神戸コレクション

気持ちを奮い立たせるには
音楽が有用とのこと
野球のピッチャーやバッターが
マウンドに立つ時
必ず応援歌が流れるのは
気持ちを高ぶらせるだけでなく
リラックス効果にも繋がるとか

あれからもう1週間が経つのか・・・

神戸コレクション
出番前にバックステージに出演者が勢揃い
まさか自分がモデルとして神コレにでるとは

これまで何度か神コレに行って
いつかあのステージに「司会」として立ちたい
とは思ったが・・・モデルとは

「オオヌキさん、お相手の方がいらっしゃいます！」

舞台監督が僕の相方を連れて来てくれた
石田ニコルさんだった
神コレ・関コレ・雑誌など
ファッションモデルとしての活躍が目まぐるしい彼女

「彼女はキャリアもあるので、彼女のアドリブに付き合ってください」

あ、アドリブ・・・
ただでさえロボットウォークをしないか心配なのに・・・

目の前にたつ彼女はテレビや雑誌で見るより光っていた

「よろしくお願いします！」
「よ、よろしくお願いします！」
「緊張してても仕方ないっしょ！ｗ」

だめだ・・・

ひと回り以上離れた子に完全にペースを握られた

そうこうしているうちに
「では！はじまります！！」
と舞台監督の声が響き渡り
ショーのスタートが

出る順番待ちの心境は
小学校の時のインフルエンザの注射待ちのそれににて
早く終わってホッとしたい一心だった

落ち着け・・・
落ち着け・・・

そうだ・・・僕のペースに引き込むなら
音楽の話だ・・・
これなら気持ちも落ち着くし
プロのDJとしてプロモデルと対等にいられる気がした

「ニコルさん・・・音楽は聞かれます？」
「はい・・・洋楽ですね」
「へー・・・ロック？ダンス系？」

音楽セラピーなトークは得意だ
気持ちも落ち着いてきた

「えー、ロックが好きかな」
「そうなんだ・・・たとえば誰？」

どんなアーティストが来ても
だいたいのアーティストのライブは見ている
さあ来い・・・

「ニッケルバックっていうバンドが好きなんです」
「え・・・！！」

「ニッケルバック」

僕が今世紀一番好きなバンドォォォッ
まさかの回答に動揺した

「ランウェイのトップまで行ったら手をつないで帰りましょう！」

動揺している僕にさらなる追い打ちの衝撃的発言・・・

「はい、オオヌキさん！どうぞ！！」

気がついたらディレクターから出発のサインが


ニッケルバック・・・手をつなぐ・・・

予想外の展開すぎて
心拍数はマックスに・・・

ランウェイをまっすぐトップへ
音が遮断され全てがスローモーションに見える
トップでどんな表情をしたのか記憶がない

ただ引き返す時
躓いたのは覚えている
そして8000人がざわついたことも・・・

その瞬間を・・・カメラさんはちゃんと抜いていて
巨大モニターに

「うわーごめんね！！」
「ドンマイ」

聞こえなくても口の動きで見てわかったと舞台監督・・・

音楽も佇まいも度胸も・・
すべてに完敗・・・

携帯の着信音が鳴った
ニッケルバックのお気に入りの「フォトグラフ」だ
ちょっとした動悸が・・・
音楽はセラピーとは本当か？

衣装はSENSE OF PLACE





時計はICE WATCH