∂残酷な進化論

更科功

 

   

 

 

∂筆者は『はじめに』で、面白い例えをしている。アルファ星にヒトとミミズとマツが移住させてもらったところ、マツは光合成で酸素をつくり、ミミズは土壌を改良して役に立ったものの、やたらプライドだけは髙いヒトだけが、何の役にも立たなかったと。筆者は、この例え話から、私たちはヒトという種を特別扱いする傾向にあるが、ヒトは決して進化の頂点でも終着点でもなく、他のすべての生物同様、進化の途中にいるだけであり、そもそも、環境に「完全」に適応した生物などというのは理想・空想の産物であって、私たちヒトも「不完全」な存在なのだと。
筆者は本書において、ヒトの肺は鳥類や恐竜の肺にはかなわないこと(第2章)、窒素(尿)の捨て方から見ると、哺乳類より鳥類や爬虫類の方が陸上生活に適していること(第3章)、ヒトの眼の錐体細胞が4→2→3、眼の数も0→3→2と減ったり増えたりしていること(第6章)、チンパンジーのような手からヒトのような手に進化したのではなく、ヒトのような手からチンパンジーのような手に進化したこと(第8章)を示して、ヒトが進化の頂点や終着点にいるものではないことや、直立二足歩行に進化したがゆえに、心臓病(第1章)、腰痛(第7章)、難産(第10章)になりやすいことを示して、ヒトが「不完全」な存在であることなど、進化にまつわる興味深い話題を紹介している。また、終章では、みんなが死なないで、いつまでも生きる方法があるとしたうえで、最後の一行で本書のタイトル『残酷な進化論』の意味を明らかにする。

 

内容紹介

ヒトは心臓病・腰痛・難産になるように進化した!

複雑な道具を使いこなし、文明を築いて大繁栄した私たちヒトは、じつは「ありふれた」生物だった──。人体は「進化の失敗作」? ヒトも大腸菌も生きる目的は一緒? 私たちをいまも苦しめる、肥大化した脳がもたらした副作用とは? ベストセラー『絶滅の人類史』の著者が「人体」をテーマに、誤解されがちな進化論の本質を明快に描き出した、知的エンターテインメント!

『絶滅の人類史』著者、待望の新作!
心臓病・腰痛・難産になるようヒトは進化した!
最新の研究が明らかにする、
人体進化の不都合な真実──

「人体」をテーマに進化の本質を描く
知的エンターテインメント
・ヒトのほうがチンパンジーよりも、じつは「原始的」だった!
・ヒトは腸内細菌の力を借りなければ、食事も1人でできない!
・人類よりも優れた内臓や器官を持った生物は山ほどいる!
・生物の寿命も進化によってつくられた!

内容(「BOOK」データベースより)

心臓病・腰痛・難産になるようヒトは進化した!最新の研究が明らかにする、人体進化の不都合な真実―「人体」をテーマに進化の本質を描く知的エンターテインメント。

著者について

1961年、東京都生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。東京大学総合研究博物館研究事業協力者。明治大学・立教大学兼任講師。専門は分子古生物学で、主なテーマは「動物の骨格の進化」。主な著書に『絶滅の人類史──なぜ「私たち」が生き延びたのか』(NHK出版新書)、『化石の分子生物学──生命進化の謎を解く』(講談社現代新書、講談社科学出版賞受賞)、『進化論はいかに進化したか』(新潮選書)など。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

更科/功
1961年、東京都生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。東京大学総合研究博物館研究事業協力者。明治大学・立教大学兼任講師。専門は分子古生物学で、主なテーマは「動物の骨格の進化」。主な著書に『化石の分子生物学―生命進化の謎を解く』(講談社現代新書、講談社科学出版賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)