とあるカラオケ屋にて。


「ねーねー、いいでしょー。行っても

ゼッテーなんもしねーからさあー」



(うるせーなあ さっきから)


「えー、絶対嘘だよぉー。するに決まってるじゃーん」


(女の子嫌がってるだろーが)


「いやマジで。オレの目、見てよ、ほら

 どうよ?嘘つく顔してる?」



(目、血走ってますけど)


「うーん・・・してる」


 「ゲッ!ひでーなあ。なんだよ、ったく。

 親を恨むね、俺は。こんな顔に産んで」



(おいおい、親が泣くぞ、ここでそんなこと言うか)




さっきからこの調子である。

合コンで盛り上がった学生の集団。

男子10人、女子10人で部屋は満室状態。


女子は一見すると大人しい、どちらかというと

「文化系」サークルの集まりか。


一方の男子は、いかにも「遊んでます」サークルの

チャラ男たち。


肉食動物が草食動物を前にして

もう食欲を抑えきれない

いてもたってもいられない

なんならこの場で・・・


そんなギトギトした空気が室内に充満している。




「あ、ハーイ!これ、あたしが入れた」


男子の攻撃を受けていた女子が

手を挙げる。

イントロが始まり、その場に立って

気持ちよさそうに歌い始める。


「あーあ、やっぱダメかー」

うなだれる男子。

横にいた友達だろう、ポンポンと肩を叩いている。



(そらみろ。な?だからダメだっーつの
 しつこいんだよ。

 しかし、この子上手いなー。なんていう曲だっけ?
 たしかCMで流れたなあ。ホレ、あの、んーー
 ここまで出てきてるんだけどなあ・・・)


隣にいるツレに向かって大声で聞いてみる。

歌声に消されてよく聞こえないらしい。

何度も「は?なんてーーー?」と返される。


女子の歌声に聞き惚れながらも

そのCMを思い出そうとする。


「いよーーーっ!!スゴーい!!

 めちゃくちゃ上手いじゃーん!!」



間奏になった途端、さっきの男子が

パチパチと拍手を送っている。


ちょっと後ろ向きになって見にくいが

チラッと見える女子の表情は

まんざらでもなさそうである。



(んー、なんだったかなあ?カード会社のCM
 だったかなあ?
 「プロミス」のは英語だったし違うし・・・)


まだ思い出せずに困っていると、女子の歌が

終わった。



「いよーっ!!いやー、すんゲェー上手かった!!」


男子が大げさなくらい褒めまくる。

女子の顔が見えた。


(ゲッ!笑ってるし。なんだ、やっぱ嬉しいんだヤレヤレ)


歌い慣れて、自分が上手いと分かっていても

やっぱり褒められると人間、気持ちがいいものだ。


(そっかそっか。でもあの子、マジで上手かったな)



次の曲が始まると、また会話が始まった。

ところがなんと、今度は女子の方から声をかけている。




つづく



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