ある日、知らない女が絵のモデル志望だと言ってやって来た。
「私を描いたら、きっとあなたも売れると思うわ」
売れない絵描きは、その女をじっと見つめた。
奇抜な髪の色に、奇抜な衣装。
その女は、どこか人間離れをしているように思った。
(どこか挑戦したくなる姿ではある。)
絵描きは、納得して彼女を描くことにした。
「これであなたと私、両方に得があるわよね」
二人の関係は、そのまま発展することはなかったという。
抽象画を専門とする絵描きに、絵を頼んだモデルが悪かったのだ。
ところが、それが未来の疫病封じに発展するとはまさか、二人とも思わなかっただろう。(終わり)