「お父さん、今から美味しいパスタを食べに行くで」
買ったばかりの新車で高速を飛ばしながら、運転席の長女がハイテンションで次から次へと曲を変え、鼻歌ならぬ大声で喚いている。
こりゃ、保育園時から成長が止まっているなと言う助手席の私に、後部座席のカミさんが頷いた。
何やらその店の前を通るたびに目をつけていつか行きたかった店らしい。
私にゃ、ほとんど縁のない、もう死語になったかイタ飯。
店の名は音符を連想する「ミソラ」。
そう聞き直す私に娘がミソッカスに怒り出し、「ピカソ……、違う!ピ、ソ、ラ」と。
らしい。
席を仕切るカーテンも粋なはからい。
半個室で落ち着いたテーブル席。
ファミレス風に席を欲張ったのか、少し狭いのがリゾートっぽさからは離れてしまうが。
ライトは月に勝手に見立てる。
カミさんと長女が悩んだ末に、2、3人向けのコース料理を注文した。
待った感じもなく最初に出てきたのは、唐揚げ。
ソースは甘め。
オーロラソースだろうか?
唐揚げ自体は個人的には揚げすぎかとおもったが、前の貴婦人たちは美味しい、美味しいとパクついていた。
これは美味かった。
周囲の焦げ目がなんとも言えず味にも香ばしいアクセントをつけて、中はやわらかに焼きあがっている。
クルリと巻いて食べるのにちょうど良い。
3人でなら、もう1枚欲しいくらい。
私たちは単品での注文も加え、両方とも食べた。
ウニとアサリのパスタ。
個人的、親父的には生臭かったが、これまた長女には受けた。
ナスとチーズのパスタは子ども向きって感じで、案の定、私には食べやすかった。
リゾットはイベリコ豚のを選択し、これが正解。
豚肉はカリッと焼かれていて独特の旨味とともに堪能した。
女性にはこれが楽しみだろう。
これはケアレスミス。
すでに腹がいっぱいだった上、コースについていたデザートの方に質的軍配が上がった。
もう、しばらくパスタもパンもいらないやと思った翌日のブレックファーストは……。
だつた。