(創作)落とし物の真実 | ネムリ・モヤのブログ

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アートと旅と食を愛す孤高の仮面ライダー好き女

そんなもの、拾わなければよかった。
拾ったら、そこから何かが始まるではないか。
その人が落とした直後なら、渡すことができる。
しかし、彼女は、走り去ってしまった。
そんなに大事な物じゃなかったら?
だが、かなり高価そうだぞ。
僕は急いで追いかける。
しかし、彼女は乗り物を待たせていたらしく、外まで追いかけたが跡形もなく消えていた。
あの人にもう一度会いたい。
そんな女性だった。
手がかりは、その落とし物一つ。
それが彼女を捜す唯一の手がかり。
名前も住まいも知らないのだ。
僕は、仕事の合間にその落とし物を取り扱っているようなお店に入り、買った人をたずねた。
たいていは、首を振り、僕は無駄足を踏んでいた。
あきらめかけた時、ついにその落とし物を買って行った人物に行き当たった。
それは、老婆でまるで似ていない。
店員は、
「知り合いの女の子にプレゼントするとおっしゃっていましたから、お探しの女性かもしれませんよ」
となぐさめてくれた。
ようやく、老婆の住まいにたどり着いた。
そして、彼女の事も知ることとなる。
「これは、あなたのものではないですか」
彼女は、普段着らしく、出会った時とは違い地味である。
「…そうかもしれません」
手に取り、懐かしそうに見つめます。
「ただ、これ私サイズ合わなくって、交換しようかなと思ってたんです。車の運転のできる家族も今は留守なんです。よかったら、連れて行っていただけます?」
ええぃ、彼女のためだ。
僕はなんてお人好しなんだ。
そのまま、僕は靴屋に彼女を送ってあげた。
僕は、何をやっているんだぁ!(終わり)