葵岳のふもとにある葵レストラン。今巻は店長の登磨の目線で描かれています。

 

モデル並みのイケメンで料理も上手い登磨。完璧なんですが、死んだばあちゃんから「何か足りね」「ほかさもっと大事なものがある」と言われたままで、答えがわかりません。

 

「お客さんが娘にお土産として持って帰りたいからもう少し甘くしてほしいと頼んだ。登磨、断る。味のバランスが崩れるからとのこと。お客さん、苦笑いして帰っていった」とばあちゃんのノートに書いてありました。ちょっと冷たいですが当時の登磨にとっては正しいことだったんですよね。きっと教科書通りにやって何が悪い、そんな気持ちだったのでしょう。

 

料理だけしていればいいと思っていた登磨、今巻では「オレもそうだ。これからは料理だけでなく、ひとも見て作っていくんだ。」と成長します。これも美玖や、

・瑛太にテニスで負けて黒い気持ちでもやもやしていた藤島早苗、

・痴呆が進んでも昔の味を懐かしむ同級生・馬場の祖母のハナ、

・両親の言う通りに生きることで自分のやりたいことが出来ない同級生・工藤陽菜、

・自分勝手な新聞記者の西野将晴、

の振る舞いを目の当たりにしたことを糧にしています。さらに同級生の人としての方向性を正してしまうんです。登磨自身はそんなに大きな影響を与えようとは思っていないにもかかわらず。

 

人間には嫌な部分もありますし、感情を考慮すると人によっては正しくないこともあります、それらを克服できるきっかけを与えてくれる一冊でした(美玖も成長しています)。