以前から一度は行ってみたかったお店。
竜王町の老舗「岡喜」さん。
直牧場を持たれる肉料理の名店だ。
入店するなり、いい店舗とはこういうのを言うのだと思った。
歳月とともに重厚感と気品が高まりゆく雰囲気が、肉の焼ける香ばしい香りと共に私の鼻腔に漂って来た。
広い座敷の一角に通されると、和風モダンな佇まい。
何枚にも分かれたメニューには、ステーキをはじめ、焼肉からすき焼き、しゃぶしゃぶ、ビーフシチュー、ハンバーグ、アラカルト。
いかにも美味しそうな数々の肉料理がカラー写真と共に記載されている。
迷った挙句、お昼だし、定食にすることにした。
相方はすき焼き、私は牛肉の照焼き。
注文してから落ち着く暇もない速さで、料理がテーブルに並べられた。
和洋折衷の一品盛り、ミニサラダ、味噌汁、漬物、メインの牛肉、目を見張る盛り付けの美しさである。
定食だからと言って手を抜かない、細部にまで渡る丁寧な仕事を感じる。
照りのきいた焼き立てのモモ肉を箸を使って頬張る。
口に入れた瞬間、牛肉の香りと、赤身なのに近江牛特有の濃厚な味わいが舌に絡みつく。
パサつきも感じられない。
まさに至宝の味だ。
あらためて近江牛のインパクトに圧倒されながら店を出て、拳を握り締めて暖簾を振り向いた。