辛口が欲しいの
それは棚卸し中のことだった。
作業する私の背中を
1人の見知らぬオヤジがたたいた
あからさまに不服そーな面持ち
今にも文句をば言わんとばかりに
臨戦態勢全開のオーラ
最悪の雰囲気だ
一瞬にしてさとった私。
そして、
オヤジは口をひらく。
「ねーちゃん、
これ辛口なんけ?
辛口も甘口も書いてへんから
わからんやんけ!」
レトルトを手に、
あきらかに喧嘩腰である。
そんなオヤジを相手に
心中穏やかではいられない私
感情を表に出してはいけない
ただただ自制心との闘い。
そして、
恐る恐る口をひらいた。
「すみません、
こちらハヤシライスですので。」
私の冷静な対応が幸を奏したのか
オヤジの怒りは
しずまったようだった。
帰り際の彼の背中は
心なしか少し小さく見えた。