ついに、誕生 ! !
結局一晩中、陣痛を繰り返しながら、まだ生まれてくる気配はない。
陣痛の間隔は微妙ではあるが縮まってきているような気はする。
10分間隔・・・、7分間隔・・・。
それでもまだ出てくる様子はないらしい。
朝がやってきた。
眠い・・・。
しかしワイフはそれどころじゃないのだ。時折やってくる激しい陣痛の痛みに歪んでいる。
女はなんて強いんだろう。僕が疲れている場合じゃない。
予想はしていた。
男なんて出産においては、付き添っていようが、立ち会っていようが、きっと役立たずなのだろう、と。
しかし実際その場に身を置いてみると、
あらためて自分の役立たずさを呪いたくなる。
最愛の妻が自分の子供を産むために、懸命に痛みと戦っている。
それなのに僕は何も助けてあげれない。
それでも必死に役に立とうと試みるが、気持ちだけが空回り・・・。
背中をさすって、うちわで扇いで、気の利かない言葉をかけて・・・。
午前10時頃、分娩室に移動する。
とはいっても、まだ生まれるわけではない。
動けるうちに移動しておこう、という先生の心配り。
「たぶん、今日中には生まれますよ。」と先生。
「えっ?今日中って・・・。まだ午前なんすけど・・・。」
しかし、そのあたりで腹は決まったような気がする。
いつでもいいさ、無事に生まれてくれれば。何時間でも待ってるよ。
頑張れワイフ、頑張れジュニア。
二人きりの分娩室。時折、先生や助産士さんが様子を見に来てくれる。
一体最初の陣痛から何時間経ったのだろう。
頭が働かない。
陣痛間隔はすでに1分おきになっている。
1分痛んで、1分休む。その繰り返し。
気がつくと、陣痛が去った1分間の休息の間に、
二人とも、コックリ、コックリ、居眠りをしていた。
二人とも寝ていないもんね。しかし、眠れるもんだね。
ワイフの「痛いっ!」という合図ともに、ハッと起きて背中をさする。
そしておさまると、また二人してコックリ、コックリ。
今思い出すと、笑える。
そして、午後3時頃。
破水とともに分娩台にあがる。
いよいよだ ! !
分娩台の上で、ワイフが一生懸命息んでいる。
僕はその姿を見ていて、涙が出てきた。
感動したのだ。
いや確かに、タイミング的にはフライングだろう。
まだ生まれてないし。
でもね、感動したんです。
人間が発するエネルギーって、
こんなに凄いのか。
僕は今まで見たことがなかった。
人間の本当に凄まじいエネルギーを。
今まで僕が体験したことの比じゃない。
子供を産み落とす時の女のエネルギーが、
最強なんだ。
僕はそれを目の前にして、涙が勝手に出てきた。
格好悪いからこらえようとしたんだけど、出てきた。
女は偉大だ。絶対にかなわない。絶対に。
気が付いたら、そこに小さな体が見えた。
小さな泣き声が聴こえた。
2009年2月11日
15時51分
第一子誕生
男の子 3080グラム
まだ名前はなし
マイワイフへ。
愛を込めて、本当にありがとう。
ジュニアへ。
ようこそ、はじめまして。頑張ったね。
