ナダルが5連覇を達成したローランギャロス。
4大大会で最も長い戦いであることに加え、今年は1stウィークは雨雨雨。2ndウィークは30°を越す暑さ暑さ暑さ。印象的だったのは、クレーコーターと対戦する選手たちの辛そうな顔。ウイナーを取ってもエースを決めても、どこか浮かない顔。こんな時は99%の確率で、こんなことを考えている。
「これ、5セットもやんの?」
テニスって過酷なんです。サッカーのようにミスを帳消しにしてくれる仲間はいない。野球のように1発で4点入る逆転満塁ホームランなんてものもない。ただただ、1ポイントを積み重ねていく競技。しかも、ほとんどのポイントが相手のミスによるもの。
「ああー、めんどくせーなー」
さすがにプロは仕事だからここまで思わないだろう。とか思うかもしれないけれど、絶対に思ってますよ。あ、ちなみにテニス選手は圧倒的にドSが多いです。相手の嫌がる顔を見て快感を得ている生き物です。僕もそうです。左利きを活かして、相手のバックばっかり狙います。実業団でおじさんと当たれば、ドロップショットばっか打ちます。みんなそうです。テニスの上手さと性格の悪さ(コート上)は正比例します。というより、そうじゃないと強くなれません。勝てません。基本的にみんなどこか捻くれてます。そんな人種の人同士が戦うんだから、大変大変。クレーコートなんて、文字通り、泥試合。
テニスは頭が良くないと勝てない。なんて始めた当初に親に言われましたけど、20年以上やってきて身にしみるほどわかります。でもみんな捻くれてるから、スマートとは言わないんですよね。ずる賢いほうのクレバーという言い方を海外ではするんです。でもこの賢さが、クレーではかえって自分を苦しめることがあるんです。
上手い人は賢いので、ちょっと先のことを考えてプレーします。ここは様子見だな。ここはブレイクしにいこう。など。そのときの状況を踏まえて、力をセーブしたりもします。大局を見れるんです。見ちゃうんです。これがダメ。特にクレーにおいては。
それは、勝利までの途方もない道のりを再確認してしまうから。大嫌いな数学の参考書のわりと最初のほうで、「あと何ページやらなきゃいけないんだろう?」と疑問を持ってしまい、「うわ、まだこんなにあんの?」と、先が長いことを知ってしまったときの、あの感覚に近いです。
僕はナダルがクレーで異常に強い理由は、実はここに隠れていると思うんですよね。
・ピンポン球のように跳ねるフォアハンド
・チーターを狩れるんじゃないかのような足の速さ
・どんな劣勢からでも打ってくるバズーカー砲のようなパス
彼の強さをあげればキリがないんですが、
もっと根幹的な強さがナダルには2つある気がします。
その1つが・・・
相手を萎えさせる力。
簡単に言えば、「うわ、まだあとこんなにポイントとらなきゃ勝てないの?」と思わせる力です。ジョコビッチがとあるインタビューでこんなことを言ってました。
Q、ナダルに対してどんな印象を持ってますか?
