「どこって、前のやつに聞いてみなよ」
「話しかけるな、見失うじゃないか!」
先頭のものは、違っていた。
「後ろから、誰かに追いかけられている」
「だんだん、足音が大きくなって、怖くなったんだ」
「とにかく、後ろの物音が聞こえなくなるまで走ろうと思ったんだ」
後ろを振り返る勇気はなかった。
走るのに精一杯だったのだ。
周りで見ていたものは、驚いただろう。
町中でシカがマラソン大会をしているのだ。
ゴールの先では、お忍びのサンタクロースがストップウォッチを片手に待っていたことを誰も知るまい。(終わり)