秋は月に恋をする⑦
1984年Ⅹ月16日の朝立新聞記事より抜粋…
『《新興宗教団体教祖の実弟逮捕!裏社会にはびこる魔の手!》
啓視庁視姦課手こき係は昨夜未明、都内某所にて新興宗教団体「コケのむすまで」の教祖、ゲバゲバ大王こと屯田兵の実弟で自称モーレツ企業戦士、大塚ノブオ容疑者をワイセツぶつチン劣罪で緊急逮捕した。
調べによると大塚容疑者は、深夜の住宅街で女装しながら月を見てほくそ笑んだのち、電柱の根元に向かっていかがわしい言葉を投げかけた疑い。啓視庁によると取り調べに対し大塚容疑者は、
「流通業の重鎮ナメんな!」
「これは幕府の陰謀だ!」
「大統領を呼べ!」
などと反抗的な態度を見せているという。
しかし朝立新聞独自のとある消息筋によると大塚容疑者はこのような供述をしたらしい。
「…オレが働いてるビブンセキブンは真夏におでんがバカ売れするんだぜ…」』
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カランカラン…
(来た!)
「バイク便でーす」
アタシは少しだけコケシ柄のブラヒモを見せ、ドキドキしながら言ったの。
「月月火水木キンタ…」
「で、ご依頼の品は?」
遮られたわ!やり手ね!
でもめげないのアタシ。それに仕事中だし。だから平然と言ったわ。
「今日はこれを甲府まで。生ものだから急ぎでね!」
「生もの…ですね」
「そう、…もうすぐ生もの」
「…?…」
「孵化直前のカマキリの巣。気をつけて運んでね。…それと、はい、これは個人的に」
「…はあ、ありがとうございます」
(イエス!渡したわ!)
「後でゆっくり見てね」
「…わかりました」
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キモい女だぜ…
しかしなんだこの生暖かい紙袋は…
とりあえず開けてみっか。
そして僕は開けたことを死ぬほど後悔することになったんだ…。