⑧

 

 

「チュンチュン。」

「バサバサッ!」

 

雀の鳴き声とはばたく音で思い瞼を上げる。

目空けるといつもの部屋の天井。

窓を見ると今日も良い天気だ。

朝日に恵まれて清々しい。

 

さて今日も頑張るか。

とドアに手をかける。

 

何か忘れていた気がする。

なんだっけ・・・・。

 

 

 

「はっ!」

 

壁にもたれかかり座り込んでいた僕の足が消火器に当たる。

「いてえ・・。」

消火器の固さが現実を物語る。

 

どうやら寝ていたようだ。

昨日までの風景が無いことに気付くのに少し時間がかかった。

空気も冷え込み思わず身震いをした。

 

「火は!!

置かれた現実を受け入れ、課せられた任務を思い出し外を見る。

海上を行き来する火は幸福にも一景閣には来ていない様子だった。

少し安心し、自宅の方を見るとさっきまで見ていた

いつもの天井は燃え続けていた。

 

まだ外は真っ暗。時間を確認すると22時。

父が僕が起きたことに気付き声をかける。

 

「まだ燃えてるな。」

「そうだね・・。」

「眠れないか?」

「うん・・。」

 

そういうと父はコップに何かを注いだ。

 

「これ飲めば少しはあったまるだろう。」

 

差し出されたコップを飲み干すと

喉が熱くなるのを感じた。

 

「うわっ。これって・・!」

「ははっ。焼酎は経験ないか。」

 

軽く笑う父と初めて酒を交わした。

水が限られた量しかなく、体を温めるには良いとのこと。

言われてみればポカポカしてきた気もする。

 

「火消えないね。」

「明日まで燃えてるべな。」

「お母さんたちは大丈夫かな。」

「泳いで来る前に大丈夫って連絡来たぞ。一平(兄)と高台に避難してるってさ。」

「そっか。良かった。」

 

家は燃えたものの、家族の無事を確認できてよかった。

 

「明日高台に避難する?」

「いや、明日でも水位落ち着いてるとは限らねし、

救助来るかもしれねがら、動がねでおぐべし。」

「わがった・・。」

 

はやく避難したい気持ちはあったが、

父の意向に従うのが正しいと感じまた眠りについた。

 

ようやく長い1日が終わりを迎える。