を利用し、彼女を爆弾で始末しようとしていた。
あるフレーズが来ると爆弾が作動する仕組みになっている。
だが、彼は自分自身に爆弾をセットし、命を落とす。
スパイは、ミスが許されない過酷な世界である。
…R&B(リズムアンドブルース)、この音楽は独特のリズムである。
黒人たちが編み出した彼らの宝物である。
この中に何かが潜んでいると言われても、我々はうのみにするしかない。
「この音楽には、かなわない!」
そんな石ノ森章太郎先生の声が、聞こえてきそうである。
双葉社「週刊漫画アクション」1969年9月25日号・初出。
(講談社「石ノ森章太郎デジタル大全」より「009ノ1(4)」から)