いらっしゃいませ

 

恐ろしいばかりの観客動員数を稼ぐこの作品。

 

こんな動員数を稼げるなんて、もちろん熱烈なファンがいることがベースになる動員数となっているのですが、中には小学生の子どもにせがまれてしぶしぶ付いてきたお父さんやお母さん。

興味も無いけど乗り遅れてはいけないと来た人とか、レビューの点数が高いからとか、私のように全く予備知識がないのに、映画ファンとしては観ておこうかな的ファン以外の人が来ないとこんな数字はたたき出せないわけですね。

もちろん1回観て気に入ってリピートする人もいるでしょうし、リピート率の高さが窺えます。

 

それでは私のようにコミックも見たこと無いしの全く知識の無いひとんとってこの作品はどうだったのでしょうか。

 

正直オープニングなど予想もしない落ち着いたスタート。

書き込み具合もいいなぁといきなり引き込まれました。

また機関車の走る姿が良いですね。鉄ちゃんの私としては結構満足。おお、良いじゃないのこの走りって感じで入り込めました。

炭治郎のアップでは、おお!これが韓国で騒がれている旭日旗ピアスねなんて、ストーリーに関係ないところで感心したりして。

結構楽しくなってきちゃいました。

そして登場の煉獄さん。たまんないキャラクターです。

この人好きだわー!正直こんな人になりたいなんて。

この炭治郎との出会いのシーンで早くも私にとってのこの作品は煉獄さんの物語と化してしまいました。ごめん、炭治郎。

煉獄さんの名前を覚えないいい加減さ(豪快さ?)や笑い。

「面倒をみてやる」なんて私のこともみて欲しい。

そして強いこと!私のことも叩き切ってくれ!

次に印象深いのは上弦の参、猗窩座。

「お前も鬼になれ!」なんて痺れるわー。

鍛錬鍛錬の塊のような肉体。強いもの大好きっていうなんかちょっと筋肉馬鹿っぽいところや、「おまえらからにげてるわけじゃねー。太陽から逃げてるんだ」なんて負けず嫌いぷんぷんもちょっと微笑ましいくらいに思えてしまいます。

そして嘴平伊之助もいいな。ちょっと滑りがちな愛すべき上司という感じが妙に人間臭くて、隣りに居てもいいなという感じ。

禰豆子は戦う姿がもっと見たかったな。

と言う訳で心が汚れている私には、心が澄み渡るくらい広く、優しく一途な炭治郎や善逸よりも癖だらけのキャラクターに共鳴してしまうのでした。

炭治郎や善逸には人間臭さを感じないのです。

完全に炭治郎は脇役に喰われてしまっている。

家族を皆殺しにされ、妹を鬼にされたという外的要因にしか彼のキャラを感じられない。

少なくともこの作品の段階では彼の成長はほとんど見られず、成長物語にも成っておらず、本人も思っているように足手まといにしか見えません。ただこの先続編が作られていく過程で大化けしていく前の幼さを強調しているのかなとも思います。

全て完結したときその成長ぶりが理解できるのでしょう。

では作品自体はどうだったのでしょうか

この驚異的観客動員数に見合うものなのでしょうか。

私には少し見合っていないのではと思えました。

やはりこういったアニメ作品にありがちな判っている人向けに作られていると言わざるを得ないと思います。

もちろん、細かいことはどうでも良く、この作品の戦闘シーンや最後のお別れのシーンで感動しておわりでも良いのかも知れません。(それだけでも楽しめます楽しめます)

判らなければ後で調べろということでも良いのかも知れませんが。

(それも映画の楽しみのひとつ)

何で禰豆子が鞄?の中に入っていられるのか、なんで口に竹をくわえているのかなどなど。

ビギナーはこれだから困ると言われそうですが、1年に1回位しか映画を見ず子育てに励む父母は結局「面白かったよ」で終わってしまうとしたらもったいないな。折角の良い作品なのに。

単なるダイジェストになっては居ないと思いますが。

 

「精神の核」の心象が描かれる尺の長さは少々間延び感。

少し眠くなってしまった。

でも煉獄さんが登場するとしゃきっと成った私。

結局キャラクターへの思い入れと言うことになってしまうのかもしれませんが。

言い換えればこの作品における主役の炭治郎のキャラ立ちが弱いに尽きるのかも知れません。

原作を知らない私にはそれが意図的にされているのか(子供たちがみるという前提で)判りませんが。

しかし正義であるはずの煉獄さんが負けてしまうなんて。

鬼の強さは正に国、政府、大企業の象徴。鬼滅隊は国民のメタファーですね。負けることで今後の展開が盛り上がるのだけど、今作に限って言えば世界中の子供たちが、正義は勝てない、国家など大きな存在には勝てないものなんだとすり込まれてしまうのかな。

香港などは鬼滅隊を自分たち警察に、自由を求め活動をする市民を鬼(テロリスト)となぞらえているようですね。

この作品は置かれた立ち位置の都合によって利用されるのかも知れません。

煉獄さんのぶれない正義の生き方が残って欲しいな。

 

と言うわけで、この観客動員数に見合う作品かというと?がつきますが、スーパビギナーでも充分楽しめる作品と思います。

 

 

それではごゆっくりお過ごしくださ

 

2020年 日本 117分 東宝、アニプレックス

Staff

監督 外崎春雄

原作 吾峠呼世晴

脚本制作 ufotable

キャラクターデザイン 松島晃

総作画監督 松島晃

サブキャラクターデザイン 佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花

プロップデザイン 小山将治

コンセプトアート 衛藤功二、矢中優、樺澤侑里

撮影監督 寺尾優一

3D監督 西脇一樹

色彩設定 大前祐子

編集 神野学

音楽 梶原由記、椎名豪

主題歌 LISA

Cast
竃門炭治郎(花江夏樹)
竃門禰豆子(鬼頭明里)
吾妻善逸(下野紘)
嘴平伊之助(松岡禎丞)
煉獄杏寿郎(日野聡)
魘夢(平川大輔)
猗窩座(石田彰)
煉獄槇寿郎(小山力也)
煉獄瑠火(豊口めぐみ)
煉獄千寿郎(榎木淳弥)
 
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