1章       避難

 

「中に入れーー!!!!」

 

その言葉で我に返り振り返ると父がいた。

僕の実家は住居の前に、会社の事務所があり両親はそこで働いていた。

 

「父さん、父さん、地震が。。地震が。。」

「大丈夫か。怪我無いか!?」

「ない。。中のばあちゃんも大丈夫。」

「そうが。避難すっぞ。用意しろ。津波が来るまでは時間あっから。荷物まどめろ!」

「わがった!!」

 

父の言葉で目的が明確になり家に戻った。

 

テーブルの下にいた祖母に声をかけ荷物をまとめ、避難する旨を伝えた。

気の抜けた返事を聞き落ち込んでいる心中を

察したがそれどころではない。


何もしなければ死ぬ。

その恐怖感と未経験の高揚感が僕を動かした。

 

 

揺れは続いていたがそんなのは

関係なく自分の部屋に飛び込んだ。

 

何を持っていくか。

どのくらいの避難生活になるのか。

何が必要になってくるのか。

 

避難すべき際に考える点は以上だと思うが

その時の僕の心情は


「まあ揺れてるけど、津波なんて来ないだろう。


今まで17年間来たことないし。


避難所って中学校だよなー。

知り合いに会うかもだから着替えよ。

寒くなるかなー。

何時間後に帰ってこれるかな。

1日帰ってこれないかなー。」

 

そんなことを考えていると2歳下の弟が帰ってきた。

避難所指定されている学校からの帰り道に地震を感じ

坂を上らずに下ってきたというのだから驚きだ。

 

しかし、家族の無事を確認できて安堵できたのは確かだった。

 

弟と2人で話し合い持ちだした荷物は

 

・ベンチコート

・財布

ipod

・携帯2台(docom willcom

DS

・充電器

・学校帰りの荷物

・シャツ

・靴


だけ。どれだけ浅はかだったのかを

このときは思いも知る由がなかった。