∂小さな素粒子・大きな宇宙
秋の夜長に遠い宇宙の誕生に思いを!
Lyn
この画像(ウロボロスの蛇)には、頭に近いほど大きなモノ(地球→星→宇宙)しっぽに近いほど小さなモノ(細胞→原子→素粒子)が書いてある。
頭がしっぽをパクッと食べている様子が、宇宙と素粒子の研究が密接にかかわっていることを表している。
素粒子は、世の中で一番小さなモノ・それ以上細かく分けられない(と現時点で考えられている)モノ。
その小さな素粒子を研究するため、研究者は全長何キロにも及ぶ巨大な加速器を建設しました。そして加速器を使った研究が、広大な宇宙の誕生の謎を解明するカギになっている。
素粒子・加速器・宇宙。全く異なるスケール(大きさ)のモノがこうやって関係しているのって、ちょっと不思議です。
(∈https://www2.kek.jp/ipns/ja/special/belle2-nicolive/particles-and-universe/引用・編集)
∂原子は素粒子でできている
物質の最小単位は「原子」ではない。そのことが分かったのは、20世紀の幕開けを目前に控えた1897年のこと。
「電子」の存在が発見され、原子に内部構造があることが明らかになった。1911年には、「原子核」が発見され、その周りを電子が回っていることが突き止められた。
物理学者の探求は、原子核そのものへと向かう。1919年に「陽子」が、1932年には「中性子」が発見され、原子核が陽子と中性子によってできていることが解き明かされた。
だが、その後の宇宙観測技術や加速器実験技術の発達により、より小さな粒子が存在することが徐々に明らかになる。
1964年、「陽子」や「中性子」を構成する「クォーク」という「素粒子」の存在が予言され、1969年にはアメリカの加速器実験で「クォーク」が存在する証拠が検出された。
こうした研究の積み重ねにより、物質の最小単位としての「素粒子」の正体が明らかになった。なお、「電子」も素粒子のひとつである。
∂20世紀の物理学の到達点
標準理論とは、現代素粒子物理学の基本的な枠組みのことだ。1970年代半ばに体系化され、「20世紀の物理学の到達点」とも言われるこの理論には、17の素粒子が登場する。
当初、「クォーク」は3つの種類があると考えられていたが、1973年には6種類のクォークの存在が予言された(小林・益川理論)。
同様に、電子の仲間である「レプトン」も6種類あるとされ、すべて20世紀のうちに発見された。
自然界には物質と物質の間に力が働き、そうした力も素粒子が媒介すると考えられている。
電荷を持つ素粒子どうしに働く「電磁気力」は、「光子(フォトン)」が伝える。電気や磁石の力を生み、原子核と電子を結びつける「光子」の存在は、20世紀はじめから知られていた。
∂クォークが陽子や中性子を構成し、陽子や中性子が原子核にまとまるのは、「強い力」が働くからだ。その力は、「グルーオン」が媒介する。
クォークやレプトンに作用し、原子核の崩壊現象を引き起こす「弱い力」は、2種類の「ウィークボソン」によって伝達される。これら2つの力は、1970年代から80年代にかけて存在が突き止められた。
なお、日常生活で身近な「重力」も同様に「重力子」によって媒介されると考えられるが、重力は素粒子の世界では弱すぎて無視できるため、標準理論では扱われていない。1964年に質量の起源と予言されたヒッグス粒子は
、標準理論のなかでも特殊な素粒子だ。1990年代以降、素粒子物理学は飛躍的な発展を遂げたが、「標準理論」に含まれる17種類の粒子のうち、ヒッグス粒子だけが、20世紀中にその姿をとらえられずにいた。
∂標準理論が直面するいくつかの限界
標準理論は、早くからその限界も指摘されていた。そのひとつが「重力」を扱えないことだ。現代の物理学では、「重力」、「電磁気力」、「強い力」と「弱い力」の4つの力を統一的に説明する究極の理論の構築を目指している。
138億年前の原初宇宙では、ただ1つの力が存在し、時間とともに4つの力に分岐したのではないかと考えられている。その謎を解く鍵を素粒子が握っているとされるが、「重力」は標準理論の射程外とされているだけでなく、「重力」以外の3つの力の統一(大統一理論)
もまだ完成していない。
もうひとつの限界は、宇宙に存在すると考えられる物質やエネルギーのうち、標準理論で説明可能なのはわずか5%にすぎないことだ。天文観測技術の発達により、宇宙には目に見えない(光を発しない)大量の謎の物質「暗黒物質(ダークマター)」
が存在することが1960年代半ばに明らかになった。
さらに1998年には、宇宙が現在、加速膨張していることが突き止められたが、その理由が解明されておらず、正体不明のエネルギー「暗黒エネルギー(ダークエネルギー)」の存在が指摘されている。それぞれ、宇宙の27%と68%を占めるとされる。
さらに、LHCで発見されたヒッグス粒子の質量が、大統一理論や究極の理論のエネルギースケールに比べて、はるかに軽いという謎がある。さまざまな点で、標準理論を超える理論が求められている。
∂標準理論を超える究極の理論とは
素粒子物理学は、標準理論を拡張する新たな理論の構築と、それを証明する観測や実験に挑み始めている。
研究者たちの期待を集めているのが、「超対称大統一理論」だ。
この理論では、標準理論に登場する17の粒子に加え、各粒子に対して、パートナーとなる粒子「超対称性粒子」の存在を予言している。
もっとも軽い「超対称性粒子」は「暗黒物質(ダークマター)」の候補であり、ヒッグス粒子の質量の軽さを自然に説明することもできる。重力を除く3つの力を統一的に理解する「力の大統一」も可能になる。
研究者たちが次に狙うのは、「超対称性粒子」の発見であり、「超対称大統一理論」を実証する現象の捕捉だ。
が力を入れて取り組む実験も、そのためのものだ。
さらに、厄介な「重力」をも統合する究極の理論も提唱されている。それが、素粒子を振動する「ひも」ととらえる「超ひも理論(超弦理論)」だ。
この理論を実証する実験方法は考え出されていないが、素粒子物理学の歴史は、先人たちの予言を実証する実験技術の発展の歴史でもある。素粒子物理学がその地平に辿り着く日も、そう遠くはないかもしれない。
(∈https://www.icepp.s.u-tokyo.ac.jp/elementaryparticle/beyond.htmlより引用・編集)
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