ウォッチメンズ④
ヘンリー・グスタフソンは暇を持て余していた。
宇宙飛行士として地球を離れて194日と19時間19分。
いいかげんこの刺激のない毎日にうんざりしていた。
いや、本来であれば宇宙空間に身を置くことが退屈になどなるはずがない。
しかし彼はいま、ある特殊な状況に直面している。
そもそも有人実験のパイロットになど志願したのが間違いだったのだ。
当初は超難関の選抜を勝ち抜きエリート中のエリートと喝采を浴び自尊心をくすぐられもした。
しかしそんなことはここでは糞の役にも立たない。
もちろん、はじめのふた月ほどは使命に燃え、人類の進歩と発展は我が双肩にありとばかり、日夜実験に精をだしたものだ。
しかし、結果的にそれが良くなかった。
250日を想定して組まれた実験プログラムを僅か100日でクリアしてしまったのだ。
能力の高さからとは言え、後の祭りとは良く言ったもの。
それ以来やることがなくなってしまった上、行動範囲は操縦席とラボを兼ねた居住スペースのみ。
狭い空間でただ時間だけを浪費する日々。
日本のニート以下の生活が始まったのだ。宇宙船の中で。
当然、実験の終了報告と繰上げ帰還申請は数度に渡って行っている。
しかし本部から返ってくる応えは「担当者不在」の一点張り。
最先端の宇宙基地にもお役所仕事が蔓延していたのだ。
しかしそれを知ったっころでグチをこぼす相手すらいない。
できることといえば、小惑星に奇声を発するか、せいぜいコクピット越しに地球へ向けて放屁することぐらいである。
「シャナナナナナナナナナナナ!!」
ブゥーーーーーーッ!!
ガンッ!
痛っ!
今日は苛立ちからあまりに強くオナラを出しすぎてしまったようだ。
前方への推進力で彼は頭から船壁に突っ込んでしまった。
マイガーッ(涙)
全くやることなすこと裏目に出る。
彼は涙目でおでこをさすりながら、仕方なく超高倍率望遠鏡「ゼウス」のスイッチを入れた。
最近ハマっている暇つぶしのひとつで、ピントを地上に合わせて人々を観察するのだ。
ネーミングの勝利と言うべきか、さながら神にでもなった気分が味わえる、、、が、ただそれだけだ。
どうせ今日も大した事件は起こらないだろうな。。
半ば投げやりに地球にレンズを向けながら、彼はピントの調整ダイヤルを回しはじめた。
カチ、カチ、カチ...
お、こいつはニートの国じゃねえか。
いまの自分への皮肉にも似た偶然。
唇の片方だけ釣り上げて自嘲ぎみに笑うと、彼は観察をはじめた。
ふぅ、どれどれ、、
あ!
そこで彼は思いがけないものを目にした。
何気なく向けた望遠鏡の先でスチューデントガールが転んでいるではないか。
おぉ!!
しかもこの角度からだとパンツが、、
倍率をさらに上げて確かめる。
なんだと!!!
「アメイジング...」
眼前に広がるのはまさにあられもないその部分。
彼はしばらく口をパクパクさせながら穴があくほどその穴を凝視した。
が、そこからの彼は素早かった。
おもむろに同じくパンツを脱ぎ捨て、小刻みに動き出す、、、
(シャナナナナナナナナ....)
そして、、、、、
「んんはぁ!」
小さな呻き声とともに、彼は後方にふわっと浮き上がった。
そう、そこは無重力空間。
なにがしかの「推進力」が働いたのである。