前回お話ししました止血凝固学のつづきです。
凝固システムはとても難しいとお話ししました。
なので、システムをお話しする前に
登場するキャラクター(物質)たちの紹介をしたいと思います。
血栓止血に関するキャラクターには
抗凝固因子という凝固したくないタイプと
向凝固因子という凝固したいタイプ
そして・・・
時と場合によってはどっちもなる中立派がいます。
血管内皮細胞(以下内皮細胞)はこの中立派の代表でしょうね。
内皮細胞は血管の一番内側にある一層からなる扁平な血管壁です。
凝固は主にこの内皮細胞の被害(傷害)をきっかけ(リガンド)に起こります。
いわゆる皮ならぬ川の決壊です。
決壊した川に補強し、決壊部分から流れでる水(血液)を食い止めるのが凝固、カサブタで、内皮細胞は川の土手(食い止められる)部分ですね。
普段、血管内に平和が続く限り内皮細胞は抗凝固因子派です。
お天気な穏やかな日の小川ごとく、血液にサラサラ流れてほしいのです。
なので、普段の内皮細胞は血液凝固に努める血小板に
「おとなしくしていましょうね~」
と、一酸化窒素(NO)やプロスタサイクリン(プロスタグランジンI2とも呼ばれ略字はPGI2)、ecto-ADPase(別名:ecto-ATPDase、ecto-ATP ジホスホヒドロラーゼ、エクトアピラーゼ等)を分泌し、リラックス(抑制)させています。
一口メモ:内皮細胞は普段、糖鎖(糖蛋白)に覆われており、陰性荷電(-)を帯びている状態です。凝固の主役ともいえる血小板も表面を糖鎖に覆われて同じく陰性荷電(-)ですので、互いに引き合わず、凝固を阻止しています。
他にも、抗凝固因子である②プロティンCを応援(賦活)する物質、トロンボモジュリンやEPCR(endothelial protein C receptor、内皮細胞プロティンC受容体)産生し、同じく凝固因子であるアンチトロンビンにやる気向上させるTFPI(tissue factor pathway inhibitor、組織因子経路インヒビター)産生し、凝固プロテアーゼを阻害(凝固プロテアーゼ:凝固に働くたんぱく分解酵素たちのこと)しています。
また、線溶(血栓を溶かす物質)にもバランスよく働きかけ(賦活)、常に血管がサラサラになるように維持に努めているのです。
それなのに、ひとたび内皮血管が損傷すれば内皮細胞はジギルからハイドに大変身します。
穏やかだった抗凝固因子派が、激しい向凝固因子に変るのです。
まず凝固に関与する物質、組織因子(第III因子)、血小板活性化因子(platelet activating factor:PAF)、細胞接着分子(CAM:cell adhesion molecule)、vWF(von Willebrand因子)などが発現します。
組織因子(tissue factor:TF、旧称:組織トロンボプラスチン(別名:トロンボキナーゼ))は凝固第VII因子(プロコンペルチン)と結合し、外因性凝固カスケードを開始させます。
一口メモ:凝固の機序(順序、流れ)には外因性と内因性があります。(詳しく別項目で説明していきます。)
血小板活性化因子は、血小板を活性化させ血小板凝集を開始し、細胞接着分子は白血球を浸潤させ炎症反応(凝固と炎症は密接な関係にあります。別項目で説明します)を亢進させます。
こうして内皮細胞は、損傷した血管から血液が流れださないように向凝固因子となるのです。
