徳川の泰平の世の礎づくりを支えた藤堂高虎と天海を描いた小説。

 

関ヶ原の戦いを終え、高虎が大和郡山城を接収するところから物語は始まります。戦に勝ったとはいえ、家康は豊臣家の大老であり、安寧の世にするために何をすべきか熟慮していた頃です。

 

まず「都や上方一帯ににらみが効く膳所に城を築くこと」および「関白を五摂家に戻すこと」から始めます。次に伏見城の再築、征夷大将軍宣下、千姫の輿入れを画策し、将軍宣下ののちに秀忠を二代将軍に任官させます。さらに後陽成天皇の譲位、後水尾天皇の即位を企て、その祝賀に家康と秀頼の会見、さらには和子さまの入内を。そして朝廷に対して公家諸法度を、豊臣方に対して大坂の陣へと突き進みます。

その間に江戸城の天下普請なども実行されます。

 

いやぁ、天海の頭脳と、高虎の頭脳・築城能力・武力・交渉力の賜物です。高虎の乱世及び治世での振る舞いからズルい奴という人もいますが、高虎は時流を見る目があったんです。一方で、大和郡山城の接収の後に召し抱えられた槍の勘兵衛こと渡辺勘兵衛は、泰平の世を拒むことから大坂の陣の後に高虎に追放されています。

 

高虎に関する書籍は、「下天を謀る(安部龍太郎)」、「虎の城(火坂雅志)」、「主を七人替え候(小松哲史)」などたくさんありますが、乱世以降、主に治世への過渡期を描いたこの本も面白かったです。