A、「勝負師。どんなポイントも、まるでマッチポイントのようにプレーする男。」
典型的に捻くれた奴なんですよ、ナダルって。譲り合いの精神がないんです。どんなに意味を持たなそうなポイントでも、あきらめない。仮に相手のサーブで40ー0だったとして、錦織とかフェデラーはこう考えてると思うんです。
「このポイントとっても、どうせブレイクできねーなー」
プレーに出ますよねー、こういうのって。特に錦織はわかりやすい!それも一つの戦術なんで、別に悪いわけではないんですが・・・。けどナダルさんは違うんです。とりあえず全力でプレーしてくるんです。もうバカなんですよ。でね、お客さんってどっちが勝とうと基本的にはどっちでもいいんですよ。一部の熱狂的なファンを除いては。そりゃある程度は、こっちに勝ってほしいなーっていうのはあるけれど。一番望んでるのは、その試合が長引くことなんです。いやはや、テニスは観客まで性格が悪かったのか。
でもそうなんですよ。せっかく高いチケット買って見に来てるのに、6-0、6-0、6-0の1時間で試合が終わっちゃったら、誰だって「つまんねーの」ってなりますよね。どっちが勝つか最後までわからない、「あ、ビビってるな、こいつ。」「うわ、ここでそんなプレーする?勇気あんなー」とか、そういう選手の心の振動がプレーに出るのを望んでるもんなんです。
だから客は、頑張る方を応援するんです。やっぱり全力で戦う奴が好きなんです。ナダルとかヒューイットにファンが多い理由はこれです。だから嫌なんです。戦ってる方としては。気づけば観客まで向こうを応援してる有様。バカは強いですよ。お利口さんよりもずっと。なんてコピーがありますが、まさしくその通りです。
この相手を萎えさせる力が、打っても打っても決まらないクレーコートの特徴と相まって、通常の何倍にもなる。もはや相手に絶望感を抱かせる程の力を生むんです。8月31日、夏休み最後の日に途方もない量の宿題が残っている現実を突きつけられる、まさにあの感覚に近いです。
まだあるんです、ナダル先生の強さのヒミツ。
2つめは・・・
謙虚さ。
よく試合で、このまま普通にやってれば勝つなー。っていう状況で変なことをやってくる人っているんですよね。典型的なのがサーブ&ボレー。つぎに多いのが、すぐエース級のボールをドンドン打ってくる。
一見すると流れをなんとか変えようとする勇気ある行動なんですが、これはっきり言って1ミリも意味ないんです。いやむしろ逆効果。マンガ「金と銀」に出てくる蔵前も言ってますね。
「瀕死の奴は、必ず死に急ぐ。みんな待てないんだな。」
典型的な例が2006、2007、2008年の全仏のフェデラー。もう最後どうしようもなくなると、サーブ&ボレーに行く。行ってしまう。そんで抜かれる。抜かれる。バシバシ抜かれる。あーあ、もう終わりだなーって、ちゃんと見てる人は思ったはずです。
その点ナダル師匠は違います。彼は自分に何ができて、何ができないかをよく知っている。だから最初から最後まで、同じプレーをひたすら繰り返す。ノリでサーブ&ボレーなど絶対にしない。むやみにエースを狙いにいったりもしない。
フォアで、ひたすら相手のバックバックバックバックバックバックバックバックバックバックバック。バックバックバックバックバックバックバックバックバックバック。(以下省略)
片手バックの選手にとっては、ほとんどリンチです。
しかも捻くれてると思うのが、
「先輩!僕、このプレー、最後までできますんで!」
というオーラを体中から発してくる。
もうやんなっちゃいますよ。こんな奴いたら。誰だって。
で最終的には、みんなこう思うんですね。
「こいつと5セットとかムリポ。orz」
いいんだよ、嫌になっても。それが普通さ。人間だもの。(みつを)ナダルに勝つには今のところ、終止テニスのプレーのレベルで上回るしかないんですね。もう先手先手で、とにかく後先考えずに攻めてみる。ちょうど、フェデラーがたしかナダルとの2006年の決勝で、ファーストセットを6-1で取ったときのように。最近で言えば錦織がマドリードでみせたように。
ナダル殿は、今年でローランギャロス9勝目。バケモンですね!グランドスラムの通算タイトルでも14勝と、ピートサンプラスに並んだ。一方、フェデラーが17勝で、たぶん2年間ぐらい止まってる。ひょっとすると、史上最高のプレーヤーとして新たな名を刻むのはナダルなのかもしれない。全然可能性あるある。
ナダルは今、28歳。彼のプレースタイル的に30歳を越えたら、さすがに今のプレーはできなくなるだろう。そう考えると、フェデラーを越えて、前人未到のグランドスラム18勝を達成するには、2年間であと3つ。彼ならやれそうだし、やりそうだ。
だとすると、なおさら今度のウインブルドンが大事になってくると思うんですよね。フェデラーとしても、ここいらで復活してもう1勝しておきたいところだから、どちらにとっても、ここがキャリアとしての正念場になる感じがする。しかも2人とも昨年は1コケと2コケという、ふるわない結果だし。
これは見逃せない。そう考えると、
ほとんど観てないから今月こそ解約しよう
と思ってるWOWOWにまだ電話ができない。