⑪
気仙沼中学校は学校全体が避難場所になっており校舎の中も解放されていた。
けがをしてる人、座り込む人、寝ている人、知り合いと情報共有する人。
様々な人であふれていた。
「おらもう動げねえ。」
体育館に着いたとき、
祖母が体力の限界を迎えたらしく座り込んでしまった。
一緒に掲示板を回るのは得策ではないと考え、体育館に祖母を座らせたまま
僕と弟は各場所の掲示板を走り回った。
1つ目の掲示板。
付箋やチラシの裏など、あらゆるものに書き込みが施されていた。
知っている友人の名前があったり、家が流された報告も書いてあり
見えなかった被害が確認でき心が苦しくなった。
およそ100は超えるメッセージを見渡し母、兄の名前を探した。
何度見ても見つからない。
ここにはないのか。
「藤田真平、父、祖母、弟、気仙沼中学校にいます。」
自分たちの情報を書き込み次の場所へ。
途中は人にあふれていた中に声をかけてくれる人がいた。
「藤田!!」
「はい!」
懐かしい呼び声に振り返ると中学校時代の先生だった。
怒られた記憶しかなかったが今はそんな過去はどうだってよかった。。
互いの状況を聞き合いねぎらいあった。
別れ際に手元にあったおにぎりをくれ、僕は久々の食料に
思わず食べそうになったが掲示板巡りを優先させようと懐にしまった。
次の掲示板は中学校の隣に立っている小学校だった。
中学の掲示板より大きく200ほどのメッセージがあった。
左から右に探した。ないないない。
いったいどこにあるんだろう。
いや、そもそもここに来ているのだろうか。
ケガしてないのだろうか。
嫌な予感が頭をよぎった。すると
「藤田母 兄 妹 鈴木家にいます。気仙沼市○○‐〇」
のメッセージが目に入った。
「あった!!!りんあったぞ!!!」
興奮を抑えきれぬまま弟とハグをした。
生きてる!しかも妹も!
妹は震災が起きた時間避難所から離れた小学校に
通っており心配していたので2重に安心した。
しかし問題が。
掲載してある住所を知らないのである。
「どうやって行ったら良いんだろう・・・。」
途方にくれていると
「しんぺーちゃん!??大丈夫だった?怪我無い?」
声をかけてくれたのは友人の母だった。
「大丈夫!!みんなバラバラだったけど今メッセージ見つけた!
だけどその場所がわかんなくて・・・。知ってますか?」
「どれどれ・・・・あ!知ってるよ!たぶんあそこだ!車で連れてってあげるよ!」
「ほんとに!?ばあちゃんもいるからちょっと待ってて!!」
奇跡だった。
偶然声をかけてくれた友人母が住所を知っており、なおかつ車で送っていってくれるなんて。
それまでの疲れはすべて吹っ飛んで祖母の下に走った。
「ばあちゃん!みんながいる場所わかったよ!!一緒に行こう!!」
「おらはいい。ここで少し休ませでけれ。」
祖母は疲れ果ててるようだった。
「わかった!!じゃあ一旦俺らで行ってくるから、ばあちゃんはここでお父さん待ってて!!」
これ以上無理はさせられないと思い、
先生からもらったおにぎりを祖母に渡し友人の母の下へ急いだ。
10分ほど車を走らせ着いたのは通っていた高校の近くの一軒家だった。
木造の2階建てでガレージには2台車があり、庭もある。
良い天気だったその日は高台から、丁度気仙沼の街を一望できるような場所だった。
こんな場所知らない。来たことがあるかと記憶を辿ったが一向に思い出せなかった。
「送ってくれてありがとう!!」
そういって僕らは車のもとを去った。