いらっしゃいませ

 

この作品好きなんです!

基本的に女性が頑張る作品ってはまるんですが。

「糸」にはまるのか、「ファイト」にはまるのか?

この作品の2大テーマですね。

繰り返し流れる中島みゆきのこの2曲。

「糸」が経糸なら「ファイト」は横糸。

そしてそれは横の糸は「あなた」、縦の糸は「わたし」ですね。

 

 

「あなた」の漣(菅田将暉)は中学生の時の葵(小松菜奈)との恋を大人たちに引き裂かれ、葵を守れなかったトラウマから無力感を抱え、生きる目的も失い投げやりで目先のことを何とかするのに手いっぱい。10代男子にありがちな状況。見えない壁を打ち破ろうにも手立ても見つからないし、地元に暮らすしかない。

 

 

一方の漣が八方ふさがりになっている間も、葵は親ガチャ失敗でも自分の人生を見据え力を蓄えていました。

キャバクラのアルバイト中に水島大介(斎藤工)に見いだされ、一気にステップアップをします。

 

そんな二人が幼馴染の直樹(成田凌)の結婚式で偶然出会う。

お互い過去の「糸」に気づいているはずなのに、漣は素直になれず、葵は水島という恋人の存在が大きく「糸」を切ろうとする。

 

この二人のやりとりが結構来ますね。

また菅田将暉の細い身体がこの役に合う!

小松菜奈って日本の若い女優さんの中では骨格がしっかりしていて好きなんだけど、結婚式での美しい立ち姿が、なんとも菅田将暉との対比がいいのです。

菅田将暉の演技も素晴らしい。不器用で、葵の美しさに圧倒され、今の自分との格差を直感的に感じて素っ気ない態度をとってしまう。都会的に洗練された元カノとかに会ったら、お金もある訳でない普通の男子はそうなるよねなんて思っちゃいます。

後から追いかけてももう遅い。切ない。

 

 

私が好きなのはシンガポールでの葵の奮闘です。

横糸「ファイト」のパートです。

生きることに積極的な女子が好きなので、シンガーポールパートはワクワクします。

そして失敗して、街をさまよいながら辿り着いたフードコートのような中にある怪しげな日本食店でかつ丼を食べるシーン。

「不味い」と言い、涙を流しながら、口いっぱいにカツをほおばりながら呟く

「大丈夫・・・」。

 

私にとってはここが最大のハイライト!

社会人や起業しようという人なら、こういう涙を流した経験もあるのではないでしょうか。

この作品では何度も「大丈夫」が繰り返し出てきます。

なんかの本で見たような。

男と女の「大丈夫」は違うと。

男のそれは問題解決の糸口が見えてきてかなり確信的な「大丈夫」。 

対して女のそれは「助けて」が入っていると。

この作品を観てると頷けちゃう気がします。

 

 

「別れ」「死」をはさみ経糸と横糸は織りあい始めます。

 

この作品は言い換えれば女性の「結婚」と「キャリア」の物語とも取れます。

漣と同様、実は葵も親ガチャ失敗のトラウマから上昇志向が強く、

故に水島大介の金がすべて幸せを作るような金満志向の影響を受けていたが最後に安らぎの場を見つけるという展開。

一見キャリアを捨て、結婚という幸せを掴まなければ女の人生に幸せは訪れないんだというような展開なのだけれども、そこにはしっかりと漣のチーズが残ってました。

きっと二人は力を合わせて新たなキャリアを作るんだろうなと感じさせるエンドロールです。

 

結局、この作品は「糸」と「ファイト」の織物は「糸」の歌詞。

「糸」の最後の歌詞。

「逢うべき糸に 出逢えることを 人は 仕合わせと呼びます」

「ファイト」歌詞。

「あたし男だったらよかったわ 力ずくで男のおもうままに

ならずにすんだかもしれないだけ あたし男に生まれればよかった」

が合わさり、「仕」=「仕事、つかえる、奉仕する」が縦と横糸でおりなす「仕」を合わせる「仕合わせ」=「幸せ」で、これは単なる恋愛物語ではなく、仕事と結婚に悩みもがく女性たちへの応援歌と思います。

 

では、ごゆっくりとお過ごしください。

 

 

2020年 日本 130分 配給 東宝

監督 瀬々敬久
原案 平野隆
脚本 林民夫
企画プロデュース 平野隆
モチーフ曲「糸」作詞・作曲 中島みゆき
音楽 亀田政治
主題歌 中島みゆき
 
CAST
高橋漣(菅田将暉)
園田葵(小松菜奈)
高木玲子(山本美月)
冴島亮太(高杉真宙)
後藤弓(馬場ふみか)
村田節子(倍賞美津子)
竹原直樹(成田凌)
水島大作(斎藤工)
桐野香(榮倉奈々)
桐野昭二(永島敏行)
桐野春子(田中美佐子)
           2021/11/27 Shichirigahama