お彼岸と聞いて

「よしっ」と腰が上がっちゃうというのは、何歳ぐらいの人でしょうか。


今、核家族の世の中で。

家に仏壇があるという方も、少ないと思います。

ドラマの中で、仏壇があるというシーンも皆無です。

しかし、昔はあったんですよ。

向田邦子という脚本家を知っていますか?

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昭和の大脚本家で。代表作は『時間ですよ』とか『寺内貫太郎一家』などがあります。

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向田邦子原作・脚本のドラマ

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この方、明治生まれの厳格な父親のもと育ちましたので

家庭とか、家族が体に染みついていて

この方の脚本には、家庭の風景が色濃く描かれています。

例えば

朝、寝坊した長女が朝食もとらずに学校へ行こうとするシーンがあって。

「こらっ。おじいちゃんにご挨拶は!?」

と母親にしかられ

仏壇のリンをチンチンチンと乱暴に鳴らし

手を雑に合わせて、駆け出していきます。


なんか知らないけど、先祖を敬う習慣が備わっていたのですね。

昭和の人々には。

韓国のドラマを見ていると、両親はもとより祖父母にも

敬語を使い、大切にします。

韓国は儒教の教えが、今も生きています。


他にも、向田ドラマでは

敷居を踏むと、足をパチンと叩かれたり

三和土の靴をそろえたり

普通の「躾」の状況が何気なく出てきます。


今の日本には親や先祖を敬うという景色がなくなりました。

爺ちゃんが死んだら、葬式とか法事には参加するけど。

「で?」

みたいな感じです。


お彼岸と言う言葉。「かのきし」のも呼びます。

死んだ人が暮らす「あちら」の世界。

そして我々、生きたものが住む「こちら」の世界。

この境目が、最も少なくなる。言い換えれば近くなるのがお彼岸だそうです。

※宗派により、考え方もろもろあります。


だから、お彼岸の中日(ドラゴンズではない。真ん中の日です)である

秋分の日や春分の日は1日の中で昼と夜が半分ずつと言われています。

その、先祖の霊に最も近づける「時」がお彼岸なんです。


物識りだった私の叔母曰く

「あっちの世界の祭りが彼岸なんで、こっちは花を贈って賑やかにしてあげる」

のだそうです。


亡くなった人々に思いをはせて、お花を飾ってみるのもいかがでしょうか。

我が家には仏壇はないけど、いま

フリージアとトルコキキョウを飾ってあります。

震災で亡くなった多くの方を悼む、ささやかな気持ちです。


いい匂いを感じると

「誰かが喜んでくれている」ような気がします。

向田先生にも感謝です。