《指令No.22 トレヴィに三度くる》
観光地にいても、仕事が絡んでいると楽しめないものだ。
トレヴィの泉は、後ろ向きでコインを投げて、また来れますようにと祈る事で有名だ。
009ノ1がマークした男は、トレヴィの泉で何かしら仲間と接触してると思われていた。
だが、何度もやってくるが誰とも接触しない。
写真をやたら撮りまくる観光客にしか見えない。
カメラ本体を落とす人もいるようだ。
だが、高価なものだから慌てて、壊れていたとしても引き揚げていく。
009ノ1は、やがて気がついた。
落としたカメラにコインがくっついている事を。
009ノ1は、そのカメラを取り上げコインを解体する。
コインは偽物で中にマイクロフィルムが隠れていたのだ。
カメラもトレヴィの泉に入れると、コインを回収する仕組みになっている。
これで、誰とも会わず怪しまれることなく、マイクロフィルムの受け渡しが行われるようになっていたのだ。
トレヴィの泉に結局五回も出掛けた男を怪しむ009ノ1の気持ちも分かる。
双葉社「週刊漫画アクション」1969年5月10日号・初出。
(講談社「石ノ森章太郎デジタル大全」より「009ノ1(3)」から)