それでも持ち主は、お気に入りの時計を手放す事はしませんでした。
部品を交換しつつ、元とは違う物も利用しながら、なんとか時計は、動くようになって戻ってきていました。
そのたびに、持ち主は大喜びでそれを迎え、大事に使っていました。
ある時、ついに時計は修理のプロもなおせないと、返されてきました。
プロも限界があるのです。
わかっていても、持ち主にはなおす力がなかったのです。
すぐには捨てることはできないでしょう。
持ち主は、動かなくなった時計を、なめ回すように見つめました。
様々な思い出が浮かび、涙があふれるばかりでした。
他人にとっては、ただの時計にしか見えないでしょう。
持ち主にとっては、人生のパートナーだったのです。(終わり)