いらっしゃいませ
金曜ロードショーで外伝が放映されました。
あまり映画を観ない、「ヴァイオレット・エバーガーデン」を知らなかった方々にも、アニメは「鬼滅の刃」や「シン･エヴァンゲリオン」だけではないんだと言うことを知っていただく機会を得られたことは大変喜ばしいことではありましたが、やはり地上波だとCMで細切れにされると、余韻が残りそうな場面で、世界観の全く違うCMが現れ、ふ～と気が抜けてしまう。
入り込み方が格段に違ってしまう。もし劇場版が放映されたとしたらとても不安な気持ちになります。
しかし、ヴァイオレットの美しさときたら！
「みんな君を見ている」「君が１番きれいだからだよ」
イザベラの言葉通りです。
特にデビュタントでのイザベラ・ヨークとのダンスのシーンは圧巻！
男装が思いもかけずとっても素敵。
髪型も新鮮でとっても素敵です。
アニメ史上最も美しい女性はヴァイオレット！
この作品の後に公開された「劇場版ヴァイオレット・エバーガーデン」でのヴァイオレットはとても激情的な部分を見せますが、この作品ではとても落ち着いた佇まいです。
それは、まだ感情を上手く表現できなかった時とは違い、成長し大人の女性としての落ち着き、努力の裏付けのある自信が生み出す余裕のある機転の効く落ち着きを感じられます。
それは幼い頃から女子少年兵として相手兵をなんのためらいもなく殺すことが出来るほどにたたき込まれた自己抑制力。
それに彼女の先週放映のTV版の特別編集にあるドール育成学校での成績から見られるような知性と努力が彼女の外観を作っていると言って良いでしょう。
「君は恵まれているじゃない」イザベラはヴァイオレットに言います。
誰もが一目置くヨーク家に引き取られ、誰よりも恵まれた環境にいる彼女は、人生のレールが引かれてしまった自分の未来に絶望し引きこもっている。その日食べるのも大変だったテイラーとの二人暮らしの日々の方が生きがいを感じられたと。
教育係として現れたヴァイオレットは美貌だけでなく、なんでも完璧にこなし、なにひとつ満足に出来ない自分に自己嫌悪を感じる。
だが徐々にイザベラはヴァイオレットが孤児であったことで自分との共通性、一緒に暮らしていたテイラーに会えなくなったこと、ヴァイオレットがギルベルト少佐に会いたくても会えないということ（作中は会いたい人がいるが会えないというだけになているが）と言う境遇に心を開いていく。でも「友達だから」一緒にお風呂に入った時に、ヴァイオレットの失われた両腕に背を向けている。
一方エイミー時代のイザベラに拾われ一緒に暮らしていながら、引き離されていたテイラーは施設で暮らしていたが、かつてヴァイオレットからもらった手紙を頼りにライデンシャフトリヒに来てC.H郵便社で働くことに。そんなある日、テーラーとヴァイオレットが手紙を配達している最中に偶然自動手記人形育成学校の同級生で主席で卒業したルクリアに会います。
彼女は恋人あるいは婚約者とおぼしき男性と共に去って行きます。この話は郵便社のドール達の話題になり、結婚したらドールをやめるのかやめないのかと言う話にもなります。
また、ヴァイオレットが去った日、ヨーク家と同等以上の地位にいる同窓生から地位とか関係なくお話がしたいと声をかけられる。
この作品には世の中にある、女性の生き辛さや表層的な地位や美しさにのみで判断される風潮、男の庇護がないと生きていけないような世の中への皮肉が描かれていると思われます。イザベラはそういったことの閉塞感のメタファーであり、バイオレットをはじめとするカトレア、アイリス、エリカの女性陣は自立している女性のメタファーです。
主題が女性の生き方に在るため、ヴァイオレットは主役であることを拒否するかのような描かれ方をしており、鳥が飛び立つシーンはイザベラの心の救済。
それ故この作品は「外伝」なのだと思います。
ヴァイオレット・エバーガーデンは単に美女の主人公が出てきて成長する過程を描いた物では無く、「泣けるアニメ」「きれいなアニメ」とその部分のみ誇張されるべき作品ではないのです。
何故泣けるのか。単純に愛すべき人が死んだからとかではない。
観る人それぞれの心の隅に忘れ去られたかのようにひっそりと息を潜めていた何らかの「想い」に優しく触れるからです。
できるなら観ていらっしゃらない方は「劇場版ヴァイオレット・エバーガーデン」とを合わせて観られることをおすすめします。
それではごゆっくりとお過ごしください
2019年 日本 配給松竹
監督 藤田春香
シリーズ構成 吉田玲子
脚本 鈴木貴昭・浦畑達彦
キャラクターデザイン 高瀬亜貴子
世界観設定 鈴木貴昭
美術監督 渡邊美希子
３D美術 鵜ノ口穣二
色彩設計 米田侑加
小物設定 髙橋博行
撮影監督 船本孝平
３D監督 山本倫
音響監督 鶴岡陽太
音楽 Evan Call
Cast
ヴァイオレットエバーガーデン（石川由依）
イザベラ・ヨーク（寿美菜子）
テイラー・バートレット（悠木碧）
クラウディア・ホッジス（子安武人）
ベネディクトブルー（内山昴輝）
カトレア・ボードレール（遠藤綾）
2021/11/09 Shichirigahama