【DLH二次創作小説】名もなきスープ | 7yoduki Blog

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大好きなTRPGについて語る、サークル「道具屋7yoduki」主宰、南紀和沙のブログ。ときどき日記や創作も。

 

「ごはんできたわよ~」

 原子力潜水艦「デュカリオン」。
 その食堂で、シュニムは戦友たちを呼ぶ。
 食堂内には、ふわりと空腹を刺激する香りが漂っている。

「いい匂い……」

 ベクターが目を輝かせる。
 配られた皿には、赤色の液体に根菜がたっぷり入ったスープがなみなみと注がれている。
 ベクターとともに入ってきたザシャが、皿の中身を尋ねる。

「フロイライン、これはなんという料理だ?」
「名前なんかないわよ。その時ある物で作るスープよ」

 シュニムがそう答えると、エドアルトの眉がわずかに寄る。

「……食えるのか、これは」
「めっちゃ失礼ねぇ! だいたいの野菜は、弱火で煮込めばおいしいのよ」

 シュニムが唇を尖らせる。
 エドアルトとシュニムのやりとりに、ザシャとベクターがクスリと笑う。

「トマトにニンニク入れれば、お肉がなくてもおいしくなるしね」
「なるほど、トマトのスープか」
「さ、いただきましょ!」

 四人の戦友で囲む食卓。
 いつまで続くかわからないが、それでもひとときの安らぎを得る。

「いただきます」
「召し上がれー」

 スープを一口飲む。
 ほどよい酸味がまず口を洗い、そして根菜の濃い甘みが舌に広がる。

「旨いな」

 ザシャの言葉に、シュニムが嬉しそうに口角を上げる。

「でしょ! ベクターはどう?」
「おいしいです、とっても……!」
「そうでしょ~!」

 喜ぶシュニム。
 ザシャがふと、エドアルトの脇腹を肘でつついた。
 無言で食べ進めていたエドアルトが、ザシャの意図に気づいて目元を歪める。

「……旨い」

 ぽつりと言った言葉に、シュニムの表情がさらに明るくなる。

「へへ~~ん、でしょ~~!!」
「旅の踊り子は皆、こうなのか?」

 エドアルトの言葉には、言外の問いがある。
 「お前はいったい何者なのだ」という問いが。

「そうよ、自活できないとね! どんな国でも、どこへ行っても、そこで手に入る食料で生きなきゃいけないんだもの」

 シュニムはわかっているのかいないのか。
 彼女はニコニコ笑いながら、ウィンクしている。

「まだスープだけだけど、デュカリオンの環境が整えばパンだって焼けるかもね」
「パン……!」
「頑張らないとね、ベクター」

 ベクターは幼くしてデュカリオンの心臓部となった。
 シュニムの言葉は、彼に次の具体的な、そして小さな一歩を示すようだった。

「はい! シュニムさん、このスープおいしいです。あとで作り方を教えてください」
「お、いいわよ~! しっかり教えてあげる!」

 明るく笑いながら食事をする。
 ここ数年、この中の誰にも経験できなかったことだ。

 シュニムの名もなきスープ――ある意味、無国籍のこの料理がデュカリオンの伝統料理になるのは、また別のお話。

 

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【あとがき】
『デッドラインヒーローズRPG』の二次創作小説を書きました。

卯龍さん作・GMの「死の道より告げる」の後日談SSです。NPCさんとPCさんたちも出る。潜水艦デュカリオンに乗って、状況が落ち着いた頃の一コマ。

ふせったーに書いてましたが、Twitterがアレしたのでこちらでも公開。


【著作権表示】
本作は「ロンメルゲームズ」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『デッドラインヒーローズRPG』の二次創作です。
(C)Takashi Osada / Rommel Games
(C)KADOKAWA